外壁タイル調査を省力化する低コストシステムを奥村組が実用化
奥村組は、タイルを打診して小型スイッチを押すだけで、検査結果を電子化できるシステムの実用化に成功した。現場調査から点検報告書作成までの作業時間を大幅に短縮させ、省力化をもたらす。
奥村組は2018年5月10日、外壁タイルの打診調査を省力化するため、ウェアラブル端末を用いた調査支援システムを開発し、実用化したと発表した。
打診した調査結果をその場で図や数量に電子化
新システムは、携帯性に優れたウェアラブル端末とレーザー式の小型測域センサー、Wi-Fiルーター、モバイルバッテリー、センサー保持治具で構成。調査員は、これらの機器を使い判別したタイル異常などの状況を手元のスイッチ操作で記録する。その際に測域センサーで検知した打診棒の位置情報が付加される仕組みで、現場で調査結果を図や数量として電子情報化できるのが特長だ。
記録したデータは、CADソフト上で立面図と重ね合わせることや一般的な表計算ソフトで集計が可能。現地調査から報告書作成までの一連の迅速化・省力化につながり、調査期間の短縮とコスト削減をもたらす。
通りに面する大規模な建築物の外壁タイルは、はく落すると歩行者などに危害を及ぼす恐れがあることから、10年に1度、高額なコストのかかる外壁全面の調査が特定行政庁の条例で義務付けられているため、外壁タイルの検査需要は少なくはない。
また、近年は、赤外線や専用ロボットなどのIoT技術が大手ゼネコンなどを中心に開発されてはいるが、気象条件に左右されることや高コストであるため、実際の現場では外部に足場を組み立て、調査員が打診調査を行う従来方法がいまだに多数を占めている。この方法では、調査結果を手書きで記録するため、整理時間を含めると多大な労力がかかり、省力化を求めるニーズは根強くあった。
奥村組の建築企画課担当者は開発目的に関して、「壁タイルの打診調査における作業の効率化と省力化を図る方策の1つとして、より普及させやすい技術となることを意図した。システムを構成している機器は汎用的に使用できる記録支援装置であり、調達しやすくコスト面においても利点があることから、広く普及展開することが可能だ」とコメント。
作業効率の具体的なデータはまだとしながらも、「同業他社で開発されている業務改善手法と比べて遜色ない迅速化・省力化が図れる。当面は本システムを自社の調査業務に適用して改善を行う予定だが、今後は外壁タイルの打診調査における省力化のニーズに応える有効な技術として、積極的に提案していく」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 外壁パネル施工を30%省人化、新しい足場工法を開発
大和ハウス工業とフジタは日鉄住金鋼板と共同で、新型の外壁パネルを開発し、外部足場が不要で屋内からパネルを取り付けることができる新しい工法を開発。外壁施工に必要な作業員数を最大3割削減できるという。 - エネルギー削減率68.7%、清水建設が「ZEB Ready」達成
清水建設が設計施工を行った「清水建設四国支店ビル」が「ZEB Ready」を達成した。新開発の空調システムなどの導入により、2016年4月〜2017年3月までの年間一次エネルギー消費量を、標準的な仕様の建物と比べて68.7%削減することに成功したという。 - 中性子でインフラを非破壊検査、適用範囲を広げる新手法
理化学研究所などの研究グループは、中性子を利用しコンクリート内部の損傷などを検知する非破壊検査の新手法を開発した。従来のように対象物を検出器と中性子源で挟み込む必要がないのが特徴で、橋だけでなく空港の滑走路やトンネル壁の非破壊検査に適用できるという。 - iPadを活用した内装仕上げ検査、入力工数を3割削減
戸田建設はiPad用内装仕上げ検査システムの新板を開発したと発表した。YSLソリューションと共同開発した建築現場向けの内装仕上げ検査システムで、従来より検査項目の入力スピードと操作性を大幅に向上させた。検査作業を行う現場作業員の負担軽減に貢献する狙いだ。