年間を通じた時刻別熱負荷を高精度に予測、大林組が開発:情報化施工
大林組は、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の達成や環境共生建築の実現に必要な省エネルギー手法に関して、導入効果をより正確に予測する熱負荷シミュレーションシステムを開発した。
年間を通じた時刻別熱負荷を高精度で予測
大林組は2017年6月、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の達成や環境共生建築の実現に必要な省エネルギー手法に関して、導入効果をより正確に予測する熱負荷シミュレーションシステム「エコシミュレ」を開発したと発表した。
建築物におけるエネルギー消費量は、国内の総エネルギー消費量の約3分の1を占める。そのため建築物の省エネルギー化、ZEB化は持続可能な社会を実現する上で重要な課題となっている。特に窓からの熱負荷軽減や自然エネルギーの利用は効果が高く、ダブルスキンや自然換気、昼光などの手法が注目されているという。
大林組によると、設計時に用いていた熱負荷計算プログラム「NewHASP/ACLD」は、これらの省エネ手法を導入した場合の熱負荷低減効果を精度よく予測できなかった。
エコシミュレは窓の質点系伝熱モデルや喚起回路網モデル、光環境シミュレーションRadianceモデルなど、省エネルギー手法の導入効果をシミュレーションできるモデルとNewHASPを連携させることで、年間を通じた時刻別熱負荷を高精度で予測する。
従来シミュレーションプログラムに必要な入力データは、専門知識を持つ設計者でなければ作成できなかった。エコシミュレはNewHASPとBIMが持つ情報を入力データとして活用し、入力データの作成から熱負荷シミュレーションまでのフローを自動化。容易な操作のみで、複雑なシミュレーションを効率よく行うことができる。
また年間の全時刻について、精密な熱負荷シミュレーションも可能だ。従来は年間を通じた事故区別の予測は行わず、最も気象条件の厳しいピーク日のみを考慮して設計し、各月の代表日や夏至・冬至・春秋分の日だけを対象にしていた。この場合、実際の熱負荷を正確に予測できないため、空調機器容量は余裕をみた数値を定めていたという。
エコシミュレを活用することで、適正な空調機器容量を算出することが可能となり、適正な能力の設備機器を選定することで導入コストの低減が図ることができる。
大林組は、リリース上で「エコシミュレを活用した環境共生建築を実現する高度な設計を通じて、持続可能な社会の実現に向けて貢献していくとともに、顧客の多様なニーズに応える設計、施工を追求していく」とコメントした。
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