予定価格の事後公表など、都の入札制度を改革
東京都の小池百合子知事は2018年5月11日の記者会見で、「入札契約制度改革」の本格実施を公表した。4.4億円以上の建築工事で予定価格を事後公表することやJV結成義務を撤廃する。これまで行ってきた1者入札の中止については、2018年5月25日から取りやめる。
東京都は2018年5月11日、入札契約制度改革を一部見直し、2018年6月から本格的に運用を開始する。改革の柱は、「予定価格の事後公表」「JV(共同企業体)結成義務の撤廃」「1者入札の中止」「低入札価格調査制度の適用範囲拡大」の4つ。
建築4.4億円/土木3.5億円以上は予定価格を事後公表
制度改革は、多くの業者が入札に参加し、入札の競争性や透明性を高める目的で、2017年6月から試行。2018年3月には第三者機関の入札監視委員会が検証結果報告書を策定し、同年4月26日には業界団体から都知事がヒアリングを行い、これを踏まえる形で本格実施を行う。
4つの柱のうち、これまでの試行で実施してきた「予定価格の事後公表」は、予定価格に対する落札額の割合が100%近くの高落札率の案件が減少するなど一定の効果が出ていることを受け、今後も入札後の公表を継続する。
一方で、中小企業の積算に関わる負担が非常に多いという声を受けて、低価格帯の案件は、予定価格を事前公表とし、金額の高い案件は事後公表とする。事前公表とする価格帯は、建築4.4億円未満、土木3.5億円未満、設備2.5億円未満。
「JV結成義務の撤廃」では、これまで財務局契約案件のうち、比較的大規模な工事で、単体企業でも入札に参加できるように結成義務を撤廃し、JVまたは単体の混合入札を行ってきた。本格実施では原則として混合入札を続けるが、中小企業の受注機会の確保など、JVが果たす役割を踏まえ、自主的にJVを結成した場合は、総合評価方式による加点を単独項目での加点として、加点幅も倍に引き上げるというインセンティブを付ける。
また、JVが大企業から技術を学ぶ貴重な技術研さんの機会であったとの中小企業の意見を反映させ、一部の案件で、JV結成を入札への参加要件とする「技術者育成モデルJV工事」を設定。大企業の品質管理であるとか工程管理などのノウハウを習得する機会を設ける。
3つ目の「1者入札の中止」は、これまで参加希望者が1者以下だった場合に入札手続きを中止してきたが、他の取り組みにより、着実に入札参加者が増加しているため、1者入札の中止は実施しない。だが、入札参加者がゼロも含む1者以下となった場合は、辞退者に理由を聴き取るなど原因調査を強化する。
「低入札価格調査制度の適用範囲の拡大」は、従来は予定価格24.7億円以上の案件が対象だったが、本格実施で事前・事後公表のボーダーとなる価格帯にまで範囲を拡大してきた。調査を厳格化したことで、ダンピング受注の防止に効果を発揮していることから、低入札価格調査制度の適用範囲については試行から見直しを行わず、現行の取り組みを継続する。
2017年度からの元請事業者の社会保険への加入義務化に加え、今後は1次下請事業者も義務化になることに伴い、低入札価格調査時における過去3年の社会保険未加入の失格基準については廃止する。
本格実施の開始時期は、一定の周知期間を置き、2018年6月25日以降に公告などを行う契約案件から運用を始める。1者入札の中止を止りやめることは、前倒しして同年5月25日に公告、第3回都議会定例会に付議される案件から、1者入札の中止対象外となる。
2018年5月11日に開かれた記者会見で小池都知事は、見直した理由について、「予定価格の事後公表に伴う中小企業の積算の負担増は大変。少ない人数、人手不足の中で計算をすることや夜中まで計算をするのは、働き方改革に逆行するのではないかという現場の声などをいただいた。4つのポイントのメリット、デメリットが、この試行期間の間に明確になり、課題への対応を図った上で、本格実施に備えた」とした。
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