「墜落・転落」防止対策の強化で初会合、厚労省(2/2 ページ)
厚生労働省は2018年5月31日、初開催となる「建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合」を東京・霞が関の中央合同庁舎5号館で開催した。
民間ではコストを理由に安全が軽視される傾向
会合での今後の方向性としては、「足場」と、「屋根・屋上・床上などといった足場以外のもの」が半数以上を占めていることを受け、これらを優先的に検討すべきとされた。足場については「一側足場」も、「本足場」と同等の措置を求める必要があるとした。
現実的なハード・ソフト両面でどのような対策ができるか、点検などの管理面も含め、絞り込んだ議論を行っていくとした。
義務化も含めた法令改正も議論の視野に
委員の意見で主なものは、2019年2月から施行される高所作業でのフルハーネス安全帯の着用義務化が例に出され、本足場や手すりを義務化する提案もあった。
墜落・転落事故は、民間工事に多いワケとして、国直轄工事はくさび緊結式足場が普及しているが、民間工事は安全対策にまで回す予算はないため、コストを理由に安全が軽視されているケースが少なくないとの指摘があった。
足場に関しては、予算と運搬コストがかさむため、あえて本足場ではなく一側足場が使用されていることもあるという。住宅では、新築案件の足場は良いが、リフォーム工事の部分的な足場は不安定。屋根の葺(ふ)き替えでは、足場は作らないことも住宅業界では通例となっているとの言及もあった。
また、海外の例では、英国は建設現場に入るためのカードシステムの教育制度が充実しており、事故が突出して少ない。次いでマイスター制度のドイツも多くなく、日本とユニオン制度のアメリカが同水準だと説明された。日本の作業主任者資格は一度取ってしまうと、足場の技術などが変わってしまっても再教育されることもないため、一人親方も含めた教育制度の見直しが必要という案もあった。
死亡事故自体は減ってはきているが、全産業の中で平均して、3割を割らないので、ここを引き下げていきたいという指針も挙がった。
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