眠れる足場を利活用!専用フリマサービスで安心納得の中古取引 在庫管理のサービス化も視野に:足場のサプライチェーンを変革
建設資材のサプライチェーンは中小や零細が多いため、調達の手間や中間流通を省いた価格の安さに根強いニーズがある。そうした需要を見越して、眠っている足場材を適正価格で売買するフリマ形式のマーケットプレースが登場した。将来は、あらゆる建材を網羅したSaaS提供で建設業界のデジタル化につなげていくという。
資材調達の手間を解消する足場専門ECサイト「足場JAPAN」
社会のデジタル化が急伸する中、建設資材流通もEC化が加速している。人手が限られる小規模事業者にとって、PCやスマートフォンを使って隙間時間に手軽に発注できる仕組みは資材調達に関わる実務的なメリットが極めて大きい。
大企業にとってもサプライチェーンの効率化によるコスト削減は当然ながら魅力的なため、今後はあらゆる建材を対象にEC市場の拡大が確実視されている。
その中で新たに立ち上がったマーケットプレースが、単なる業務効率化を超えるメリットをもたらす新世代のECサイトとして業界内で注目を集めている。現場に必須の「足場」専門のECサイトとして約10年の歴史を誇る「足場JAPAN」から派生した、誰でも参加できるフリマ形式で足場材を取引できるサービス「LLINK(リンク)」だ。
LLINKを運営するエルラインの前身は、2007年に代表取締社長の浅野勝人氏が立ち上げた解体足場工事専門の「浅野組」だ。
足場に特化したネット販売の足場JAPANを始める転機となったのが、浅野氏の故郷を襲った2011年の東日本大震災。復興支援のために東北支社を立ち上げ、足場部材の確保に奔走した。「その過程で足場メーカーや販売店との取引ルートを確立した。新品だけでなく中古品も併せて売ることで、足場販売が単独で商売として成り立つのではと思い至った」と振り返るのは、エルライン 執行役員 尾形友樹氏だ。
尾形氏によると、以前は足場の調達に相当苦労したそうだ。「足場は必ずしも新品でなくてもよいので、中古品であれば仕入れ値を少しでも安くできるという利点がある。ただ、販売店が在庫を常時抱えておらず、中古品は現物を確認しないと不安が付きまとう。問い合わせと現地に出向いての現物確認だけでかなりの時間を費やした」と述懐する。
こうした経験を基に、足場JAPANには「現場主義」と「新機軸」をモットーとするエルラインのアイデアが反映されている。フリマサイトと同様に、写真による現物/在庫の展示に加え、購入後の指定先への搬送までフォローする独自のトラック物流網による配送サービスも提供している。多くのECサイトは、宅配便で送れるサイズの商品に限定される。しかし、重ければ1トン近くにもなり、場合によっては工事現場まで届けてくれる足場の配送サービスは、他のECサイトに対する大きな差別化ポイントになるだろう。
今では、写真掲載と独自の配送サービスによる調達の容易さが中小企業の多い仮設業者のニーズをつかみ、年間で25億円以上を売り上げるまでに成長を続けている。
眠れる足場を安心して取引するための仕組み
一見すると順風満帆な中、なぜエルラインは新たにLLINKを開始したのか。背景には、足場JAPANではカバーし切れない潜在顧客が数多く存在することがある。
尾形氏は、SNSの利用者拡大に比例してSNSによる中古足場の売買も増加傾向にあると指摘する。ただ、SNS内での取引は相手の素性が分かりにくいためトラブルに見舞われるリスクも高い。
一方で、事業承継の問題や人手不足などを理由に、残念ながら足場の世界でも廃業が相次ぐ。別の見方をすれば、まだ使えるのに使われていない「眠れる足場」も増えていることになる。
LLINKが目指すのは、フリマ形式による会員同士のマッチングを通じた仮設業者のさらなる支援だ。LLINKにはそのための仕組みが用意されている。まずは、トラブル防止のための購入フローだ。
