斜張橋の調査ロボットにカメラ3台追加などの新機能、西松建設
西松建設は佐賀大学の伊藤幸広教授と共同開発した斜張橋の斜材保護管の自走式調査ロボット「コロコロチェッカー」に新たな機能を搭載した。新機能は、進行方向の前面にフルハイビジョンカメラを3台装備し、これまで調査ができなかった主塔接続部の状況を確認できるようにした。
西松建設は2018年7月2日、斜張橋の斜材保護管を調査する電源モーターによるはワイヤレスの自走式ロボット「コロコロチェッカー」に新機能を追加したことを明らかにした。コロコロチェッカーは2012年に開発された斜張橋の斜材保護管の劣化状況を調査する自走式ロボット。
斜材を囲うように取り付ける構造で、保護管全周を撮影するため4台のカメラと斜材を登るためのローラーなどを内蔵し、人による高所作業を必要とせず、高所の小さな損傷なども安全に高い精度で調べることができる。
撮影した動画は、ロボットを操作するコントロールボックスにリアルタイムで送られ、そこで解析ソフトにより、表面状況を評価し、損傷状況などの展開図をはじめ、調査データの一覧表、写真集などの調査結果が出力されて、報告書が作成できる仕組み
これまでに国土交通省・NEXCO・地方自治体が管理する斜張橋5件で受注実績があり、総本数460本、総延長約1万5000m(メートル)の調査を行ったという。
進行方向にフルハイビジョンカメラ3台を追加搭載
新機能の目玉としては、本体の進行方向前面に、外部フルハイビジョンのカメラ3台を搭載。斜材保護管表面状況の概観、斜材と主塔接続部の全周の状況が把握できるようになった。これまで調査ができなかった主塔接続部のカバー破損やコンクリートのひび割れといった状況を把握することが可能になった。
また、大日本コンサルタントとの共同開発で、張力測定(振動測定)機能も加わった。ロボット本体に装備している加速度計で、斜材の振動を計測。斜材の張力推定ができるようになり、斜材の健全性の判定精度がより向上。振動計測時は、任意の場所でロボットの走行を停止させて、常時微動をモニタリングする。従来方法とほぼ同等の結果が得られる上、簡単・安価かつ高精度でのケーブル張力測定が実現する。
コロコロチェッカーで撮影した画像の応用事例としては、静止画像(1920×1080ピクセル)を解析することで、直径寸法の変化を約0.5mm(ミリ)の精度(分解能:約0.1mm/ピクセル)で検出。支線式鉄塔の保持に利用する被覆材のないケーブルは、腐食・劣化腐食・劣化の過程で、素線の緩みにより直径寸法が変化する。この画像解析技術で、ケーブルに生ずる微小な直径寸法の変化量を把握でき、健全性の判定に用いることができる。
コロコロチェッカーの基本スペックは、サイズが566×566×566mm、走行速度は2.5m/min(斜材傾斜角25°の場合)。画像形式はAVI形式に対応している。
西松建設では、斜張橋5件の調査実績により、今後は非破壊で斜材保護管内部の鋼材変化(腐食など)を把握できる機能の開発など、社会インフラの点検業務が安全かつ確実に行えるような技術開発を積極的に推進していくとしている。
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