第1回ドローンによるインフラ点検の動向・最新技術のフォーラム開催:第1回ドローン×インフラメンテナンス連続セミナー(1)(1/3 ページ)
ドローンによる橋梁や鋼構造物のインフラ点検が検討されているが、ハードルの1つとなっているのが、操縦者の視界を超えてドローンが飛行する「目視外飛行」。現状で電波障害や運行システムの整備などの課題があり、実現すれば人の目の届かない遠隔地でのインフラ点検や水中のダム・河川点検などへも活用の場が広がることになる。
インフラメンテナンスに産官学民の技術や知見を総動員するプラットフォーム「インフラメンテナンス国民会議」は2018年5月10日、第1回となるドローン関連政策・技術開発動向のフォーラムを東京・品川の日立製作所で開催した。
フォーラムでは、産官学民がそれぞれの立場から、小型無人機(ドローン)を使ったインフラ点検の課題や方策、技術的提案などについて講演した。ドローン点検の課題となっているレベル4「目視外飛行」の可能性と現状での取り組みなど、注目を集めた主なアジェンダを取り上げる。
目視外飛行の実装・運用は2020年から
国の動向では、経済産業省 産業機械課 ロボット政策室が、「空の産業革命に向けた政策の動向」と題し解説。現在検討が進められている、ドローンの「目視外飛行(BVLOS)」については、物流・警備・遠隔地のインフラ点検などの分野にも活用が広がると期待を示した。
2017年5月19日にとりまとめたロードマップでは、ドローンの飛行レベルで「レベル4」に位置付けられている「有人地帯における目視外飛行」は、2020年からの実用化をめどに技術開発・環境整備を行っていくとした。
経産省の2018年度予算案では、ロボット・ドローンが活躍する省エネ社会の実現プロジェクトに32.2億円、次世代人工知能・ロボット中核技術開発に56.9億円を計上。飛行精度や耐風性の性能評価基準の策定や目視外飛行する多数のドローンの運航管理システム構築、衝突回避技術、ドローンに使えるセンサー技術の開発に取り組む。こうした開発や実証を2018年度から順次開所する福島県南相馬市の「福島ロボットテストフィールド(RTF)」と浪江町に整備する附帯滑走路との間の空域(約13km)で行う。
今後の予算スケジュールは、2018年からはまず、レベル3の無人地帯における目視外飛行の技術開発を継続。レベル4の有人地帯での目視外飛行は2020年以降の実装・運用を予定している。
経産省 ロボット政策室の担当者は、「目視外飛行におけるドローン産業は、製造もサービスも競争はこれから。契機となるのが、目視外飛行に不可欠な『運航管理システム(UTM)』の実用化になる。世界でもまだ実装できた国は無いため、実現できれば機体やサービスの開発競争が生じ、その国で成長した企業が世界市場を獲得できるだろう」と重要性を強調した。
世界のUTMプロジェクトをみると、米国はNASAが2016年から着手し、2019年をめどに実用的なUTMシステムを開発。欧州は、欧州版UTM「U-Space」を2016年末に発表し、2021年には社会実装する予定。日本は2017年度から3年間のNEDOプロジェクトをスタートさせ、全体設計をJAXAが担い、2020年の社会実装を目指している。
今後の方針は、物流や災害の分野でドローンを利活用し、市場を拡大。世界に飛躍するドローンメーカーを育成するため、環境整備を推進していくとした。
次に東京大学大学院の淺間一教授がロボットによる橋梁点検の最新動向を解説した。
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