建材の風騒音を事前に評価、風速20メートルも再現:省エネビル
大成建設は、建物の外装材による影響で発生する風騒音を計測できる風騒音シミュレーターを開発した。超高層建物で想定される高風速も再現可能で、風騒音の対策に役立てる。
大成建設は、建物の外装材による影響で発生する風騒音を計測できる「風騒音シミュレータ」を開発し、このほど同社技術センターで本格運用を開始した(図1)。この業界初のシミュレータの適用により、風騒音を建物の新築・改修前に評価し、必要に応じた適切な対策案を講じることが可能となる。
建物の高層化に伴い、バルコニーの手摺やルーバー材など建物の外装材に風が作用する際に発生する風騒音が問題となっている。風騒音を検討する場合、対象となる外装材を風洞実験室に設置して風向・風速別の発生音分析を行う。しかし、これまで利用した実験室は吹出口が小型で最大風速も低かったため、実大試験体を用いた実験に制約があるだけでなく、風速が毎秒20メートルを超えるような超高層建物で想定される高風速を再現した計測が困難だった。また、発生した風騒音が、実際の建物空間ではどのように聞こえるかについて体感したり、評価したりすることができなかった。
そこで同社では、建物周辺で発生する暗騒音(計測対象としている発生源からの騒音以外のすべての騒音)を再現しながら、対象となる騒音を計測できる風騒音シミュレータを開発した。
同シミュレータは、音響風洞実験室、暗騒音付加システム、風騒音評価システムから構成されており、音響風洞実験室では、対象とする外装材の実大試験体に大型吹出口から様々な風向や風速の風を作用させ、風騒音を評価することができる。さらに、高風速を再現し、超高層建物での発生が問題となる風騒音にも対応することが可能だ。
また、建物周辺の道路・鉄道などの暗騒音を、場所や音量別で再現することができる暗騒音付加システムを導入した。これにより、音響風洞実験室で得られる外装材の風騒音の評価(部材単体性能)だけでなく、実際の建物空間における風騒音の聞こえ方(建物空間性能)を体感および評価することができる。
この他、風騒音評価システムは、音響風洞実験で計測された風騒音特性(周波数スペクトル分析結果)と暗騒音との関係から特定周波数での発音の有無や大小、外装材に作用する風向・風速による発音の大小など聞こえ方の程度を客観的に評価することが可能だ。
今後、同社では、建物の風騒音問題を未然に防ぐため、同シミュレータの活用により外装材の部材単体性能および建物空間性能を評価し、建物の設計・施工で、最適な仕様の提案などを行うとともに、風騒音が発生しない外装材の研究開発を進める方針だ。
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