大成建設が国内初の燃料電池の導入実証、地域のエネルギーを最適化:省エネビル(2/2 ページ)
大成建設は横浜市戸塚区にある同社の技術センターに、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を導入する。燃料電池が生み出す電力と熱をセンター内の複数の建物に供給する。同時に複数の建物のエネルギーを一括管理できる新しいEMSを開発・導入し、エリア内の電力需給の最適化を図る。この取り組みで得られたデータと知見を活用し、建物への大型燃料電池の導入拡大に生かす方針だ。
BEMSを束ねるAEMS
今回の取り組みではSOFCの排熱を同敷地内に敷設した熱導管で複数の建物に供給。各建物内の冷房・暖房に活用し、熱エネルギーの面的利用を図る狙いだ。発電された電力は、敷地内の電力系統へ送電し、複数建物の電力として活用することで、排熱と同様に面的利用を行う。
SOFCは機体内部が高温となるため、効率を考えると連続運転での運用が最適な運転方式となる。しかし、こうした燃料電池を建物に適用する場合、エネルギー需給を最適にコントロールしながら、年間を通して生成される電力と熱を効率的に活用できるシステムを構築する必要がある。
そこで今回は技術センター敷地内の建物に導入されているBEMSを統合管理できるAEMSを導入する。これによりエリア内の複数建物群のエネルギーを一括で管理・分析。そしてエリア全体のエネルギー使用量が最小となる予測・最適制御を各建物のBEMSに指示する仕組みだ。AEMSは2017年度中に導入する予定だ。さらにさらに余剰電力は、敷地外の保養所、社員寮などの自社施設へ自己託送を行い、広域でのエネルギー利用を図る。
大成建設では今後、この取り組みで得られたデータと知見を活用することで、大型燃料電池の建築物への導入促進を図るとともに、エリア全体でのエネルギーマネジメントによる低炭素化技術の普及を推進していく計画だ。
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