土木工事の「生産性向上」と「品質管理」でAI・IoTなど技術公募、国交省
国土交通省は、土木工事を対象に、施工の生産性向上と品質管理の高度化につながる革新的技術の公募を開始した。生産性向上では、繊維メーカーや大学、ゼネコンなどが開発を進めているウェアラブルIoTや建機メーカなどが取り組むAIによる現場管理も対象となっており、選定後に公共土木工事で試行となれば、実用化に一歩近づくことになる。
国土交通省は2018年7月11日、建設現場の生産性を飛躍的に向上するため、デジタルデータをリアルタイムに取得し、このデータを活用したIoT、AIなどの新技術による建設現場の生産性向上を目的に、革新的技術2件の公募を開始した。
生産性の向上と品質管理の高度化で、革新的技術10件を選定予定
公募の背景には、国土交通省が2025年までに、建設現場の生産性を2割向上させることを目指して進めている「i-Construction」がある。また、科学技術イノベーション創出に向けた官民の研究開発を強力に推進する「統合イノベーション戦略」が、2018年6月15日に閣議決定されたことも後押ししている。
技術公募は、こうしたことを踏まえた「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」の一環として行う。公共土木工事で、革新的技術により、施工データなどをリアルタイムに取得・解析し、建設現場の生産性向上を飛躍的に高めることを目的としている。
募集技術は、「施工の労働生産性の向上を図る技術」と、「品質管理の高度化を図る技術」の2つ。施工の労働生産性の向上は、橋梁(きょうりょう)、ダム、トンネルといったコンクリート工や土工の生産性をアップさせる技術提案を求める。
新技術によって取得するデータの想定としては、建設機械が、GPSで位置、カメラで動き(作業内容、時間)。作業員は位置、動きに加え、ウェアラブル端末でバイタル(心拍、体温など)。他に、資機材はカメラで位置と量、工事目的物・仮設物はレーザースキャナーで出来形、周辺地形もレーザースキャナーで標高などのデータを取得する。これ以外にも、BIM/CIMデータを活用した生産性向上の技術も含むとしている。
分類 | 内容 | 取得ツール |
---|---|---|
建設機械 | 位置 | GPS |
動き(作業内容・時間) | カメラ | |
作業員 | 位置 | GPS |
動き(作業内容・時間) | カメラ | |
バイタル(心拍、体温) | ウェアラブル端末 | |
資機材 | 位置・量 | カメラ |
工事目的物・仮設物 | 出来形 | レーザースキャナー |
周辺地形 | 標高 | レーザースキャナー |
取得するデータのイメージ |
もう一つの品質管理の高度化では、データを一定期間取得し、現行の品質管理手法を代替可能な提案を求める。品質管理は具体的には、現行基準の試験方法、数値、監督・検査・確認、書類削減または簡素化などを指す。提案では、期待される品質管理の高度化に関する具体的な効果と達成目標を示さなければならない。
提案技術については、国土交通省、国の行政機関、地方公共団体などが発注する工事で2018年度中に試行することが応募要件となっている。また、試行により取得するデータは、クラウドで随時、工事発注やコンソーシアムと共有することも求められている。コンソーシアムは、工事を受注する建設業者以外に、測量・調査・設計業務を行う企業、計測機器メーカー、IoT・AI・ロボットなどの技術開発または情報システムの設計・運用を行う企業、大学・研究機関のいずれかを含んで構成する。
公募締め切りは2018年8月10日。同月中旬に書類審査とヒアリングを行い、2018年9月上旬に審査結果を決定し公表する。審査は、提案技術の信頼性、実施体制・計画・経費の妥当性、期待される効果の有用性の3点で審査される。最終的な選定件数は、10件程度となる見込み。
選定された技術は、事業者と国土交通省の各地方整備局と委託契約を締結。契約履行期限は最大で2019年3月31日まで。委託契約額は対象技術1件につき上限5000万円。提案内容に応じた適正な価格で契約する。
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