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産学連携で確立した橋梁診断支援AI「橋梁アセスタ」、診断作業時間を最大80%削減:生成AI×熟練技術者の知見

橋梁点検ではドローンや画像解析などのデジタル技術の導入が進む一方、取得した情報から橋梁の健全性を判定し、点検調書に結果と所見をまとめる「診断」は技術者の経験に依存したままだ。NTTドコモソリューションズ、NTTドコモ、長崎大学、溝田設計事務所が開発した「橋梁アセスタ」は、AIが診断調書の草案を作り、技術者が最終確認する協働型の仕組みにより、最大80%の診断作業時間削減と品質の均質化、技術継承を支援する。

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 橋梁の定期点検で、ひび割れの位置や幅、鉄筋の露出、漏水といった客観的なデータはそろっていても、いざ診断調書を前にすると若手技術者の手は止まりがちになる。所見を数百文字にまとめるには、マニュアルの熟読だけでは到底身に付かない現場の暗黙知が必要となるからだ。

 調書の草案づくりを支援し、技術者が評価や最終判断に集中できる環境を提供するのが、業務特化型AIエージェント「橋梁アセスタ」だ。

橋梁アセスタを用いた診断の流れ
橋梁アセスタを用いた診断の流れ
提供:NTTドコモソリューションズ

 様式の異なる点検調書から必要な情報を抽出し、熟練技術者の知見を反映した診断ロジックと組み合わせて草案を作成する。最終判断をAIに委ねず、あくまで技術者が精査し、修正を加えることを前提とした「人とAIの協働型サービス」として提供する。

開発/販売にかかわる長崎大学、NTTドコモソリューションズ、溝田設計事務所、NTTドコモビジネス、NTTドコモの担当者(写真左から)に話を聞いた
開発/販売にかかわる長崎大学、NTTドコモソリューションズ、溝田設計事務所、NTTドコモビジネス、NTTドコモの担当者(写真左から)に話を聞いた

増える古い橋梁、限られる体制 点検のデジタル化だけでは回らない

 全国に約73万橋ある橋梁のうち、建設後50年以上が経過した橋梁は、2024年度の約42%から2029年度には約54%へと増加する見込みだ。また、5年ごとの定期点検では年間約15万橋の診断が求められている。老朽化が進み、豪雨による河川の氾濫などで橋梁の損壊も生じている一方、地方自治体では維持管理を担う人材や予算に限りがある。

 長崎大学 総合生産科学研究科 准教授 山口浩平氏は、長崎県内21市町の橋梁診断に関わる中で、土木を専門に学んでいない職員が維持管理を担当するケースも目の当たりにしてきた。「国が法令で橋梁の点検/診断を一律に義務付ける意義は大きい。しかし、人も機材も予算も潤沢とは言えない自治体が国の直轄事業と同水準の対応をとるのは難しい。限られた体制でもメンテナンスサイクルが回る支援の必要性を痛感していた」と語る。

長崎大学 総合生産科学研究科 准教授 山口浩平氏
長崎大学 総合生産科学研究科 准教授 山口浩平氏

 橋梁は5年に1回の定期点検が義務付けられており、点検後は健全性を4段階で診断する。診断結果は修繕/予算計画の起点になるため、判定のばらつきを抑えることは、修繕の優先順位付けや適切な維持管理計画の策定に直結する。

 点検票に記すのはひび割れや腐食など客観的な点検結果だが、診断過程では複数の点検結果から、原因を特定し、劣化状況を把握した上で、適切な対策方法を判断しなくてはならない。山口氏は「カメラやセンサーでの情報収集は医療でいう“検査”に当たる」と例える。検査結果がそろっただけでは治療には進めない。検査結果を踏まえスピーディな治療につなげるには、効率的な所見の入力と、一定品質での判断の積み重ねが必要だ。

 画像解析など点検を効率化する技術は増えているが、診断工程には依然として多大な負担と属人的な作業が残っている。橋梁アセスタは、点検とその先の措置をつなぐ診断工程を支援するという発想から生まれた。

