「明るい」と感じる感覚を利用、制御技術で照明電力を6割削減:省エネ機器(2/2 ページ)
オフィスビルの消費電力の3分の1を占める照明設備。大林組はこうした照明機器による電力消費を大きく削減できる照明制御システムの開発を進めている。制御に「人が感じる明るさ感」を利用しているのがポイントで、照明機器の日中の消費電力を約60%削減できるという。
タスク・アンビエント方式より消費電力を30%削減
オフィスの照明設備の消費電力を削減する方法は複数ある。LED照明に切り替えたり、照明そのものの数を減らしたりといった物理的な方法を除いた場合、照度センサーを使うものや、オフィスの照明全体の明るさを下げて必要な分の照度をデスク上のタスクライトで補う「タスク・アンビエント方式」などが挙げられる(図4)。
説明を行った大林組 設計本部 設備設計部 副部長の小島義包氏は「タスク・アンビエント方式の場合、デスク上は明るくなるが、オフィス全体の明るさは暗くなってしまうため普及が進まないという背景があった。しかし今回、大林組が開発したシステムでは、自然光を積極的に活用してさらに人が感じる明るさ感を基準に制御を行うため、オフィス全体の快適性を保ったまま消費電力の削減が行える。日中の電力消費を全般照明と比較して60%、タスク・アンビエント方式より30%の削減できる」と述べる。
見学会が行われた神田風源ビルは、大林組が施工を行い2015年3月に完成したオフィスビル。開発されたシステムは2〜3階のフロアに導入されており、既に昭和電機の東京支店がここで業務を行っている(図5・6)。同システムが導入されたのは大林組の研究施設に次いで2つ目となるが、ブラインドの制御システムが追加されたのは今回が初。システムを運用し始めてまだ数カ月だが「晴天日の日中の消費電力を63%削減できることを確認している」(小島氏)という。
神田風源ビルに導入した制御システムでは、無線通信を通して昭和電機の社員が利用するデスクのタスクライトの使用状況に関するデータも取得している。今後はこのデータを活用して、2015年度内をめどに室内照明およびブラインドの制御に加え、タスクライトの統合制御も含んだシステムの開発を目指すという。
同システムの実用化について小嶋氏は「既にこのまま販売することも可能で、実際に導入したいという要望も複数ある。しかし大きく普及させるには、導入コストをさらに下げる必要があると考えており、今後はシステムのパッケージ化などの取り組みも進めていく」としている。
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