建築計画を機械学習で自動化、賃料収入や稼働率も試算可能に:FM(2/2 ページ)
スターツ総合研究所が機械学習モデルを用い、賃貸住宅の事業・建築計画の作成を自動化できるシステムを開発。宅建資格取得者レベルの知識さえあれば、約15分で計画の策定が行えるという。
自動化を実現する3つの推計モデル
建築・事業計画を自動で作成できるようにするため、スターツ総合研究所は与えられたデータから「建築費用」「賃料」「稼働率・賃料推移」を試算する、3つの推計モデルの開発に取り組んだ。3つ全てに、グループ内の事業で蓄積されたデータを活用している。
建築費用を概算する推計モデルについては、グループ会社で、建設・土地活用コンサルティング事業を手掛けるスターツCAMが持つ3年分、約1600件のデータを活用。これらの情報を利用して、機械学習(線形回帰)モデルを作成した。試算の精度を高めるため、設計費や一般管理費などは積み上げ式で算出し、純工事費の部分を機械学習で推計するようにしている。
賃料と稼働率・賃料推移を試算する推計モデルの開発については、グループ会社が運営する不動産・住宅情報サイト「ピタットハウス」のデータを活用。賃料を査定する推計モデルはピタットハウスに掲載された2.5年分、約2億レコードの賃料情報を利用している。これらの賃料情報を路線別に分類して教師用データとして学習させ、立地条件などの情報から賃料を推計できるようにした。
稼働率・賃料推移の推計モデルは、ピタットハウスの20年分、約31万4000戸の成約データを活用。沿線別・間取り別に稼働率を、実績データから賃料変動率を推計できるようにした。なお、これらの推計モデルの開発にあたっては、日本大学の清水千弘教授の協力を得た。
これらの3つの推計モデルが、ラプラスの建築・事業計画作成の自動化を実現する核となってる。推計などのデータ処理は全てクラウドサーバ上で行われる。また、ラプラスで利用する地図情報はNTT空間情報の「GEO SPACE」、簡易モデル・図面の作製はコンピュータシステム研究所の「ROOK2」、地盤情報については応用地質の「三次元地盤情報サービス」を活用。ラプラスとこれらサービスは、API(Application Programming Interface)で連携している。
スターツグループでは、2017年にBIMデータを活用し、建物の企画設計、施工から維持管理までを一気通貫でマネジメントできるBIM-FMシステム」を発表している。ラプラスはこのBIM-FMシステムとも連携する。
光田氏は「ラプラスは、これまで経験やカンに頼っていた不動産価格の決定プロセスを、自動化・透明化できる。スターツグループにとっては、不動産・建築・金融を横断するサービス」と話す。2018年5月から社内でベータ版の利用を開始し、同年12月には他社への提供を開始する予定だ。具体的な利用料金などは未定だが、「基本的には月額課金制、規模によってはエンタープライズ契約などを想定している」(光田氏)とした。
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