現場の心と体の疲労を「見える化」、労働災害を未然防止:情報化施工
建設作業現場における作業員の健康管理の重要性が高まっている。しかし、こうした健康管理は朝の朝礼や自己申告で確認を行うのが一般的で、客観的な評価を行いにくい。こうした課題に向けて、安藤ハザマとTAOS研究所は建設作業員の生態データなどから身体的・精神的疲労をリアルタイムに評価できるシステム「バイタルアイ」を開発した。労働災害の未然防止に役立てる。
安藤ハザマは2016年6月、ウェアラブルセンサーを活用して建設作業員の身体的・精神的疲労をリアルタイムに評価できるシステム「バイタルアイ(Vital Eye)」を開発したと発表した。バイタルデータの解析技術を持つTAOS研究所と共同開発したもので、建設作業現場における熱中症の予防や、労働災害の防止に役立てる狙いだ。
建設現場では作業員の高齢化や生活習慣病の増加、メンタル不調による離職者の増加などを背景に、作業員の健康状態を適切に管理する重要性が高まっている。しかし、こうした管理は現場での朝礼時の問いかけや建設作業員本人の自己申告によるチェックが一般的だった。今回開発したバイタルアイは、建設作業員の身体的・精神的疲労を「見える化」して、こうした健康管理を客観的なデータにもとづいて行えるようにしたものである(図1)。
バイタルアイはヘッドバンド型のウェアラブルセンサーを用いて、建設作業員の脈波と体温をリアルタイムに測定する。さらにヘルメットに装着した計測デバイスを使い、環境温度・湿度を測定して暑さ指数を算出する。これによりそれぞれの建設作業員の作業環境も把握する。こうした複数の測定データを通信機器を介してクラウドサーバ上に転送し、専用プログラムを用いて解析することで身体的・精神的疲労の定量的な評価を行う仕組みだ。TAOS研究所の解析技術では、脈波の変動から自律神経バランスの乱れなども分析できるという。
各作業員の疲労の評価結果は、管理モニターで現場管理者が確認できる。身体的・精神的疲労に変調が確認された場合には、現場管理者や建設作業員本人にリアルタイムで警告を発信する機能も備える。心身の変調が自覚症状に表れない段階で、現場管理者や建設作業員本人に警告することで、労働災害を防ぐ。
安藤ハザマは2015年度に土木・建築の複数現場にバイタルアイを実証導入した。熱中症の予兆や疲労蓄積の評価を行い、システムの有効性を確認できたという。今後は同システムのさらなる現場運用を通じて評価手法の高度化を図り、熱中症の予兆や疲労蓄積の評価精度を向上させていく方針だ。
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