消費エネルギーがゼロのビルを実現、壁面に付く2.9kgの軽量太陽電池:自然エネルギー
再生可能エネルギーと省エネ技術を組み合わせた消費エネルギーゼロのビル。ただし、屋上設置の太陽電池だけでは電力が足りないという試算がある。壁面設置の太陽電池に関する取り組みが始まった。
エネルギーを実質上消費しないビル「ZEB」(Zero Energy Building)は実現可能だ。省エネと再生可能エネルギーを組み合わせればよい。LED照明や、人ごとに空調温度を変えるタスクアンビエント空調、外気冷房の導入の他、太陽熱利用、地下熱ヒートポンブ、蓄熱システム、蓄電地、太陽光発電システムなどの技術を活用することが鍵だ。
ZEBの実現時期も見えている。例えば米国では2030年以降に建設される全ての業務用ビルをZEBにしようとしている。国土交通省の試算結果によれば、技術水準の向上を折り込むと、2030年には国内の中低層のオフィスビルのZEB化が可能だという(図1)。これは2010年時点の予測だ。
先ほど挙げた技術の中で、ビルに不可欠な電力を創り出しているのが太陽光発電システムだ。三井住友建設の試算によれば、ZEBの実現は発電が握っているものの、屋上設置型の太陽光発電システムだけでは困難だという。どうすればよいのだろうか。
ビル外壁面の利用だ。十分軽量な太陽電池があればよい。さらに太陽電池の曲面加工が容易になれば、建材一体型太陽光発電システムが実現するという。
ビルのデザインも必要
ビルは単なる四角い箱ではない。街並みを織りなすビルをZEBに変え、普及させるためには、軽量な外壁設置型の太陽電池を使ったビルの外装デザイン(ファサードデザイン)が必要だ。
そこで、三井住友建設は2012年夏に社内コンペを実施、10チームが提出したデザインの中から、最も優れたものを選び出した。完成したデザインは2種類のフレキシブル太陽電池モジュールと、1種類の壁面緑化モジュールを組み合わせたものだ。それぞれ「straight」「air」「green」と呼ぶ(図2)。それぞれのモジュールの配置を換えることでデザインに広がりが生まれるという。
このファサードデザインに基づき、2013年1月に同社の技術開発センター(千葉県流山市)の外壁面に実際のモジュールを設置する工事を開始、完成した(図3)。デザインを適用した外壁の面積は約60m2(5m×12m)だ。太陽電池モジュールはstraightタイプを14枚、airタイプを11枚用い、総出力は1.73kWである。
太陽電池モジュールには、フィルム型のアモルファスシリコン太陽電池(594mm×2652mm、出力69W)を用いた。このモジュールは既築のビルに適用できることが特徴だ。「太陽電池モジュールの重量は2.9kgと軽いため、既存の外装材の上に付けても問題がないことを確認できた」(三井住友建設)。
今後、2013年度中に、外壁面を3面に増やした場合のデザインの検討を開始する。曲面加工が可能な建材一体型太陽光発電を目指して、今後は有機薄膜太陽電池や色素増感型太陽電池の他、より軽量な結晶シリコン太陽電池などの適用性を検討する。その上で試験施工に進むとした。その他、太陽熱を取り込むパッシブソーラー技術と組み合わせることも検討するという。
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