拡張現実を「仕上げ」に活用、コンクリートの表面品質を改善:情報化施工
三井住友建設は打設後のコンクリート表面の仕上げ作業を効率化する技術を開発した。ステレオ写真計測技術とAR(拡張現実)技術を活用し、仕上げ作業を行いながら仕上げ面の凹凸状態を簡単に確認できるようにした。土木・建築分野におけるさまざまな構造物に適用できるという。
三井住友建設は2016年5月、ステレオ写真計測技術とAR(Augmented Reality=拡張現実)技術を用いて、床版コンクリート表面の形状管理を行う「AR-表面仕上げ管理システム」(以下、ARシステム)を開発し、実用化したと発表した。
一般にコンクリート打設後の表面仕上げは人手で行うが、床版コンクリートのように広い範囲を平たんな面に仕上げるのは熟練を要し、仕上げ具合が悪いときはコンクリートの研削や調整が必要になるなど、仕上げの平たん性の確保が課題になっている。そこで同社はコンクリート表面の均し(ならし)作業時に、仕上げた表面の状態を写真計測により可視化し、その場で作業員への仕上げの修正指示、仕上げ状態の再確認を行うことで、仕上げ面の平たん性を大幅に向上させるシステムの開発を目指した。
ARシステムは、床版コンクリート打設後の表面仕上げ作業時に、写真測量により仕上げ面全体の3次元形状を数値化し、計画高さとの誤差をコンター図(等値線図)により出力する「ステレオ写真計測技術」と、出力したコンター図をタブレット端末の画面上に現場の映像に重ね合わせて表示させ可視化するAR技術を組み合わせたシステムとなっている。仕上げ作業を行いながら、仕上げ面の凹凸状態を容易かつ瞬時に確認でき、計測と仕上げ作業を繰り返すことにより、ふぞろいの小さい平たんな仕上げ面を構築することが可能となる。
デジタル一眼レフカメラ2台を用いたステレオ撮影による高さ方向の計測誤差は、最大でも1〜2ミリメートル以内であり、高精度な写真測量が可能であるという。数値化された仕上げ面の3次元形状も同様の高精度を保てる。また、写真測量によって得られたデータを専用プログラムで解析して仕上げ面の3次元形状を数値化し、計画高さとの誤差をコンター図で出力することができる。さらに、出力した表面仕上げのコンター図をタブレット端末の画面上に、現場の映像に重ね合わせて表示させ可視化し、修正箇所の指示を的確に行えるようにしている(図1)。
この他、タブレット端末の小型カメラで対象物をどの方向から映しても、フレームマーカーの映り方によりカメラと対象物との位置関係を認識できるため、コンター図がコンクリート面に重なるように描画できる。そのためタブレットを持って移動しながら作業員に指示することが可能だ。解析処理を含めた1回の計測時間は3分程度で完了する。その場で仕上げ状態を確認し、修正の指示も迅速に行えるため、より平滑な表面の構築につながる。
このARシステムは橋梁工事の床版コンクリートに限らず、土木・建築分野におけるさまざまな構造物への適用できるという。三井住友建設では同システムを多くの現場に適用拡大を図るとともに、ステレオ撮影方法の省力化や計測処理の高速化などのシステム改良に取り組み、更なる高品質化と高効率化を目指して活用していく方針だ。
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