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消費電力量の目標値を超えないように、多様な手法で空調機器を自動制御BEMS製品解説(4)

BEMSアグリゲータ幹事企業が提供するシステムの機能を解説する特集の第4回。今回はダイキン工業が提供するシステム「エアネットi」シリーズの中でも標準的な機能を備える「エアネットi スタンダードモデル」について解説する。空調機器を細かく自動制御することで消費電力量を抑え込むシステムだ。

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Specification
図1 ダイキン工業が提供するBEMS「エアネットi スタンダードモデル」の主な仕様。補助率は1/2固定となる

 空調機器メーカーであるダイキン工業が提供するBEMS「エアネットi スタンダードモデル」は、快適な環境を可能な限り維持しながら、ユーザーが設定した消費電力値を超えないように空調機器を細かく制御する。空調機器メーカーらしいBEMSと言える。初期導入費用は400万円〜。毎月のサービス利用費は1万6000円〜。

 同社は、操作対象の空調機器として、同社製のマルチエアコンを推奨している。マルチエアコンとは、複数の室内機と1台の室外機をセットにしたもの。複数の室内機が必要とする室外機の機能を1台の室外機でこなしてしまうものだ。

 仕様を見ると契約電力が200〜500kWと、BEMSアグリゲータ制度が対象としているビルの中では中規模〜大規模なビルを対象としている(図1)。対象とする施設として同社はオフィス、学校、娯楽施設などを挙げている。自動制御で節電を目指すというシステムの性格を考えると、来客が多い施設に向くとも言える。

 エアネットi スタンダードモデルは、施設全体の消費電力量と空調機器の消費電力量を監視し、そのデータをダイキン工業が管理するデータセンターに蓄積する。消費電力量のデータは、リアルタイムで確認できる。確認するには他社のBEMSと同様に、データセンターにWebブラウザでアクセスすれば良い。Webブラウザの画面から空調機器を操作する機能も提供している。

 このシステムの特長としては、空調機器を細かく制御することで、なるべく空調機器を止めずに消費電力量を抑えるという点が挙げられる。ユーザーが決めた消費電力量の目標値(デマンド値)を実際の消費電力量が決して上回らないように、空調機器を制御する。具体的には室外機の能力を抑制したり、室内機の設定温度を変更したり、室内機の運転台数を制限したり、冷暖房運転から送風運転に切り替えるなど、多様な手法で空調機器を制御する(図2)。

Control
図2 エアネットi スタンダードモデルの空調機器制御手法、室外機の運転率を100%から70%、40%、0%と下げていくほか、室内機の設定温度を1度単位で変更したり、冷房/暖房運転を止めて送風運転に切り替えるといった手法を使う。図中の「サーモOFF」という表記は冷房/暖房運転を止めて送風運転に切り替えることを意味する

 空調機器を制御する際には、気象情報も参考にする。日本気象協会が提供する全国およそ850カ所の気象予測データをデータセンターで受信し、全国に設置したBEMSに適切な制御方法を指示する。

 電力会社の供給量に対する需要が逼迫したときは、データセンター側からBEMSを制御し、目標値を引き下げる。通常時よりも空調機器の設定温度が上がったり、送風運転になる場所が増えるが、自動制御で可能な限り快適な環境を維持しようとするので、節電のために手動で機器を操作することを面倒に感じるユーザーに向いている。

 以上のように、エアネットi スタンダードモデルは自動制御で快適な環境をなるべく維持しながら消費電力量を目標値以下に抑えるシステムだが、ダイキン工業は運用改善で消費電力量をさらに下げることも狙っている。

 同社はデータセンターに蓄積したデータを分析し、その結果をユーザーに報告する機会を年2回作っている。その席では、前年実績と当該年実績の比較データを提示し、どのような点を改善できたかを説明する。その上で、さらに目標値を下げるために見直す必要があるポイントを挙げる。

 エアネットi スタンダードモデルの場合、ユーザーへの補助金は機器にかかる費用の1/2と決まる(工事にかかる費用の補助率は1/3)。他社のシステムでは、条件次第で補助率が1/2になったり1/3になったりすることがあるが、このシステムでは補助率は固定だ。

 同社はエアネットi シリーズとして、スタンダードモデルのほかに上位モデルの「D-BIPSモデル」や、下位モデルの「エントリーモデル」を用意している(図3)。備えている機能はほぼ共通しているが、D-BIPSモデルは空調機器の制御に限らず、施錠管理などビルの機能全体を制御する機能を提供する。

Airnet i Series
図3 エアネットi シリーズには、機能が異なる3種類のシステムが存在する

 エントリーモデルは、スタンダードモデルから電力消費量のデータをリアルタイムで確認する機能を省いたものだ。消費電力量のデータは、前日以前のものしか確認できない。同社の場合、消費電力量データの扱いによって補助金の率が変わる。リアルタイムでデータを確認できるスタンダードモデルは1/2。前日以前のデータしか確認できないエントリーモデルは1/3。

 D-BIPSモデルの場合は、リアルタイムで確認できるようにするかどうかを選べる。リアルタイムで確認できるようにすれば補助率は1/2となり、前日以前のデータで済ませることにすれば補助率は1/3となる。

 また、同社はより小規模なビルや店舗に向けたシステムとして、「DAIKIN D-irect」を用意している。

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