電力と水を自立供給、都心の防災拠点を担う新型ビル:スマートシティ(2/2 ページ)
東京都千代田区大手町に完成した地上31階建ビル「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」。災害時には電力と水を自立供給できるシステムを導入し、1000人の帰宅困難者を収容できるなど、都心の防災拠点としての機能も備えている。
敷地内に井戸、環境性能もSランク級
災害時に飲用水を確保できるよう敷地内に井戸を採掘し、くみ上げた井水をろ過できる設備も備えた。都市浄化設備によりトイレ洗浄水などのビル内の汚水は浄化処理して日本橋川へ放流する。これらより災害時にもトイレが使用できるようになっている(図2)。
この他、大手町地区のエネルギーインフラを手掛ける熱供給事業会社の丸の内熱供給が、地域冷暖房システム用のサブプラントを建物内に設置している。地域冷暖房とは一定地域内の多数の建物に対し、熱製造プラントから導管を通して冷水や蒸気を供給して冷暖房・給湯などを行うシステムで、同社が大手町地区内で展開している。災害時には非常用電力をサブプラントに供給することで、専用部内の冷暖房機能を維持できる。
「エリア防災ビル」としては、建物単体の高い安全性や事業継続性を確保し、さらに帰宅困難者の支援や隣接する「大手町フィナンシャルシティ サウスタワー」の国際医療サービス施設との連携による災害救護機能の確保など、より広範囲の防災性向上、地域貢献の役割を担う。帰宅困難者が出た場合、グランキューブ1階オフィスロビーや宿泊施設棟のラウンジなど、建物内部の共用スペースを約1000人を収納できる一時滞在施設として開放する。この他、食料・資機材の備蓄の強化や災害・交通情報の提供など帰宅困難者を支援するための多様な機能を整えている。
また、熱負荷低減に配慮した外装計画、自然換気システム、太陽光発電、BEMSなどの各種省エネシステムを採用しており、建築物の環境性能ではCASBEE評価で「Sランク」相当を確保している。
なお、グランキューブの地下1階、1階の全16店舗からなる商業ゾーンは2016年5月9日からオープンしている。日本旅館の「星のや東京」は同年7月20日に開業する予定だ。
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