4万個のブロック計測を一晩で、3Dスキャンで精度も50倍:情報化施工
JR東海は河川内橋脚の傾斜を防ぐ「根固めブロック」の位置情報を、3Dレーザースキャナーを活用して高精度に計測できるシステムを開発した。従来1週間程度かかっていた計測期間を、約1日に短縮できるという。
JR東海は3Dレーザースキャナーで、橋脚の傾斜を防ぐ根固めブロックの位置を計測するシステムを開発した。従来の手法と比較してブロックの位置確認作業を大幅に効率化できるという。東海道新幹線・富士川橋梁(静岡県)で、2017年9月から導入する。
台風などの大雨による河川増水が発生すると、橋脚の周りの地盤が掘られる「洗掘」という現象により、橋脚の傾斜などの被害が発生する恐れがある。そこで富士川橋梁では洗掘を防ぐために約4万個の根固めブロックを設置しており、大雨により河川が増水した際には、この根固めブロックが移動したり沈下したりしていないかを確認している。
従来この確認作業はヘリコプターを利用した航空写真測量と、係員による河川内での目視確認を組み合わせて行っていた。1回当たりに計測できるブロックの数は約250個。ヘリコプターの利用には調整手続などの手間が掛かるため、計測後の結果出力までには約1週間の時間を要していた。
開発した計測システムは、3Dレーザースキャナー、計測治具、基準点ターゲット、解析システムで構成している。使い方は、3Dスキャナーを計測治具に取り付け、橋梁の点検用通路に設置。次にレーザーを照射し、根固めブロックの位置情報を取得する。この作業を繰り返すことで、約4万個のブロックを一晩で計測する。取得したデータは開発した専用ソフトで分析し、結果を出力するという流れだ。
河川の水位が低下すれば直ちに作業可能で、計測から結果出力までにかかる時間を1週間から1日に短縮できる。さらに従来手法では±10cm程度だった計測誤差を、2mmまで小さくできるメリットもある。計測作業は橋梁の手すりのついた通路から行うため、これまで行っていた現場での目視点検と比較して、作業の安全性も高められるという。
コスト面でのメリットもある。これまでの計測手法では、1回当たり約300万円の費用が掛かっていた。さらに取得したデータは、専門技術者が分析する必要があった。しかし今回開発したシステムは初期投資のみで、その後の計測費用は掛からない。また、専用ソフトを開発したことで、専門技術者でなくても簡易に分析が行えるという。
このシステムは国際航業、JR東海コンサルタンツと共同で開発したもので、特許も出願している。なお、鉄道橋梁の根固めブロックの位置計測に3Dレーザスキャナーを用いるのは国内初だという。
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