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BIMとVRのその先で――設計者に求められる新しいスキルとは建築×VR(3)(1/2 ページ)

設計プロセスに積極的にVRを導入しているフリーダムアーキテクツデザインに、複数の視点からVRを活用するメリットについて聞く本連載。最終回となる今回は、同社がBIMやVR活用の先に描く新しいビジネスモデルや、今後の設計者に求められる“スキル”について聞いた。

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 ソフトウェアの進化やHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の低価格化によって、建築分野へのVR(バーチャルリアリティ)システムの活用が広がりつつある。その導入効果や利点について、デザイン住宅設計を手掛ける独立系設計事務所で、設計業務に積極的なVR活用を進めているフリーダムアーキテクツデザイン(東京都中央区、以下、フリーダム)に聞く本連載。

 第1回は「顧客へのメリット」というテーマで、同社がVRを導入した背景や、前提となるBIMへの取り組みを第2回は「設計者の視点」という観点で、VRの導入が設計業務に与えた影響やその効果について紹介した。同社はVRの導入について、顧客満足度や設計品質の向上、設計者のスキルアップなど、さまざまな点にメリットを見出していることをお伝えした。

 最終回となる今回は、同社の建築事業開発部 部長・社長の邸宅設計室 室長・ブランド戦略企画室 室長を務める長澤信氏に、BIMやVRの導入の先にあるビジョンや、構想中の新しいビジネスモデルについて聞いた。


フリーダムアーキテクツデザインの長澤氏

―― 一部の高額案件へのフルBIMの導入と、その延長にある顧客提案へのVR活用について、「確かなメリットを感じている」と話されていますが、今後は他の案件にもこの手法を広げて行くのでしょうか。

長澤氏 これまでは高額案件を中心に、VRを利用して顧客提案を進めてきました。今では15分程CGのパースを見ながら説明を行ったあと、その後すぐにVRで設計モデルを体験してもらうようになっています。やはり「VRで体験した瞬間に、この家を欲しいと思った」と話す顧客がとても多い。なので将来的には、最初からいきなりVRで体感してもらうという提案方法もアリだと考えています。今後は数年以内にこの“フルBIMで設計し、提案はVRで行う”という手法を、2年以内にすべての案件で実践するという目標で動いています。フルBIM案件の建設は、自社の施工会社が担当しているのですが、ノウハウがたまってきた段階で他社にも広げていきたいと考えています。

 ただし、提案時にVRに対応した設計モデルだけを納品したり提供したり、といった方法は考えていません。VRで体験してもらうと、顧客の要望や意見というのは「ここは歩きにくい」「この引き出しの高さは使いにくい」といったように、非常に具体的になるんです。こうした具体的な要望や意見というのは、その住宅を設計した設計者でなければ正確に捉えて、モデルに反映させられないものが多い。なので、VRの利用を広げても、設計者と顧客がリアルな場でコミュニケーションをとる、というのは今後も必ず行うようにしようと考えています。

―― 第2回のインタビューで、VRを前提とした設計/提案を行う場合、「設計にごまかしがきかなくなる」とおっしゃっていました。その理由は、顧客に“図面やCGを見せる”のではなく、“仮想的に体験できる空間そのものを提案する”ようになるため、「ここは現場で合わせよう」といった作り方ではなく、家具、素材など、空間を構成する細部までを突き詰めて設計する必要があるからということでした。すると、設計案の段階、購入する家具や設備を決める、決めたいと考える顧客も出てくるのではないかと思います。その場合、設計会社という立場にあるフリーダムと、家具・建材設備メーカーとの関係も変化してくるのではないでしょうか。

長澤氏 私がフリーダムに入社した4年前と比較すると、こうしたVRへの取り組みを始めて以降、設備・家具メーカーとの関係は確実に変化してきました。一般的にメーカーさんが自社の商品の営業を行う先というのは、住宅の施工を行う事業者や商社です。住宅の設計者に営業したって売れるわけがないということで、正直、これまで僕らは見向きもされなかった(笑)。ただ、VRを導入し始めてから、家具・設備メーカーの方から「何か一緒にできないか」という話をいただくことも増えてきました。

 家具や設備と関連する話では、BIMが前提になると住宅施工費の見積もりの仕方も変化してくると感じています。例えばフローリングの場合、2次元の図面で設計を行っていた時は、図面から手拾いして、必要なだいたいの大きさを決める。その後、本当に必要な大きさは実際の現場を見てから決まるので、最初は概算になるわけです。しかし、BIMだと具体的に必要な寸法がわかっているので、設備の発注も正確になる。現在フリーダムではBIMデータとプレカットの連携にも取り組み始めています。

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