トンネルの掘り残しが一目瞭然、断面整形の時間を半分以下に:情報化施工
鹿島建設と演算工房は、山岳トンネル工事における断面整形作業の効率化を目的として「アタリガイダンスシステム」を開発したと発表した。切羽直近にて目視で行っていた危険な掘り残しの確認作業を不要にし、断面整形の作業時間も短縮する。
独自の3Dスキャナー技術で設計断面データと重ね合わせ
鹿島建設と演算工房は、山岳トンネル工事における発破後の「アタリ」を除去し断面を整形する作業の効率化を目的とした「アタリガイダンスシステム」を開発したと発表した。発破直後の切羽直近にて目視で行っていた危険なアタリの確認作業を不要にし、トンネル断面整形の作業時間も3分の2に短縮する。
アタリとは、発破掘削後に設計断面内に残った掘り残しのことで、発生した場合はブレーカーによって除去する必要がある。山岳トンネル工事の掘削作業では、このアタリ箇所の有無を発破ごとに判断することが必須で、従来では切羽監視人が目視によって確認・判断するためにアタリ箇所の見落としや、地山を必要以上に除去した場合には作業時間と吹付材料のロスが発生していた。また切羽監視人による目視確認は、発破直後の緩んだ切羽直近で行うため、岩塊の滑落などによる労働災害も懸念されている。
本システムでは、鹿島が開発した高速3Dスキャナーによって計測した切羽形状の点群データと設計断面のデータを重ね合わせ、干渉している部分を視覚的に分かりやすく色で表現する。スキャナーによる測定時間は約1分で、作業者が持つタブレット端末に計測後約30秒で結果を表示できるため、確認作業に要する時間を格段に短縮することが可能になった。また、設計断面のデータにはロックボルト位置を表示しており、これを目安にすることでアタリ箇所の特定も容易となった。
現在施工中の「宮古盛岡横断道路 新区界トンネル工事」の一部で本システムを適用した結果、従来通り目視確認した範囲との比較で作業時間は約3分の2に短縮し、吹付材料の消費量も約15%削減した。また、切羽監視人が切羽直近へ立ち入ることがなくなったため、安全性も向上したという。
鹿島は、山岳トンネル工事の安全性と生産性の向上を目指して本システムを積極的に活用し、作業の大幅な省人化・自動化に向けて技術開発を推進するとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 切羽面を3Dに、トンネル施工のドリル誘導を効率化する新システム
鹿島建設は演算工房と共同で、山岳トンネル工事でドリルジャンボの削孔を誘導する新システムを開発したと発表した。オペレーターの操作を支援し、正確で迅速な削孔に貢献するという。 - 大林組がトンネル工事にAI活用、専門家の知見を学習
大林組は山岳トンネル工事での切羽の評価に、AI技術の1つであるディープラーニング(深層学習)の活用を進めている。一部の項目については、9割近い精度で地質学の専門家と同等の評価が行えているという。 - トンネル切羽の地質評価、人工知能で自動化
安藤ハザマはトンネル切羽における地質評価を、人工知能による画像認識で自動化するシステムを開発した。現時点で切羽写真から、切羽時の弾性波速度を8割以上の認識率で特定できるという。 - 削孔データで切羽地山を3D評価、トンネル工事を効率化
西松建設はジオマシンエンジニアリングと共同で、山岳トンネルの掘削面と付近の地山性状を連続的に3次元で評価できるシステムを開発した。最適な支保や掘削手法の選定などに役立でることができ、施工の安全性・経済性の向上が期待できるとしている。 - ICT土木を加速、地質情報も取り込める予測型山岳トンネルCIM
大林組は、山岳トンネルの切羽前方地質の予測結果を取り込んだ新たなCIMシステムを開発した。 - 掘削具合がひと目で分かる、トンネル工事にプロジェクションマッピング
清水建設は山岳トンネルのインバート施工の効率化に、画像や映像を投影する「プロジェクションマッピング」を活用するシステムを開発した。インバート底面の掘削の過不足を数値化し、その値を実際の底面上に色分けして照射することで、過不足の値を視認しながら無駄なく掘削作業を行えるという。