遠隔操作でもショベルの手応えを伝達、次世代建設ロボットを開発:情報化施工(2/2 ページ)
東北大学、大阪大学などの研究グループは新しい建設ロボットの実験機を開発した。遠隔操作でもショベルの感覚をオペレーターに伝える技術や、ドローンを活用した俯瞰映像のリアルタイム生成など、さまざまな新技術を導入している。
最終形態は双腕ロボ
遠隔操作でも作業精度を高められるよう、油圧ショベルのシステムにも改良を加えている。従来の建設機械に比べて、約10倍の応答速度と精度を有する油圧コンポーネントを用いた新しい油圧システムを構築した。さらに位置や速度の目標値制御と同時に、シリンダに加わる圧力を適正に高速で制御する制御手法も開発し、大きなオーバーシュートや発振を生じずに、高応答かつ安定に大慣性の作業機をコントロールできるようにした。
土砂崩れや建物の倒壊などの災害対応作業で利用される建設機械。中でも油圧ショベルは、クローラーを用いた走行機構がもたらす走破性と、多関節の作業機が可能とする作業性の高さから、利用される頻度は高い。しかし油圧ショベルは、大きな力で地面を掘削する機械のため、繊細な力のコントロールや微細な作業は得意としていないため、被災現場の状況によっては現場への投入が困難な場合ある。また、その構造から自在な運動特性を実現することが難しい。
災害対応では、オペレーターにも危険が及ぶ状況が予想されるため、安全に作業を行えるよう、建設機械向けの遠隔操作装置も登場している。しかしその多くは遠距離から直視しながらの遠隔操作を行うタイプだ。また、画像伝送を用いた長距離の遠隔操作システムも開発されているが、作業性を高めるためには油圧ショベルの周囲に複数のカメラ車を配置する必要があることや、作業効率が低下するといった課題がある。
研究グループは、これらの課題の解決に向けて、今回発表した次世代の建設ロボットの開発に取り組んだ。開発した実験機を用い、災害現場を模擬した評価試験フィールドで実証試験を行ったところ、一定の性能を確認できたという。今回性能を確認した要素技術以外にも、複数の有用な要素技術の開発を行っており、今後、順次それらの要素技術の評価を進める方針だ。また、より高い作業性、対地適応性の実現を目的として、重旋回機構と複腕を有する新しいロボットの開発も進めている。将来は現在の開発を進めている要素技術と新型ロボットを統合していく考えだ(図4)。
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