換気で省エネと健康を両立、パナソニックが提案する“withコロナ=ニューノーマル時代”の暑熱対策:非住宅分野でもIAQ「室内空気質」が重要な理由
新型コロナ感染症の拡大を受けて、企業間で空気の質、いわゆる“空質”に対する関心が着実に高まりを見せている。そうした中、製造業を中心に課題となっているのが、近年の猛暑を受けた工場内での暑熱対策だ。暑熱対策として既存の空調方式は、いくつかあるが、実はそのいずれもが高い経済性と環境負荷の低減など、経営視点での要求を高いレベルで満たすことは難しい。しかし、そうした中、パナソニックが提案する次世代の換気とも呼べるスマートウェルネス換気と室内空気質(IAQ)の考え方、それを実現する空調設備などの製品群が多くの工場などに採用され、高い評価を受けている。
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、換気回数を増やしたり、室内の空気の流れ(気流)を見直したりなど、建物の空調を見直す動きが広がっている中、「空気の質」である「室内空気質(Indoor Air Quality:IAQ)」の重要性に対する理解も企業の間で進んでいる。
空質の善し悪し(よしあし)は、職場の快適性や安全性、従業員の健康、さらには企業の生産性にも大きく左右する。日本サステナブル建築協会が提言するスマートウェルネスオフィスでも、基準の7項目のうち、過半数の4つを「暑さ・寒さ」「気流」「乾燥/湿気」「よどみ、臭い、埃(ほこり)」といった空質関連が占めている。それらの向上は、単なる職場環境の改善にとどまらず、企業経営に直結する課題と位置付けられる。
ただし、適切な施策の見極めは、一筋縄にはいきにくい。とくに近年になり製造業を中心に多くの企業を悩ませているのが、生産設備の近代化に伴う内部発熱の増加と、数年来の猛暑を受けての工場での暑熱対策だ。そもそも工場は、1フロアが広大なだけにオフィスよりも空調管理が難しい。加えて、室温を適切に下げるだけでなく、高い経済性や地球環境保護の観点からCO2排出量の削減なども、併せて企業には求められる。
その点から、工場の一般的な空調方式を概観すると、構内を広く冷やす「全体空調」や「ゾーン空調」は、必然的にエネルギー消費が多くなり、ランニングコストも高くなるのが難点。一方で、特定エリアのみを冷却する「スポット空調」は、エネルギー消費をその分抑えられるが、広域に作業員を配置していたり、作業位置が固定されていなかったりする場合は効果が薄い。つまり、暑熱対策に求められる全ての要件を高いレベルで、同時に満たすことはいずれの方式でも困難だと言えよう。
“スポット”と“ゾーン”の良いとこ取りのアプローチ
では、この難題をどう克服するか?そこで、既存と異なるアプローチとして注目を集めているのが、長年、住宅・非住宅の双方で室内空気質(IAQ:Indoor Air Quality)の向上に向き合ってきたパナソニック エコシステムズが開発した大空間向け空調システム「VZ(バリアゾーン)大空間システム(以下、VZ)」だ。
VZを端的に説明すれば、工場ダクトに組み込むスポット冷却用の送風システムを指す。送風により、体感温度を下げられるスポット冷却は、エネルギー消費を抑制できることもメリット。しかし従来製品は、送風口が固定されていたため、送風範囲が限定されていたのがネックだった。
解消すべくVZに施した工夫が、扇風機の首振り機能のように吹出口を動かす独自のスイング式ノズル「VZノズル」の採用だ。スイング角度は、30度から120度までの4段階から選択でき、作業員の動きに追従する広範囲な冷却を実現する。なおかつ、リモコンでの設定変更により、工場が操業している中での送風エリアの柔軟な変更も可能とした。
継続的に風が人に当たり続ける送風方法は、不快さを感じる一因となるが、スイングでの間欠的な送風により、そうした不快感を覚えることも無い。さらに、複数台の適切な設置で、スポット空調でありながら、エアーカーテン効果によるゾーン空調も可能になる。
こうした空調能力の総合的な高さから、VZは大規模工場を構える自動車メーカーを中心に高く評価され、販売実績もここ数年で倍増の伸びを見せている。導入企業では、全体空調比でエネルギー消費が半分以下に抑えられる点についても、支持されているという。
そうした市場で好評を得ているVZを展開するパナソニック エコシステムズでは、暑熱対策のさらなる高度化に向けた新たな“武器”をプロトタイプながら既に手に入れている。それが、吹出口の空流の適切な制御によって、スポット空調とゾーン空調の良いとこ取りをさらに推し進めた「暑熱対策用空調ノズル」だ。
風は当たっていても、“ぬるさ”から快適さを感じないことや、強すぎる冷風に風邪をひきそうになった経験は誰しもあるだろう。その点、暑熱対策用空調ノズルは、風に対する人の健康や快適さを考慮し、用途に応じたノズル形状の改良を行った。
設置場所に合わせて、ノズル構造を“最適化”
ダクト空調の吹出口はこれまで、空気を送り出すだけの単純な形状をしており、そこからの風は周縁部ほど暑い外気を巻き込んでしまう。そのため、快適な風を届けるには風量を増やしたり、吹出口温度を下げたりしなければならないが、気温の変化がある中での適切な調整は至難の業となる。
しかし、パナソニック エコシステムズの暑熱対策用空調ノズルは、ノズル構造を2タイプに改良することで、気流を最適化した。1つは、より遠くに冷気を届けることを目的にした「ひんやりタイプ」。ノズル内を多層化することで、風の流れを緩やかにして、外気も巻き込みにくくした。
