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「繋がりの時代」における建設プロセスBIMで変わる建設業の未来(2)(3/3 ページ)

BIMを筆頭に、建設業界に関連する最新技術の活用状況の現在と、今後の展望について解説していく本連載。第2回では改めてBIMの定義と、その活用に至るまでの歴史を振り返る。

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国やオーナー主導によるBIMへの取り組みも不可欠

 全体最適を行うという観点では、さまざまなステークホルダーがBIMのエコシステムを主導する必要があるという点も覚えておきたい。海外においては、政府・行政機関が、どのようにBIMを活用するべきか議論を深めている。建物や土木プロジェクトにおけるオーナーは、BIMスタンダードを導入するようになっている。また、エンジニアリング会社はBIMの導入計画を構築し、BIMにおける主導力を市場における競争力として広めているのだ。つまり、BIMスタンダードの構築が、以下のような異なるレベルで進められていると言える。

  • 戦略として、プロセスを標準化するためのガイドライン(国家、自治体)
  • プロジェクトにおける、BIMのモデリングガイドや実行計画書(オーナー)
  • 実践的な、BIMのテクニカルスタンダード(設計事務所や施工会社)

 こうしたレベル感が明確になっていないと、戦略的なビジョンと技術的なタスクが混在してしまい、その取り組みが曖昧になってしまう。その結果、BIMの導入および推進の予測や計測が困難になるという弊害が生じる。

 EU圏の28の国においては、2016年までに公共の建築および建設プロジェクトにおいてBIMを推奨、指定あるいは義務化が実施される予定だ。特に英国では、BIMの導入を「オブジェクトCADの導入」「BIMによるコラボレーション」「BIMデータのインテグレーション」の3つのレベルに分けることで、その進捗を明確に測っている。アメリカや中東では、政府機関、商業ビル、学校、病院などのオーナー主体でプロジェクトでのBIM利用を指定するようになっている。例えば、米国のペンシルバニア州立大学の構築したBIMガイドラインは、多くの建設およびFMプロジェクトのベースとなっている。また、アジア圏でも、シンガポールを始め、韓国、中国、そして日本もBIMの導入に積極的に取り組んでいる。

※「BIM Project Execution Planning Guide,2010」および「BIM Planning Guide for Facility Owners,2013」


国家レベルおよびオーナー主導によるBIMの取り組み 出典:オートデスク

 このようにBIMを俯瞰して見てみることで、さまざまなものが見えてくる。CADからBIMへとツールを置き換えるだけではなく、従来のプロセスを理解し必要な変革を行う必要がある。業務の垣根を越えて、BIMデータを中心とした「モデルファースト」のコミュニケーションを行い、必要な環境を整えていくことが重要だ。

 また、1つの企業としてBIMを捉えるだけでなく、設計の効率化、監理の省力化、製造との連携、施工の生産性向上など、個々の推進力をとりまとめて業界全体として取り組まなくてはならない課題も多くある。それには日本ではどのように建築における人材の育成、建設における技術の向上をするべきなのか。ICT導入の国策の一環としてBIMを考えることも目指すべきだろう。おそらくそれが次の日本の建築、建設業におけるBIM導入の道筋を示すものになるのではないだろうか。

著者プロフィール

濱地和雄(はまじ かずお)オートデスク株式会社 WWSS AECセールスディベロップメントエグゼクティブ

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オートデスクジャパンのAECセールスディベロップメントエグゼクティブ (SDE) である濱地和雄は、建築業界に対する長期的なビジョンを作り上げ、インダストリーリーダーを探訪することでBIMマンデートをドライブ。設計事務所や建設会社、教育研究機関、業界団体など幅広いソースから得た、充実したテクニカル、ビジネス、事業アイディアを促進することで高い評価を得ています。濱地はニューヨーク大学で建築学および都市設計の学士号を得ており、SDEの責務にないときは映画を鑑賞し、東京都内で家族と過ごしています。


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