 診断業務の中でも若手技術者が特に苦労するのが、所見の作成だ。損傷の種類だけでなく原因、進行性、必要な措置、次回点検までの見通しを技術的な文章にまとめる必要がある。溝田設計事務所 代表取締役 溝田一仁氏によると、「所見欄には数百文字を記述する必要があり、経験の浅い若手の場合、損傷や径間数によっては1橋の診断調書作成に1〜2時間かかることも珍しくない」という。

AIが点検票を読み取り、不足情報を技術者に問い返す

溝田設計事務所 代表取締役 溝田一仁氏
溝田設計事務所 代表取締役 溝田一仁氏

 橋梁アセスタは、各社の強みを生かす形で、NTTドコモが研究開発したAI技術を基に、長崎大学が技術監修、溝田設計事務所が診断ノウハウを提供、NTTドコモソリューションズが企画/開発/運用を担う。販売はNTTドコモビジネスと溝田設計事務所が手掛ける。

 利用者が点検票をアップロードすると、AIが橋梁の基本情報や部材、損傷の種類/程度など、診断に必要な情報を抽出する。Excel、PDF、CSV、テキストファイルに対応し、自治体や発注者によって異なる様式から情報を読み取れる。

 抽出結果で診断に必要な情報が点検票に不足していれば、橋梁アセスタがチェックリスト形式で質問を表示する。点検票に「ひび割れがある」としか記載されていない場合でも、位置や程度など、診断を左右する追加情報を選択肢から選ぶ仕組みだ。

 全ての質問に回答すると、その内容を反映して診断ロジックが実行され、国土交通省が定める要領などに準拠した診断調書の草案が数十秒で出力される。質問が生じない場合は、点検票の入力から草案の出力まで最短1分で完了する。

橋梁アセスタが生成した診断所見草案の一部
橋梁アセスタが生成した診断所見草案の一部
提供:NTTドコモソリューションズ

AIが作るのは「70〜80点のたたき台」 最終判断は技術者が担う

 出力されるのはあくまで草案で、各工程に人の確認を組み込み、最終的な判定や所見の修正は必ず技術者が行う。溝田氏は草案を「70〜80点のたたき台」と表現し、「最初から100点の正解を導き出すAIではなく、一から書く労力を減らし、技術者が本来注力すべき高度な判断に専念できるようにするものだ」とAIの役割を位置付ける。

 2025年12月から2026年3月にかけて、複数の自治体や建設コンサルタントを対象に検証し、診断業務にかかる作業時間を最大80%削減できることを確認した。検証に参加した中央コンサルタンツからは、「調書を読み込んで簡単な質問に答えるだけというシンプルな操作で診断調書の草案を作成できる。草案は精度が高く、表現のばらつきも抑えられ、実務で十分活用できる水準だ」との評価が寄せられた。

 溝田設計事務所では約100橋を対象に試行し、業務効率化に加え、人が作成するより記載の抜け漏れが少ないなど品質の向上にもつながったことを確認した。技術者ごとに癖があった文章表現も標準化され、レビューを技術的な判断に絞りやすくなったことで、熟練者の負担も軽減された。

 溝田氏は「効率化で生まれた時間は、新規案件の獲得や若手への技術指導に振り向けられる。チェックリストの質問は、診断に必要な視点を若手に伝える教材にもなる。答えられなければ点検記録を確認し直したり現場に戻ったりする過程で、次に何を見るべきかを学べる」と説明する。熟練者も所見の書き方を教える手間が減り、判定根拠や損傷の捉え方といった本質的な指導に時間を割けるようになったという。ベテラン技術者にとっても、一つの損傷に複数の原因や進行の可能性が示されることで、経験則による判断を見直すきっかけも生まれた。

AIによる精度の高い橋梁診断支援をどう実現したのか 

NTTドコモソリューションズ 野山ゑ里氏
NTTドコモソリューションズ 野山ゑ里氏

 橋梁診断に汎用生成AIの利用が難しい理由について、NTTドコモソリューションズ 野山ゑ里氏は、「点検調書の様式が自治体ごとに異なるうえ、業務固有の判断が必要で、情報不足を生成AIがもっともらしい嘘(ハルシネーション)で補ってしまうリスクもあるからだ」と説明する。

