酷暑地点とその原因を特定、環境改善に役立つ移動式計測システム:省エネビル
清水建設は移動式の「温熱・風環境計測システム」を開発した。自動車で走行しながら詳細な環境計測が行えるシステムで、特定エリアの酷暑状態を緩和するための改善策の立案などに役立てる。
ヒートアイランド現象などの影響で、都市部における夏季の屋外温熱環境の過酷さが増している。清水建設はこうした酷暑の緩和策が必要な地点と、具体的な緩和策の提案に活用できる移動式の環境計測システムを開発し、実用化した。
都市部の温熱環境と風環境はその場所の周囲の建造物などに大きく左右される。同社がお台場・有明地区で行ったエリア計測の結果では、8平方キロメートルの地域内でも、気温分布に3度の差があったという。開発したシステムは、エリアの温熱環境を計測する「エリア計測車」と、局地の温熱や風環境を計測する「スポット計測車」の2つで構成し、温熱環境を詳細に計測できるようにした(図1)。
清水建設は同システムの実用化の第1弾として、8月中旬の4日間、東京大学工学部都市計画学科の横張真教授と共同で、夏季に都心で計画されているマラソンコースの温熱環境を計測した。計測結果をもとにマラソン競技者や観客が受ける熱的影響を把握し、必要な酷暑緩和策などの提案を行う狙いだ。
具体的にはエリア計測車で対象地域を時速20〜40キロメートルで走行しながら、温湿度、路面温度、日射量を連続的に計測した。取得したデータはGPSの位置情報とリンクさせながらデータロガーに蓄積し、3G回線を介して送信して「Google Earth」にリアルタイムに表示できるようにした。
次にエリア計測データの中から、温熱環境が過酷な地点を特定し、スポット計測車で特定地点の温熱や風環境を集中的に計測した。小型計測車は電動車椅子をベースとしており、温湿度、風向風速、上下・左右・前後の長短波放射量を計測する装置を搭載している。搭載している長短波放射量計測では、日射や道路面や建造物の壁面などからの輻射熱影響を計測できる(図2)。
清水建設と東京大学ではこのスポット計測データをベースに、マラソン大会の主催者などに酷暑緩和策の提案を行っていく方針だ。例えば、温熱環境を悪化させている原因が風通しの悪さであれば、風の道の確保、上からの日射なら日除けなどの上空対策、道路からの輻射熱の場合は遮熱舗装施工、建物壁面からの輻射熱であれば壁面緑化といったように、最適な改善対策を立案できるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- BIMデータと環境情報を同時に見える化、タブレットやスマホからも
建築物の企画や設計段階で、事前に環境性能をシミュレーションする事例が増えている。大成建設はこうした流れを受け、同社が開発したBIMデータを確認・操作できる「T-BIMビューア」に、風や熱などの環境シミュレーションで得られた結果を可視化できる機能を追加した。 - 暑い夏に「霧」はどれほど効果があるのか、東京都の新橋駅で実証開始
パナソニックと東京都港区は、気化熱を用いて、オープンスペースの暑さをやわらげ、環境に優しい「グリーンエアコン」の実証実験を、東京都港区の新橋駅前で実施する。 - 風の力を自然に受け流して省エネ化する窓、中小ビル向けにも対応
アルミ建材メーカーのYKK APは、風の強さに合わせて障子が自然に稼働し、効率よく自然喚起が行える換気窓シリーズに、中小規模物件向けの製品を発売した。 - エコビルもっと省エネにするZEB化技術、エネルギー消費を50%削減
ゼネコン各社が自社ビルの「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」化を図る動きが進んでいる。大成建設は札幌市の「大成札幌ビル」をリニューアルし、一次エネルギー消費量を50%以上削減する「ZEB Ready」を達成した。新技術を自社ビルに新技術を導入してノウハウを蓄積し、ZEB市場の開拓を強化していく方針だ。