2018年建設投資見通しは前年比2.1%増、「東北」の土木は「関東」に次ぐ投資額
国土交通省は、2018年度の建設投資見通しを明らかにした。2018年度は前年度比2.1%増となり、金額ベースで57兆1700億円。2019年で終わる平成を振り返ると、この30年間では、2010年をマイナスの底に、3.11後の復旧や復興工事の増加を受けて、年々徐々に回復しているが、1990代の平成初頭の70兆円規模に比べるとまだ開きがある。
国土交通省は、2018年度の建設投資を前年比で2.1%増となる57兆1700億円の見通しになると発表した。建設投資見通しは、全建設活動での出来高ベースの投資額を推計したデータ。
建築は順調な成長、土木は微増にとどまる
内訳は、全体の4割を占める「政府投資」が23兆600億円で、前年比0.1%増でほぼ横ばい。「民間投資」は34兆1100億円で、同3.4%増。2015〜2017年度は5%台のプラス成長が続いていたが、ここにきて若干伸びに停滞が見られる形となった。
民間のうち、48%を占めている「住宅建築」は16兆3400億円で、同2.2%増。「非住宅建設(非住宅建築投資+民間土木投資)」は17兆7700億円で、同4.6%増。
建築と土木別でみると、「建築」は31兆1100億円(同2.4%増)で、2015年度以降は順調な成長を続けている。一方の「土木」は26兆600億円(同1.6%増)。2015年度が対前年度比マイナス4.1%となってからは、2016年度4.0%増、2017年度4.3%と4%台のプラスに転じたが、ここに来て伸び率が落ち込む状態になっている。
建築と土木の比率は、1991年度以降、建築投資が減少する一方で経済対策により、公共の土木工事が大幅に増加したことから、土木の占める比率が増加傾向となり、1998年度には51%を占めるまでになった。その後は、建築投資の比率が高まる傾向だったが、2009年度に下落し、近年は建築投資が50%台前半、土木投資が40%台後半で推移している。
国交省では、建設投資全体は、1992年度の84兆円をピークに減少基調となり、2010年度には1992年の半分にまで減少したとしている。その後、2011年の東日本大震災からの復興を受け、回復しつつあると分析する。2018年度の建設投資については、復興予算や2017年度の補正予算などで政府の建設投資が見込まれることを増加の要因の一つに挙げている。
2018年度の建設投資を地域別にみると、「関東」が建築40%・土木28%で、全体のうちの35%の案件は関東で動いている計算だ。次いで、合計で並んだのが、「東北」「中部」「近畿」。中部と近畿は建築の方が土木より多いが、東北は逆で、建築8%、土木18%となり、土木は工事の金額ベースでは関東に次ぐ額となっている。
また、建設投資に含まない建物の維持・修繕工事など、リフォーム・リニューアル投資の動向では、2018年度の投資額は13兆1000億円になる見通し。2014年度から5か年連続のプラスとなる。建築投資全体に占めるリフォーム・リニューアル投資の比率は、住宅が18.9%、非住宅が40.9%。総計で30.3%の予測。住宅に限ると、金額ベースでは増えているが、過去10年間で最も低い比率となった。
住宅投資は、2018年度は前年比で2.1%増の16兆9200億円。このうち大半を占める民間住宅は、前年度比2.2%増の16兆3400億円。一方で、同省の住宅着工統計によると、2017年度の新設住宅着工戸数は、94万6396戸で、2016年度の97万4137戸に比べ2.8%減となっている。持ち家、貸家、給与住宅、分譲の全てがマイナスとなり、供給戸数は飽和が近いのではとも予測できる。
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