リニア開通による影響の検討会が中間とりまとめ案
リニア開通の影響や施策の方向性などを検討しているスーパー・メガリージョン構想検討会は、これまでの議論をまとめた骨子案を策定した。リニア開通で産業構造に大きな変化がもたらされる他、東京〜大阪間が山手線1周と同じ約1時間と、距離と時間の制約もなくなるため、ビジネス・ライフスタイルにも新たな形が生まれるとしている。
リニア中央新幹線の開通がもたらす効果を最大限に引き出す取り組みを検討している「スーパー・メガリージョン構想検討会」は2018年5月14日、第11回検討会を東京・霞ケ関の中央合同庁舎で開催し、これまでの議論をとりまとめた骨子(案)を明らかにした。
リニア開通で産業構造の劇的変化と多様な人材の活用
同検討会は、リニア中央新幹線の開通により、国土構造に大きな変革がもたらされることが予測されるため、国・地方公共団体・経済団体が、共通のビジョン構築を図る目的で2017年8月に設置された。これまで、大和ハウス工業やアクセンチュア、京都銀行、日立製作所など、さまざまな業種の識者を招き、リニアをはじめとする高速交通ネットワークの整備による交流・対流に要する時間の劇的な短縮が、どのような影響を及ぼすかを議論してきた。
今回とりまとめられた骨子案では、東京〜大阪間が約1時間で結ばれ、日本全体の人口とGDPの約6割を占める東京・名古屋・大阪の三大都市圏が一体化することでもたらされるメリットと、その先にある高速交通の整備効果を全国に広く波及させる取り組みや国土・地域デザインなどといった20年後の国土のあるべき将来像を示した。
影響のうちビジネス・ライフスタイル面では、移動時間の短縮でフェース・トゥ・フェースコミュニケーションの機会や交流時間の増大につながること、時間と距離から解放された新たな働き方の選択肢が広がること、三大都市圏をゲートウェイに経済効果が全国に波及して、国内外から人材が集まるナレッジリンクが形成されるなどのプラスとなる点が挙げられた。
産業構造では、三大都市圏を中心に国内外の人の流れが活発化し、高速交通ネットワークを通じて全国の個性が結び付くことで、各地にイノベーションが巻き起こると予測。新たな成長産業が芽生え、モノ・情報の流れを含めて多くの人やモノを集められる正のスパイラルが生み出されるとした。
リニア中間駅の周辺住民にとっては、これまで暮らしを制限していた距離と時間の壁が低くなることで、新たなライフスタイルを提供する地域に発展する可能性があると指摘。各地域には景観や歴史、風土といった個性を生かした街づくりを構想することが求められると提言した。
都市部以外で広域的なスーパー・メガリージョン効果を引き出すためには、ターミナル駅を核とした都市内交通の強化、中間駅から南北に伸びる高速道路ネットワークの活用など、既存交通のストック効果を高め、リニア駅を交通結節の核に置いたネットワーク形成の重要性が強調された。
委員による骨子案への意見では、「AIやIoTといった第4次産業革命の潮流に対するカウンターバランスで、農業や1次産業の価値を見直す動きが出始める。そのため、地方にリニア中間駅ができることが影響の大きなポイントで、かつてのニュータウン開発などではなく、働き方や自然との付き合い方といった住み方、暮らし方の時代を切り開く形が登場するのでは」といった声が上がった他に、「世界をリードするコアとなる“内なる国際化”を進めることが重要だ」という提言もあった。
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