「見える化」の徹底で節電意識向上を狙う:BEMS製品解説(1)
BEMSアグリゲータ幹事会社が提供するシステムの特長を解説していく特集の第1回。日本テクノが提供するシステムについて解説していく。同社は機器の完全自動制御よりも、消費電力量の見える化で一人一人の節電意識を高めることに重点を置いている。
日本テクノが提供するBEMS「ES-DEMACONAP」は、契約電力が50〜500kWと広い範囲を対象としている。50〜500kWという数字は、BEMSアグリゲータ制度が対象とするビルの契約電力の範囲をそのまま表したものだ(図1)。
対象となるビルもさまざまで、オフィスビルだけでなく、店舗、病院など多様なビルで使える。よほど特別な用途のビルでない限り、このシステムを導入できないということはないだろう。ES-DEMACONAPの特長としては、まずこの点が挙げられる。
もう一つの特長は、常時節電を目指すシステムであり、ピーク時に限って消費電力量削減を図るシステムではないという点だ。ES-DEMACONAPでは、消費電力量の目標値(30分単位)を事前に設定し、目標値と実際の消費電力量の差を見える化システムで表示する。
見える化システムには、一人一人の節電意識を高めるための工夫を加えてある。事前に設定した消費電力量の目標値に近づくにつれて、見える化の表示機器の表示が大きく変わる。
例えば、このシステムを構成する機器の1つとして「SMARTMETER ERIA」という、壁面に設置する表示板がある。SMARTMETER ERIAはキャラクターの顔を表示しており、消費電力量が目標値に近づいていくとキャラクターの表示が変わり、背景色も変わる(図2)。
もう1つ、目標値に対する消費電力量を意識してもらうための機器として、SMART CLOCKという機器も用意している(図3)。これは、30分単位で設定した目標値と、時間の経過を同時に意識させるものだ。SMART CLOCKを見れば、時計の長針の動きに対して、消費電力量がどうなっているのかが嫌でも目に入る。こうなると、一人一人が消費電力量を気にするようになり、目標値を超えないようにどのように節電すべきかを考え始めるという。
消費電力量の計測はビル全体と空調機器が対象。ビル全体の消費電力量は電力会社からの電力を受けているキュービクル(高圧受電設備)で計測し、空調機器の消費電力は分電盤の回路で計測する。
計測データは日本テクノが運営するデータセンターに送信する。データセンターでは、データを蓄積、分析し、先に説明した見える化システムに表示するデータを生成する。先に、SMARTMETER ERIAとSMART CLOCKという見える化専用機器を紹介したが、パソコンなどの機器が備えるWebブラウザからデータセンターにアクセスすることで、消費電力量の推移などを見ることができる(図4)。消費電力量の目標値の設定もWebブラウザから変更できる。
消費電力量が目標値に近づくと、5分間だけ空調機器を止めるという機能も備えている。室外機に取り付けた「DEMACONAP」という機器が空調機器を制御する。空調を短時間でも止めることで、一人一人に節電を強く意識させる効果を狙っているのだ。電力が足りないという状況を体感してもらうことで、それを避けようと節電に積極的に取り組むようになることを狙っている。
ただし、同社は消費電力量に応じて停止させる空調機器はビル内の空調機器の一部にすることを推奨している。具体的には、室外機1台で制御できる範囲にするのがよいそうだ。ビル全体の空調機器が一斉に停止した後、同じタイミングで動き始めると、短時間ではあるが、大きな電力を消費し、最悪の場合停電を引き起こす可能性があるからだという。
また、節電を意識してもらうためにビル全体の空調機器を停止させる必要はないともしている。消費電力量が目標に近づいた時、ビルの一部だけでも空調が止まれば、そこで働く人が中心になって、節電を呼びかけるようになるという効果が期待できるという。
需要逼迫時の制御手法はメールによる警告のみ。警告を受け取った人が消費電力量を減らす方法を考え、行動することが大切だという考えから、需要逼迫時に機器を自動制御することは避けている。
同社によると、見える化の機能だけを導入したビルの実績を見ると平均で消費電力量が10%以上下がっているという。震災後に限れば、その値は12%になるそうだ。今回、BEMSアグリゲータとして提供するES-DEMACONAPには、空調機器を制御する機能も加わったので導入したビルにおける消費電力量はさらに下がると見ている。
この値を達成するために、同社では契約時などの場面でユーザーとよく話し合うようにしているという。例えば、導入前には効果的な節電法をアドバイスし、「10%は下げましょう」と約束を交わす。導入後は、電力の利用状況をまとめた文書を携えて、担当者が顧客を訪問し、現状を説明し、今後の改善策をアドバイスするという。
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