数日で“年単位”の経験値、VRが変える設計者の成長サイクル:建築×VR(2)(2/2 ページ)
設計プロセスに積極的にVRを導入しているフリーダムアーキテクツデザインに、複数の視点からVRを活用するメリットについて聞く本連載。VRの導入は、設計者の成長速度を大幅に引き上げる効果をもたらしているという。その理由とは?
設計の意味を裏付けるシミュレーション
長澤氏が2つ目のメリットとして挙げた、「設計品質の向上」に大きく寄与しているのが、事前のシミュレーションが可能になった点だという。同社ではRevitのBIMデータを、「Autodesk Live」でVRデータに変換している。その中で、作成したデータに時間軸を加えて、日射の入り方をシミュレーションするといった活用を行っている。
「ある物件では施主から『日の当たるリビングが欲しい』とう要望を頂いていた。しかし、セオリーに従って南側に窓を採っていた当初の設計案でシミュレーションを行ってみると、実際には日光が入らなかったので、変更することになった。この例のように、設計者がいままではなんとなく当たり前だと考えていたことも、シミュレーションをしてみると、そうでないことが分かったりする。施主に対し、その設計が持つ意味や効果を事前に検証し、裏付けがある状態で提案ができるというのは、設計者にとってすごく自信になる」(長澤氏)
また、VRの導入は、業務フローの効率化や、コミュニケーションの面にも良い影響をもたらしているという。これまでは作成した設計案を社内で確認する場合、カットを決めたパースをレンダリングして、それを見ながらディスカッションを行っていた。しかし、「自分が切ったパースのイメージだけでは不十分で、結局また別のカットを数時間かけてレンダリングして……というようなことも多かった」(藤目氏)という。
しかしVRの利用を前提に作成したモデルであれば、その場で抜け漏れなく確認ができるため、意思疎通のスピードも早くなる。「設計はOJTで覚えていくというのが当たり前で、どうしてもマニュアルでは教えきれない部分が多い。業務が忙しいとマニュアルを作りがちだが、忙しい時ほどしっかりと上が見ないと若い設計者は育たない。VRを前提にしたモデルデータであれば、気になった部分をさまざまな角度から自由に確認できるので、チェックする側も判断しやすく、指示も出しやすいので、非常に重宝している」(長澤氏)
設計者の意識も変わる
こうしたVRの導入を進めたことで、設計者の施主に対するアプローチにも変化が起き始めているという。「図面ではなく、空間を見せるというように提案の内容が変わったことで、今までのような「何畳のリビングが欲しいですか」みたいな聞き方はしなくなっている。広さの要望を聞いて図面を書くだけではだめで、その空間を何に使いたいのか、何を置きたいのか、そこでどんな生活を送りたいのか−−といったように、施主がその空間に求めている体感や価値から逆算しなければ、良い設計ができないということを自然に意識しはじめている」(長澤氏)。
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