建物の電力需要を予測、深層学習で高精度に:省エネビル
清水建設はAI技術の1つであるディープラーニング(深層学習)を活用し、建物の電力需要を高精度予測するシステムを開発した。電力小売りやESCOなどの電力関連事業の収支改善や施設のエネルギー運用の効率化に役立てる。
清水建設はこのほど、中部大学工学部情報工学科(山下研究室)の協力を得て、AI技術の活用により建物の電力需要を高精度に予測するシステムを開発した。電力小売りやESCOなどの電力関連事業の収支改善と施設のエネルギー運用の一層の効率化に役立てる狙いだ。
施設・地域レベルのエネルギーマネジメントや電力小売り、ESCOなどの電力関連事業では、建物の電力需要を精度高く予測することが求められる。電力需要の過小予測は、割高な市場電力の購入増に繋がる一方、過大予測は市場電力の恒常的な過剰購入となることがその大きな理由だ。
同社と中部大学は東日本大震災で得た教訓を踏まえ、2012年7月から5年にわたり、同大学の施設群を対象に、電力需要の経時変化を予測し、それを抑制するスマートグリッド・システムの構築に共同で取り組んできた。このため、同施設群については、個々の施設の日々の電力需要をはじめ、気象、設備・施設の利用状況などに関する膨大なデータがストックされている。
清水建設は、こうした各データの関係をAI技術の1つであるディープラーニング(深層学習)を活用してシステムに学習させた。具体的には、過去4年分の実際の気象、設備・施設の利用状況と電力需要の関係を学習させ、その上で直近1年分の日々の気象予測データや設備・施設の利用予定データから翌日のピーク電力需要を予測させた。その結果、AIによる予測誤差は従来システムから3.6ポイント改善し、5.7%となったとする。
今回のデータベースの構築では、ピーク電力需要の予測にとどめたが、理論的には電力需要の経時変化の予測が可能だという。同社は今後、AIの内部構造や入力する学習データを精査することで予測精度を一層高めていく考えだ。
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