建物内の異音を可視化、大成建設の音源探査システム:検査・維持管理
大成建設は、建物内の異音箇所を高精度に可視化する音源探査システム「TSounds-Radar」を開発したと発表した。
全天球カメラとマイクロフォンアレイの組み合わせにより実現
大成建設は、建物内で発生した異音箇所を高精度に特定、可視化する音源探査システム「TSounds-Radar」を開発したと発表した。本システムの導入によって、より早く正確に異音箇所を把握することができ、迅速で効率的な異音対策が可能となるという。
建物内では、設計段階では予測の難しい異音が竣工後に発生する場合がある。接する建築部材間における熱膨張差異による応力発生も異音原因の1つであり、このような異音を低減するには、発生箇所を調査して対策を立てることが必要となる。
従来手法では、複数点で音と振動を測定し異音箇所を特定していたが、異音は発生頻度が低い場合が多いため、短期間で異音箇所を把握することは困難だった。
大成建設は、この問題を解決するためTSounds-Radarを開発。TSounds-Radarでは、複数のマイクロフォンを束ねたマイクロフォンアレイを1箇所に設置する。これにより、建物内で発生する全方位の異音を、音源定位理論として知られるMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法により解析し、全天球カメラの画像データと合わせて異音箇所を可視化することが可能となった。
さらに、発生頻度が低い異音箇所を特定するため、本システムでは最長で1週間程度の連続計測に対応する。発生音はPCとバックアップ用レコーダーに同時録音が可能で、1度の異音発生で異音箇所を特定し異音対策の迅速化に貢献する。
また、探査範囲がある程度特定できている場合は、方向や範囲に応じてマイクロフォンの配置を変更することで、より高精度な測定が可能になるという。このため、マイクロフォンを取り付ける円状フレームには、設置する高さや傾きを任意に調整できる機構を設けた。
同社は、本システムにより異音の発生箇所を高精度に特定することで、さまざまな建物において積極的に品質確保へ活用するという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 地震直後に安全度を“見える化”、建物の損傷を素早く検診
NTTファシリティーズは、「関西 スマートビルディングEXPO」で建物安全度判定サポートシステム「揺れモニ」などを展示した。地震直後に素早く建物の安全度を判定できるシステムだ。 - 巨大構造物を透視する可視化技術、NECなどが開発へ
NECなどは透過性の強い宇宙線を用いることで、火山などの自然構造体や道路、鉄道など大型建造物の地中埋没部分を監視できる「ミュオグラフィ」測定システムの開発を開始した。 - 建物のモニタリング状況を見える化、平常時から地震時も
東急建設は富士電機と共同で、地震時から平常時まで建物のモニタリング状況を見える化し、建物の健康状態を診断する構造ヘルスモニタリングシステム「4D-Doctor」を開発した。 - 画像解析で杭の施工精度を向上、奥村組が実用化
奥村組は、高速画像解析技術を応用して基礎杭の鉛直精度を定量的にリアルタイムで把握できる杭の施工管理システムを開発した。2台のビデオカメラとタブレット型PCなどで構成されている。 - ビル管理に「スマートグラス」を実戦投入、遠隔から若者に技術を伝授
大京グループのオリックス・ファシリティーズはビル管理や工事検査業務に「スマートグラス」を導入する。遠隔地から作業指示による業務効率化や、若年層にベテランの持つ技術やノウハウを伝えるのに活用していく。 - 走りながらトンネルのヒビも自動検出、三菱電機がインフラ向け新サービス
三菱電機はトンネルなどのインフラ向け解析・計測サービスの提供を開始。専用車両で走行しながら効率良く計測が行えるのが特徴で、0.3mmのひび割れも自動検出が可能だという。