グーグルやダッソーがスマートシティーに参入、街を丸ごと仮想化する時代に:スマートシティー(2/2 ページ)
“街丸ごと”を仮想空間上で再現し、コンピュータの力で最適な分析を行い、制御を行う「スマートシティー」への取り組みが本格化しつつある。米グーグルが新たに新会社設立を発表した他、フランスのダッソーシステムズもシンガポールで共同開発を始めることを発表した。
シンガポールを丸ごとバーチャル化するダッソー
3D設計ソフトウェアなどの大手企業であるフランスのダッソー・システムズは2015年6月16日、シンガポール国立研究財団(National Research Foundation、以下NRF)と「バーチャル・シンガポール」を共同開発することを発表した。
「バーチャル・シンガポール」は、同社の得意とする3Dモデリングの形状データとともにそれらに付随する、静的データや動的データ、各種情報などを表示できるようにしたもの。リッチなデータ環境と各種ビジュアライゼーション技術を組み合わせた、コラボレーションのためのプラットフォームとして活用する。
このプラットフォーム上で、シンガポールの国民、企業、政府、研究コミュニティーが、シンガポールが直面しつつある複雑な課題に対処するために、ツールやサービスを開発できる。既に2014年12月から開発を開始しており、2018年に完成予定だとしている。
同プラットフォームはダッソー・システムズの「3DEXPERIENCity」を活用して構築する。プラットフォームを構成する画像やデータはさまざまな公的機関から集められており、そこには地理空間、地形(トポロジ)、人口動態、移動、気候に関する過去および現在のデータも含まれる。
バーチャル・シンガポールのユーザーは、例えば、シンガポールのリッチなビジュアルモデルを使い、大規模シミュレーションを行える。都市化の影響をデジタル上で包括的に検証でき、物流やガバナンス、環境保護や防災、インフラ、防衛、コミュニティーサービスといった、都市に関わる各種のオペレーションを最適化するソリューションの開発にも役立つ(図2)。
既に要素技術は出そろいつつある
これらの街そのものをバーチャル化する取り組みは、まだ検証段階にあるものが多く、全ての都市ですぐに進むわけではない。しかし、既にIoTによるセンシング技術と通信技術、データの蓄積技術や分析技術、制御技術など、要素技術は出そろっており、現実世界で発生したことを、リアルタイムに近い形で仮想空間上で再現し、分析を加えることは可能になりつつある。
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