建設現場の“暑さ指数”をクラウドで一元管理するIoTシステム、大林組が2019年発売
大林組は、作業現場内の複数箇所でWBGT(暑さ指数)を連続測定し、その情報を一元管理することができるシステム「暑さ指数ウォッチャー」をリニューアルし、建設現場での導入を経て、2019年から販売をスタートさせる。
大林組は、2015年に開発した建設現場の暑さ指数を測定して一元管理できるシステム「暑さ指数ウォッチャー」にクラウドシステムを実装。IoTに最適な通信方式の採用や計測機器のデザインも変更して、信頼性の向上と低コストを実現した。
タブレットなどで暑さ指数をリアルタイムに常時確認
建設現場では、熱中症による災害の発生率が高く、現場の熱環境を広域的かつ連続で測定し、取得した情報をベースにして、迅速な処置を講じることが求められていた。
大林組では、この課題解決のため、2015年に熱環境の評価に用いられるWBGTを連続測定し一元管理するシステム「暑さ指数ウォッチャー」を開発。単体で利用する以外にも、IoT安全管理システム「Envital」のWBGT(暑さ指数)を計測する機器としても活用していた。
しかし旧モデルは、リアルタイムに取得した情報をネットワーク内の限られたPCでしか閲覧ができなかった。また、遮蔽(しゃへい)物の多い建設現場では、長距離の通信ができないため、計測が不要な場所にも、中継用に計測機器を設置しなければならないなど、利便性に問題点があった。
新開発のニューモデルは、計測器から取得したWBGTや基準値からの超過度合いをクラウドシステムで共有。タブレット端末などで、利用者が常時確認できるため、熱中症対策としての有用性がより高まった。施工管理者だけに限らず、作業員自身や作業員を取りまとめる職長が、現場全体の作業環境を認識することで、作業スペースや作業内容の見直しなどを状況に応じて検討し、即座に反映させることにもつながる。
通信方式も長距離のデータ通信に適した920MHz(LPWA)を採用し、設置場所の自由度が広がった。一例として、高層ビルであれば、上下階で4フロア程度だったものが、最大14から18フロアになるなど、通信可能フロアが飛躍的に拡大。中継用の子機も不要になり、導入コストの削減になる。
機器のリニューアルでは、子機に付属する温湿度センサーは、WBGTを計測するのに一般的に用いられる電子式から、耐久性の高い静電容量式に変更。太陽光や降雨などからセンサーを保護するラジエーションシールドと一体化させるシンプルなデザインとし、導入後のメンテナンスも含めた機器のコストが旧型の約半分程度となるという。
電子式WBGT測定器については、2017年3月に日本工業規格で、「電子式湿球黒球温度(WBGT)指数計(JIS B 7922)」としてJIS化されたことに伴い、黒球センサーをJIS準拠の球状形態とした。
新型「暑さ指数ウォッチャー」は、大林組の複数の建設現場へ導入してシステムの実証を行い、販売は2019年を予定している。
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