東京・大手町、地下に広がる冷暖房システムが進化:省エネビル(2/2 ページ)
東京都千代田区のビジネス街、大手町エリアの地域冷暖房システムを支える新たな地下プラントが完成した。大手町・丸の内・有楽町エリアを中心にエネルギー供給システムを運営する丸の内熱供給が運営するプラントで、大手町パークビルや周辺のビルや設備に冷水や温水を供給することができる。水槽を活用したコージェネレーションシステムを導入するなど、エネルギーの高効率化を図ったのが特徴だ。
水槽を活用したコージェネシステムを構築
同プラントの特徴の1つが、ガスエンジン発電機から排出されるインタークーラー排熱と、大手町パークビルと隣接する「大手町タワー・JXビル」の中水排熱をヒートポンプの熱源水として利用できるコージェネレーションシステムを構築し、温水製造の効率を高めている点だ。
しかし、排熱が発生する時間帯と、ビルや施設の実際の温熱需要には時間差がある。そこで、一時的に熱エネルギーを貯蔵しておくための熱源水槽を設けている。これは熱の需要が少ない夏場には、冷熱源用の水槽として活用する(図6)。なお、ガスコージェネレーションシステムおよび中水排熱利用ヒートポンプシステムは、政府の補助金を活用して設置した。
非常時にも冷水を供給
この他に、事故・災害などが発生して電力供給が遮断された場合にも、大手町パークビルおよび大手門タワー・JXビルの2つの施設内にある非常用発電機で発電した電力を活用し、それぞれのビルへ冷水を供給できるシステムを導入した。この場合には、2台導入したインバーターターボ冷凍機を利用して冷水を製造する仕組みだ。
今回の竣工により、5つのプラントが連携する冷水および熱の供給のインフラネットワークが構築されることになった。丸の内熱供給では、今後も大手町地区全体のエネルギーシステムの強靭化に向け、高効率機器を導入した新プラントをネットワークに繋げることで、継続的にエネルギー効率を向上させていく方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 電力と水を自立供給、都心の防災拠点を担う新型ビル
東京都千代田区大手町に完成した地上31階建ビル「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」。災害時には電力と水を自立供給できるシステムを導入し、1000人の帰宅困難者を収容できるなど、都心の防災拠点としての機能も備えている。 - 太陽光を集めてビルの16階から1階へ、蓄電池で停電時にも電力を止めない
東京都心の臨海部に自然エネルギーと蓄電池を活用して電力使用量を削減できる地上16階建てのビルが完成した。屋上に設置した太陽光集光装置からビル内の吹き抜け空間を通して1階まで自然光を取り入れるほか、夜間に蓄電池に貯めた電力を昼間に供給して需要のピークカットを実施する。 - 国際認証制度で日本初の最高評価、エネルギーを60%削減するYKKの新本社ビル
YKKグループの新本社ビル「YKK80ビル」(東京都千代田区)が、米国グリーンビルディング協会が実施する建築物の環境性能評価制度であるLEED認証で、最高ランクのプラチナ認証を獲得した。オフィスビルとしてLEEDのプラチナ認証を獲得するのは日本初の事例だ。同ビルは一般的なオフィスビルと比較してエネルギー消費量を60%抑えることを目指した戦略的な省エネビルだ。