進むインフラ老朽化、“達人頼み”を補う技術が続々登場:法制度・規制(3/3 ページ)
日本の道路や橋梁、トンネルなど、インフラの老朽化が加速している。いまだに多くを人手によって点検・整備・補修しているこの領域だが、労働人口減少により現在の手法では対応が難しくなり、先進技術の活用に注目が集まっている。2015年7月22〜24日に東京ビッグサイトで開催された「インフラ検査・維持管理展」での出展内容を紹介する。
自動車による道路設備計測設備を提供する三菱電機
三菱電機では、既に国内で多くの実績を抱える道路や鉄道などの移動計測システム「三菱インフラモニタリングシステム」を紹介した。同システムは自動車の屋根に設置し、カメラやGPS、レーザー測定器などを組み合わせた複合計測システム。高精度の3次元計測と各種センシング技術により、社会インフラ点検や設備計測の自動化、省力化が可能だとしている。計測自動車により道路の計測が行える他、同自動車をそのまま鉄道用計測車両に搭載することでそのまま鉄道用としても利用できるという(図9)。
三菱電機 社会システム第二部 技術政策課の課長小林弘幸氏は「点検義務化の動きなどから引き合いは高まっている。既に国内では多くの導入実績を持つ他、機器のカスタマイズなども可能であることから用途に応じた導入が可能。アプリケーションも豊富に用意しており、さまざまなニーズに応えられる点が強みだ」と述べている。
音と工夫で効率化を図るネクスコ東日本エンジニアリング
ネクスコ東日本エンジニアリングは既に、高速道路整備などでネクスコ東日本向けなどで導入実績のあるさまざまな検査や維持関連技術やソリューションを提案した。一台で道路の路面形状とトンネルの覆工調査を行うことが可能な「道路性状測定車」などの紹介を行った他、回転式の打音検査器具とショットガンマイクを組み合わせた「回転式打音診断支援システム」などを紹介した(図10、図11)。
ネクスコ東日本エンジニアリング 土木部 調査役の小野義道氏は「点検や調査の作業負担の軽減に加え、データ化して蓄積する作業を用意にすることも求められている」と語っている。
土中の管調査を容易にすることを目指すアイレック技建
電磁波により土中の水道管などの配管状況の把握を実現する技術を出展していたのがアイレック技建だ。電磁波による非破壊検査技術を生かした「エスパー」シリーズを出展。配管位置などの把握ができない場合などに使用することを想定している。道路で押して使用するタイプの他、GPSと一体化し自動車でけん引し簡単に土中情報を入手するものなどさまざまなシリーズを用意している(図12、図13)。
製品化については現在は未定だが「ハードウェアの技術的にはほぼ完成している。ただ現状では、調査結果で配管がどこにあるのか、という読み取りに習熟が必要な状況なので、これらをソフトウェア面で簡略化したり、表示を工夫することにより、誰でも理解できるようにする、という方向でさらに進化させる必要がある」とアイレック技建 東日本営業本部 第二事業部 課長代理の野中聡氏は語っていた。
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