 橋梁アセスタは、点検調書から情報を抽出する生成AIと、国土交通省の点検要領/診断マニュアルに加えて熟練技術者の暗黙知を言語化した独自の「診断ロジック」をRAG(検索拡張生成)の参照情報として組み合わせている。情報が不足する場合はチェックリストで人に確認を求め、AIが不足情報を推測して補完してしまうリスクを抑える。構造が異なる一般橋梁と溝橋(ボックスカルバート)は、種類を選ぶことで内部の診断ロジックも切り替わる。

不足情報はAIが補うのではなくチェックリストで確認する
不足情報はAIが補うのではなくチェックリストで確認する
提供:NTTドコモソリューションズ

 開発時に立ちはだかった壁が、熟練技術者の「暗黙知の言語化」だった。溝田氏によれば、技術者は損傷を見て直感的に判断を下しており、理由を尋ねても当初は「見れば分かる」としか答えてくれなかった。そこで溝田設計事務所が判断条件を文章や表に整理し、単純に分類できない判断はフローチャートに展開した。

NTTドコモ 眞田佳市郎氏
NTTドコモ 眞田佳市郎氏 

 AIエージェント技術の研究開発を担ったNTTドコモ 眞田佳市郎氏は、開発初期を振り返り「最初は、大量のデータを読み込ませれば精度が上がるだろうと考えていたが、それだけではうまくいかなかった。判断の条件を1つずつ整理/分析し、情報をRAGの仕組みに組み込んでいくことで精度が上がっていった」と語る。2〜3週間単位で改良を繰り返しながら、開発開始から約1年で商用化にこぎつけた。

 しかし、精度を高めてもなお課題は残る。溝田氏は「利用者側にはAIであっても完全に正しい答えを出してほしいという過度な要求が根強く、土木業界のDX導入を妨げる一因にもなっている」と指摘する。橋梁アセスタが目指すのは技術者が最終判断に集中できる「たたき台」の提供であり、生成AIの特性と限界を利用者側にも理解してもらう必要性を実感している。

SaaS型で手軽に導入可能 無料トライアルからスタートできる

 橋梁アセスタはSaaSのため、インターネット環境とWebブラウザがあれば専用設備を新たに導入することなく利用できる。点検調書のアップロードから抽出結果の確認、チェックリスト回答まで、生成AIを初めて使う技術者でも直感的に操作できるUI/UXを設計した。

NTTドコモビジネス 中村亮介氏
NTTドコモビジネス 中村亮介氏  

 年間に処理する橋梁数に応じて、50橋から800橋までのパッケージを用意している。販売を担当するNTTドコモビジネス 中村亮介氏は「2026年4月のサービス開始後、全国の建設コンサルタントなどから問い合わせが相次いでいる」と手応えを話す。商談を進める中で、寒冷地特有の劣化への対応や図面中心の点検調書からの情報取り込みといった新たなニーズや課題も見えてきたという。

 本契約前には、14日間最大5橋を無料でトライアルできる。現在、新技術情報提供システム(NETIS)登録の申請中で、「点検支援技術性能カタログ」登録に向けても調整を進めている。

 主な利用者は建設コンサルタントや点検事業者を想定しているが、橋梁を保有する高速道路や空港運営会社、鉄道会社などでの活用も見込む。

 点検票の情報整理や診断調書案の作成を効率化することで、技術者がより専門性の高い業務に集中できる環境をつくり、人材不足が進む中でも持続可能なインフラメンテナンスの実現を目指す。今後も、生成AIの進化に応じて、基盤モデルの更新に合わせたプロンプト調整などを行い、診断調書案の品質を維持/向上させていく方針だ。

※「SmartMainTech」はNTTドコモソリューションズの登録商標。
※「橋梁アセスタ」、「橋梁アセスタ」アイコンは、NTTドコモソリューションズが商標出願中。
※その他、記載されている社名、商品名などは各社の商標または登録商標である場合がある。

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提供:NTTドコモソリューションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2026年12月26日

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