竹中工務店が8割の作業所にクラウド導入、工程表やCADデータを集約:BIM/CAD
竹中工務店は建設工事現場の作業所に設置したファイルサーバのクラウド化を開始した。工事現場や出先、本支店事業所など、場所を問わずに図面や工程表、CADデータなどにPCやタブレット端末からアクセスできるようにする。国内の全作業所の約8割に展開する予定だ。
竹中工務店は2016年11月18日、建設現場の作業所のファイルサーバ環境について、クラウドサービスへの切り替えを開始したと発表した。図面や工程表、CADデータなど各種資料活用の利便性向上やBCP(事業継続計画)の強化が狙い。新たに着工する作業所から順次利用を開始しており、国内の全作業所の約8割に展開する予定だ。
NTTコミュニケーションズ(以下、NTTCom)が提供するクラウドサービスを採用した。竹中工務店では、これまで大容量のCADデータなどを扱うにあたり、アクセス遅延による業務効率低下を避けるため、建設現場ごとにファイルサーバを設置していた。その結果、ハード障害などにより個別設置したファイルサーバが利用できなくなった際は、バックアップからのデータ復旧に時間が掛かっていた。
NTTComは新しいファイルサーバ環境として、クラウドサービス「Enterprise Cloud」、データセンターサービス「Nexcenter」、ネットワークサービス「Arcstar Universal One」「OCN」、WAN高速化ソリューションなどを組み合わせた竹中工務店向けのプライベートクラウド基盤を構築。2016年5月から運用を開始しており、NTTCOMはサービス全体の保守運用も担当する(図1)。
クラウド化により、全国各地の建設現場、竹中工務店の本店や支店、そして外出先などからも、図面・工程表・CADデータなどの各種資料を、PCやタブレット端末などから必要に応じてスムーズに閲覧・作業することが可能となった。クラウド化による懸念事項であった資料へのアクセス速度については、「業務に支障のないレベルを実現している」(竹中工務店)という。
ソフトウェア型のVPNを活用することで、さまざまな企業が協業する建設現場でも、ファイルのアクセス制限・管理などのセキュリティ対策を行えるようにした。NTTComによれば今回のプライベートクラウドは、今後の竹中工務店のグローバル展開および事業拡大においても柔軟・迅速に対応できる基盤になっているという。
竹中工務店では今後、建設現場でのクラウド型ファイルサーバへの適用実績を踏まえ、本店や支店で共有されている各種資料もクラウド化する考え。加えて、国内外のグループ会社へも順次展開し、グループ全体のICT基盤の強化を図る方針だ。
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