もう一つは、近い場所で広範に冷気を送る「ワイドタイプ」。吹出口を拡大させ、冷気が広い空間を包み込むような適切な拡散だ。両タイプともに、目的のエリアに、より効果的に冷気を届けるという狙いは共通しており、その実現を通じてエネルギー消費を削減でき、風量の抑制により、不快さも軽減できる。言葉では説明が難しいが、暑熱対策用空調ノズルの効果は、現行ノズルと比較した実測結果からも一目瞭然だ。
パナソニック エコシステムズ 環境エンジニアリングビジネスユニット 機器開発部 部長 細野洋氏は、「暑熱対策用空調ノズルの製品化に向け、本格着手したのは2020年4月。その後、8月には現在のプロトタイプにまで漕ぎつけました」と語るが、これほどのスピーディーな研究開発も、室内空気質を対象にしたIAQ関連事業での豊富な知見と、環境エンジニアリング関連事業での設備分野の設計や施工も含めた空間構築の蓄積があればこそ。
現在、ひんやりと緩やかな風を届ける「ひんやりタイプ」と、広く緩やかな風を届ける「ワイドタイプ」の2種類は、2021年4月の発売を目指し、製品設計の最終調整を進めているが、既に冷却品質は販売レベルに達しており、展示会への出品などを通じて少なからぬ企業が関心を寄せているとのことだ。
冷却ベストで“簡単”かつ“安価”な対策アプローチ
一方で、より導入コストを抑えた手軽な暑熱対策も製品化を進めている。子会社で環境エンジニアリング関連事業を主に担当しているパナソニック環境エンジニアリングが開発中の作業員向け冷却ベストと、冷却から乾燥、除菌などの運用管理を行う保管庫も含めた機材一式を1つにパッケージ化した「zia cool(ジアクール)」だ。
ファン付き冷却ベストは、工場や工事現場でも日常的に見掛け、もはや珍しいものではなくなっている。ただ、粉塵(ふんじん)が舞う環境では、故障しやすく、作業員の汗に起因する臭いも問題となっている。
zia coolは、こうした冷却ベストの問題点を総合的に解決した。故障リスクに対しては、ファンの代わりに、冷却ジェルをベスト内に仕込むことで一掃。また、スペースを取りがちな冷却装置を1畳ほどのプレハブ型の冷凍庫とした。冷凍庫には、次亜塩素酸による除菌と脱臭、ウイルス抑制を実現したパナソニックの空間除菌脱臭機「ziaino(ジアイーノ)」も衛生対策の機能として組み込んでいる。
パナソニック環境エンジニアリング 環境ソリューション事業グループ 営業ユニット 主幹 海老子伸行氏は、「冷却用ジェルや冷却設備、衛生のための機器などを個々に検討するのは、極めて煩雑な作業です。しかし、zia coolであれば、当社が事前に導入先の各工場などで検証を行い、最適な組み合わせで提案するため、面倒事は一切無く、しかもダクト空調よりも格段に安価で利用できます」と強調する。
ベスト自体の機能性も高く、33度の環境下で5時間の冷却効果を保て、昼休憩を挟んだ交換をすれば、1日中着用できる。ジェルの表面温度は、アルミ包装で20度前後に保たれており、低温やけどのおそれはない。冷却ジェルのほとんどは水分で、万一、漏れた際の心配も不要だ。
zia coolの正式発売は、暑熱対策用空調ノズルと同じく2021年4月を予定しており、「首まわりや脇など、効果的なジェルの配置手法やベストへの取り付け方について、アパレルメーカーと協議を進めています。空調設備とは異なるアプローチで、簡単かつ安価な暑熱対策として、工場やイベント会場などの利用を想定し、商品力に磨きをかけていきます」(海老子氏)。
“知見”と“展開力”の両輪で、あらゆる環境の空質を改善
ここまでは、暑熱対策で活用を見込めるパナソニック エコシステムズとパナソニック環境エンジニアリングの製品を見てきた。ただし、暑熱対策で成果を上げるには、他にも外せない要素がある。それが、IAQ=室内空気質に関する深い知見と、そこで導き出された策を確実に現場に落とし込むエンジニアリングの展開力だ。
その観点でも、両社は企業にとって有力なパートナーになり得るといえるだろう。パナソニック エコシステムズは創業以来、空質の改善に一貫して取り組んできた。そのことは、家庭用の空気清浄機、トンネル用換気システム、住宅・非住宅向けの各種換気扇、エアーカーテン、エアー搬送ファンなどの商品群と、多様な要望に応えられる提案能力からも容易に理解できる。
そこに、パナソニック環境エンジニアリングのエンジニアリング能力が加わることで、独自の強みとなっている。「どれだけ商品の性能を上げても。適切に機器を配置しなければ十分な効果を上げられません。パナソニック環境エンジニアリングは、多様な建物内の設計、施工、さらに運用まで担う国内有数の問題解決力を持ち、それがパナソニックグループの室内空気質改善における他社との抜本的な差別化につながっているのです」(細野氏)。
リモートワークの広がりを受け、自宅だけに限らず工場やオフィス、社会全体で空質ニーズも多様化/高度化することはほぼ間違いない。そこに応えられる“知見”と“展開力”を両輪にして、今後、非住宅分野でも、両社の存在感はさらに増していくことになりそうだ。
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パナソニック エコシステムズは、換気設備や空調に関するセミナーを開催し、販売に注力している第1種全熱交換型換気システムの普及を推進している。
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提供:パナソニック エコシステムズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2020年11月6日