京都・伏見に“京町屋のような”オフィスビル、耐火木造で実現:省エネビル
日本三大銘醸地の1つである京都・伏見に、耐火木造を活用したオフィスビルの建設が進行中だ。太陽光発電システム関連のソフトウエア開発を手掛けるラプラス・システムの自社オフィスビルで、国土交通省による1時間の耐火認定を取得。自家消費用の太陽光発電システムなども導入し、消費電力の削減も図る。
太陽光発電システム関連のソフトウエア開発を手掛けるラプラス・システム(京都市)は、事業拡大による人員増加に対応するため、本社敷地内に木造オフィスビルを建築する。2016年12月に竣工する新館は、同社によると民間企業の自社オフィスビルとしては京都では初めての木造4階建てで、太陽光発電設備や地中熱を利用した空調設備を導入し、環境に配慮した設計となっている。延床面積は784平方メートルで、主に研究開発の拠点として利用する予定だ。
木造オフィスビルは市街区が広がる京都市伏見区に建設。耐火木材の利用と国土交通省による1時間の耐火認定を取得した。設計・施工は同じく京都市伏見区で住宅を中心としたリノベーション事業などを手掛ける流体計画が担当している(図1)。
日本三大銘醸地の1つである京都・伏見の中心に建築される建物として、周辺地域への自然環境へも配慮した木構造体を使用し、「京町屋のような外観」をイメージしたオフィスビルになるという(図2)。設備設計では、地中熱を室温調整に利用することで、消費電力を削減することが可能だ。また、太陽光発電設備を設置し自家消費を行う他、太陽光発電の故障・発電予測の研究など、ラプラス・システムの事業にも生かしていく。
新館1階にはショールームを設置し、ラプラス・システムの製品に直接触れることができエリアを設ける他、ショールーム内には新館建築の際に発掘された埋蔵文化財の展示スペースも設置。一般の人でも事前に予約することで自由に見学可能なので、地域住民の学習の場としても利用する計画。また、同社製品や取り組みを紹介するだけではなく、地域の文化財を展示することで、取引先や地域住民などの多くのス テークホルダーとの関係強化を図っていく方針だ。
2012年に施工された固定価格買取制度による太陽光発電市場の拡大に伴い、太陽光発電の表示・監視システムの導入が増加。それら関連のソフトウエアを開発するラプラス・システムは人員を拡充して組織体制の強化を図ってきた。2014年には、本社機能を現本社に移し、旧本社を研究開発の拠点として運用してきたが、業務の効率化やさらなる人員拡充に対応するため、新たに木造オフィスビルを増築し、研究開発拠点を本社に集約することとした。
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