「大手町ビル」大改修で、国内最大級4000m2の屋上庭園
三菱地所は、1958年に竣工した東京・千代田区の大手町ビルの大規模改修を行う。外装のデザイン改修や国内最大級の屋上庭園の整備などをビルを施工した大成建設の手によってリノベーションする。
三菱地所は2018年7月2日、東京・千代田区の「大手町ビル」の大規模リノベーション工事に着手し、外壁・内装などを全面的に改修することを明らかにした。設計は三菱地所設計、施工は大成建設、内装デザインはメック・デザイン・インターナショナル。工事完了は2021年3月の予定。
各通りに面する外装は「煉瓦」「石垣」「ガラス素材」がモチーフ
大手町ビルは1958年竣工で、地下鉄5路線が乗り入れる「大手町」駅に直結する抜群の交通アクセスの立地。ビル内は大規模フロアプレートでありながら、小割貸付に適したフロア形状をしているため、多くのスタートアップ企業や先端技術部隊などの集積を図り、多様な交流が生み出される機能を整える。今回は、建て替えではなく、リノベーションという方法で、ハード・ソフト両面から、新たなビジネス拠点を創出させる。
ハード面では、周囲の3つの通り(大名小路、仲通り、日比谷通り)の歴史的背景やイメージを外装デザインに反映。大名小路側は、煉瓦(れんが)を基調にし、日比谷通り側は石垣をモチーフに。丸の内仲通りが貫通する中央部分は、“通り抜け”感をもたらすガラス素材で、それぞれストーリー性を持たせて改修する。
外壁素材には、セメントに比べ高い引っ張り強度と、曲げ強度に優れるGRC(耐アルカリ性ガラス繊維補強セメント)を採用し、将来的な管理コストの低減を実現させる。窓ガラスは、一部に断熱性に優れた「Low−E複層ガラス」と「日射フレーム」を設けることで、熱負担削減を図るなど、環境性能を向上させる。
丸の内仲通り上に位置する建物内の中央部分の貫通通路を屋内外から整備。屋内の床面は丸の内仲通りなどで用いられているアルゼンチン斑岩を敷設し、出入口部分周辺の壁材の一部をガラス素材に作り換え、“通り抜け”感を演出する。
ビルで働く就業者を考慮して、7階には自由に使うことができるラウンジと、丸の内仲通りを一望できるテラスを設置。オープンな大空間としての利用が可能で、テナントニーズに対応したビジネス支援や交流促進のステージとして提供する。
これまで設備機器のスペースでしかなかった屋上は、オフィスビルとしては国内最大級となる約4000m2(平方メートル)の屋上庭園とする。仲通りが一望でき、圧倒的な開放感を味わえる屋上に、単なる緑化だけにとどまらない環境演出的な要素を随所に取り入れ、創造的な空間を創出させる。
ソフト面では、ビル東側を「LABゾーン」と位置付け、個性溢れる企業のリーシングを推進し、新たなビジネスが創出される場を目指す。LABゾーン6階には、世界最大級のソフトウェア会社であるSAPジャパンと共同でスタートアップ企業や大企業などが入居し、ビジネス創出を行う共創スペース「TechLab」を2018年11月に開設する。プロトタイプを作る工房、動画撮影スタジオ、イベントスペースなどを配置。
三菱地所、電通、電通国際情報サービスの3社が協業で運営している日本初の会員制FinTech集積拠点「THE FINTECH CENTER of TOKYO,FINOLAB」は、床面積を約650坪から約1200坪に3度目となる拡張を行う。
また、世界4大会計事務所の一角のKPMGが、デジタル技術を活用して日本企業のイノベーションを促進する新拠点である「KPMG Ignition Tokyo」を2018年7月1日に開設。日本企業がグローバル競争を勝ち抜くための経営課題について、ソリューションを創発するための先進的拠点としての活動を行っていく。
他にトヨタ自動車が、自動運転を支える周辺技術の開発拠点を6階に設ける。
大手町ビルの概要は、SRC造・地下3階・地上9階・PH3階、延べ床面積11万1272m2、敷地面積1万493m2。三菱地所の設計、大成建設の施工で1956年の着工、1958年4月の竣工。
リノベーション工事は、三菱地所設計の設計、大成建設の施工、メック・デザイン・インターナショナルの内装デザインで2018年5月下旬〜2021年3月(一部については、2021年4月以降に工事着手する見込み)。
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