建設現場の熱中症を未然に防ぐLED表示板
エコモットは、暑さ指数(WBGT)の現在値に加え、1時間後の予測値までLED表示板に同時投影可能な新システムを開発した。熱中症のリスクが高まる前に、作業員へ水分や塩分の適切な補給を促せることから、より安全な就労環境が実現する。
IoTソリューションをワンストップで提供するエコモットは、暑さ指数(WBGT)の現在値と1時間後の予想値を自動算出し、LED表示板に同時投影する熱中症対策システム「ヒートロイド」を開発。安全保安用品の仙台銘板を通じて、2018年7月11日から同システムの提供をスタートした。
現場と気象会社の暑さ指数(WBGT)をLED表示板に掲示
ヒートロイドは、センサーデータが算出するWBGTの現在値に加え、民間気象会社から配信される1時間後のWBGT予測値をLED表示板に同時投影。WBGTが警戒値を越えると、パトランプや音声ブザーが鳴動するため、現場作業中に繰り返し数値を確認する手間も不要となり、作業の妨げにならない。さらに、予測値の表示に対応したことで、熱中症のリスクが高まる前に、現場作業員に水分や塩分の適切な補給を促せるようになる。
WBGTは、熱中症予防を目的に1954年に米国で提案された指標。単位は、気温と同じセ氏度で示す。算出にあたっては、人体の熱収支に影響を与える「湿度」「日射・輻射などの周辺の熱環境」「気温」の3つの要素をもとにしている。算出時の比率は、順に7:2:1。一般的に、WBGTが28℃を越えると厳重警戒が必要とされ、熱中症患者が著しく増加する傾向にある。
厚生労働省の調査によると、2012年時点で職場での熱中症による死亡災害の4割を建設業が占め、死亡者のほとんどがWBGTの測定および、水分・塩分の適切な補給を行っていなかったことが判明している。
同社では、これまでにWBGTの現在値を測定して警報を出すようなシステムは既存製品でも提供してきた。今回、昨今の建設現場における人材不足が顕在化していることを受け、より安全な就労環境の実現を目指し、新たにWBGTの予測値も表示できるシステムの開発に至ったという。
ヒートロイドは、同社の建設情報化施工支援ソリューション「現場ロイド」の1つに位置付けている。これは、屋外設置の環境センサーやネットワークカメラにより、土木建設現場に関わるさまざまな環境データを見える化し、安全管理や生産性・作業精度の向上を目的としたサービス。国土交通省の新技術提供システム「NETIS」に登録された製品も多数ラインアップする。工事現場への導入実績は、2009年の提供開始から現在までに7000件弱に達したという。
なお、エコモットは2007年2月の設立で、2017年6月に札幌証券取引所アンビシャス市場、2018年6月に東京証券取引所マザーズに上場している。
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