LLINKでの取引の流れは、サイト上の出品物に対してエルラインへの入金確認が取れた時点で商品発注が成立したと見なす。その後でエルラインによる配送手配に進むが、この段階では売買契約自体は未成立だ。契約が成立するのは、発注側が商品を受け取って取引システムに用意された「受領確認」ボタンを検収確認として押してからとなる。ここで出品側に、手数料を引いた商品代金がエルラインから支払われる。つまり、入金遅延や不正出品に起因するトラブルを未然に防ぐ防波堤の役目をエルラインが担っているわけだ。
大量の足場売買も「セレクト購入」で簡単に
眠れる足場について、例えば廃業を決めた事業者は手元資産の現金化を考えるだろう。その手法は販売店や資材卸への売却が一般的だが、売値が妥当かどうかの判断が付きにくい。「LLINKであれば自分で値付けでき、納得のいく形で処分できる。それが足場の円滑な再利用につながる」(尾形氏)。
国際的な原材料価格の上昇を受けて足場部材も3割程度値上がりし、中古足場の需要は日々高まっている。こうした状況下で、より“安く”と、より“高く”という双方の考えをマッチングさせる場としてLLINKは有効だ。
LLINKは、誰もが使うフリマサイトと同じインタフェースなので使い方も極めて簡単だ。スマートフォン用の無料アプリやPCでアクセスして会員登録し、売りたい場合は商品のカタログデータなどに沿って製品仕様や個数などを入力。スマートフォンで撮影した商品写真をアップロードすれば出品が完了する。買い手は、各種情報や現物の写真を参考に商品を選択する。
足場JAPANと同様、トラックによる配送サービスも用意されている。運送料金は引き取り先と配送先の住所で自動計算し、購入検討時に買い手に表示される仕組みだ。沖縄を含む全国をカバーし、配送に要する期間は入金確認後の約3〜4日程度。
LLINKは2022年12月のサービス開始以来、現在進行形で機能改善を続けている。その一つが、在庫をまとめて出品できる「セット販売」(買い手視点では「セット購入」)と、買い手が購入個数を自由に選べる「セレクト購入」だ。セレクト購入によって売り手は大量出品の手間を省け、買い手は欲しい構成パーツを欲しいだけ一括で購入できる。
コメント機能も実装され、売り手の買い手との価格交渉や別の商品写真の要求などが行われている。
在庫管理機能のSaaS提供で建築業界のデジタル化を支援
「まずはLLINKの周知、次が使い勝手の向上。さらに扱う商品の拡充が利用拡大に向けた当面の施策となる」と尾形氏。足場回りや工具、さらに工作機械、建設機械などの商品ラインアップを早期に増やし、建材メーカーとの連携も積極化させている。
エルラインの事業多角化を視野に、LLINKを発展させるもう一つの方向性として尾形氏が見据えるのが、在庫管理などの仕組みのサービス化による建築業界のデジタル化の支援だ。
LLINK以外も含むシステム開発は既に着手済みで、在庫管理については近く発表する予定だ。尾形氏は、「AIによるパイプ数の自動検出といった最新技術を盛り込み、足場材の写真を撮るだけで手間をかけずに適正に管理できるシステムの実現を目指している。その上でLLINKと連携し、在庫分を売ったりレンタルに出したりできるようにするなど、新たな収益化の手段としての活用も見込んでいる」と展望を示す。
建設業界の中にいるからこそ、どこにどんな問題があるかを深く認識できているのがエルラインのデジタル支援における一番の強みだ。デジタル化に総じて出遅れた業界であるからこそ、エルラインと顧客の双方にとっての可能性は大きい。「これまでデジタルを利用できていなかった企業が、少しでも良い方向に向かえるように貢献できれば」と尾形氏は力を込める。
足場材のサプライチェーンに一石を投じ、これまでになかった中古足場市場を創出したエルライン。建設DX領域で真価を発揮するのはこれからが本番だ。
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提供:株式会社エルライン
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2023年8月31日