中小規模の工事でBIM活用拡大、日建連の動向調査(2/2 ページ)
日本建設業連合会(日建連)は2018年7月4日、BIM(Building Information Modeling)の優良事例をまとめた「施工BIMのスタイル 事例集2018」を発刊した。前回の事例集2016から掲載企業数を拡大し、施工BIMの適用場面が一つの作業所内で多岐にわたり始めたことを考慮し、取り組み内容ごとに成功要因、創意工夫点、次回改善点、生産性向上への貢献度などを共通のフォーマットで図版を中心に紹介している。
「元請のリーダーシップと関係者の積極性」が成功要因で最多
BIM活用の目的では、「干渉チェック・納まり確認」が元請・専門工事会社ともに最も多く、「施工図・製作図の作成」「BIMモデル合意/承認」「数量把握」が前回よりも拡大した。
一方、活用目的の達成度では、元請の8割以上が、「工事関係者の合意形成」「干渉チェック・納まり確認」「施工性検討・施工シミュレーション」「BIMモデル合意/承認」で効果ありと回答。専門工事会社で8割を超えたのは「数量把握」のみだった。前回調査で、達成度が元請75%に対し、専門工事会社40%と差が見られたことと同様に、活用目的別の達成度でも元請・専門工事会社で差異がある結果となった。
図面とBIMモデルを同時に作成した事例では、施工BIMによる効果が低いことが前回調査で見出されため、今回は活用目的別にその影響を分析。
BIMモデル先行が望ましいのは、「工事関係者の合意形成」「施工図・製作図の作成」「BIMモデル合意/承認」だった。いずれの作成順序でも高評価だったのは、「施工性検討・施工シミュレーション」で、比較的に取り組みやすいとみられ、今後のBIM普及で着目すべき活用目的とされた。
施工BIMの成功要因として挙がった意見は、「元請のリーダーシップと関係者の積極性」「取り組み目的・スケジュールの明確化」「モデル作成範囲の明確化・作成時期の見極め」が複数の活用目的で指摘された。
BIMモデルを活用する上で、工夫した点に関しては、ハイスペックなBIM用PCの導入・貸し出し、現場でのBIMオペレーターの育成、フリービュワー配布といったBIM製作・運用環境の整備の他、毎週の打ち合わせや支援部門と作業所の密な連携など、取り組み開始時には関係者間でルールを決めることが重要なことが分かった。
施工BIMに対する課題では、人材不足が最多で、次いで作業所へのBIM教育、設計変更への対応や最新版の管理が目立った。他に運用ルール作り、図面との併用、モデル数量と契約・施工数量の不一致、元請のリーダーシップなどもあった。技術面では、データが重いことや要求されるPCのスペック、BIMツールの機能不足、施工計画での仮設ライブラリ不足などが寄せられた。
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