野村不動産グループが提案するマンション大規模修繕工事の“長周期化”とは?:LCM
野村不動産と野村不動産パートナーズは、分譲マンション老朽化のために行われる大規模修繕の長周期化への取組みとして「アトラクティブ30」の導入を決定した。アトラクティブ30は、マンション新築時に将来の大規模修繕を想定し、高耐久部材や新工法を採用することで、これまでの12年から、16〜18年へと長い修繕のサイクルを可能にする取り組み。
野村不動産グループは、マンションの大規模修繕周期をこれまでの12年ごとから、16〜18年ごとへ長期サイクル化させる住宅事業の未来戦略「アトラクティブ30」を発表した。アトラクティブ30は、建築物の設計から建設、保全、維持管理、解体までの全生涯に関わる費用を計画段階から想定する「ライフサイクル・マネジメント(LCM)」の概念と同様のもので、マンションの大規模修繕工事のサイクルを長期化することで、全体のコストを抑える。
将来の大規模修繕を見据え、新築時に高耐久部材・新工法を採用
アクティブ30では、長周期化を実現させるため、部材・工法や運営管理面で従来方法から見直しを図る。工法では外壁のうち、妻面や手すり外側など、大規模修繕の際に外部足場掛けが必要な部分で、これまでの「モルタル張り」ではなく、外壁タイルに剥離(はくり)・剥らくの危険性が少ない「有機系接着剤張り工法」を採用する。
国土交通省では、有機系接着剤張り工法を採用した場合は、竣工後10年毎に行うとされていた全面打診検査が、引張接着試験で確認する方法でも対応可能になるとして大規模修繕の長周期化を実現する。
部材では、塗装材、シール材は、それぞれの材料を一緒に使用した場合も想定し、30年相当の劣化促進試験を実施。高耐久となる仕様と組み合わせを開発して、これからの施工に適用していく。屋上防水は、一般的に採用される10年保証のアスファルト防水やシート防水に代えて、15年の耐久性を可能にする新仕様のものを採り入れる。
また、更新する際にコストが割高になる専有部の全ての給排水管には、部品の長寿命化を見据えた配管システムを採用することで対応。給水給湯配管は、耐食性、耐薬品性、耐塩素水性、耐クリープ性などに優れた長寿命の架橋ポリエチレン管、ポリブテン管を使用する。
排水管には、継ぎ手部分も含め、軽量で耐食性・耐薬品性に優れた「オール樹脂」の排水管とする。さらに、共用部の給水配管についても、樹脂化を進めていくとしている。
マンションの運営・管理面では、野村不動産パートナーズが管理組合の委託を受け、建物の点検や小修繕を提案・実施。加えて、同社が提供している大規模修繕「re:Premium(リ・プレミアム)」により、その後の大規模修繕の周期を16〜18年に設定し、延伸させる。リ・プレミアムは、責任施工と業界標準を超える長期保証を提供する大規模修繕工事。既に竣工から10数年が経過したプラウドブランドの物件で複数採用されている。
アトラクティブ30の導入が現時点で決まっている物件は、2019年8月中旬に神奈川県横浜市で完成する「プラウド港北センター北」(施工:西武建設)と、2020年1月下旬に千葉県市川市で竣工予定の「プラウド市川マークス」(施工:野村建設工業)。
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