木内建設 東京本店がBIM実行環境をVDIクラウドに乗り換えたワケ:建築BIM加速化事業の補助金利用も可
静岡県に本社を置く木内建設は、首都圏のマンション建設を手掛ける東京本店で、BIMの実行環境としてNTTPCの「VDIクラウド for デジタルツイン」を導入した。従来の環境では十分な性能が得られなかったが、ストレスのないBIM環境が確保され、積算などの業務にも活用している。
BIMの実行環境の性能が低く、社内浸透のボトルネックに
木内建設は木内組として大正10(1921)年に静岡市で創業した。静岡県内での施工実績はトップクラスで、エコパスタジアム、日本平夢テラス、グランシップ(静岡県コンベンションアーツセンター)などのランドマーク的な建築物をはじめ、さまざまな建築・土木工事を担当してきた実績を持つ。
1957年には現在の東京本店にあたる東京営業所を開設。公共施設や商業施設などが中心の静岡本店(本社)に対し、東京本店では主にマンション建設を得意としている。
木内建設がBIM(Building Information Modeling)活用に着手したのは2015年のこと。静岡本店の設計チームがGraphisoftのBIMソフトウェア「Archicad(アーキキャド)」を導入し、複雑な木組み構造を持つ日本平夢テラスを筆頭に活用を進めてきた。
マンション建設が主体の東京本店でも、同時期にArchicadを採り入れ、2021年頃からBIMへの取り組みを本格的にスタートした。BIMを含めた木内建設のDX推進を担当する望月寿人氏は、「東京本店でも、対象の現場は絞っているが、施工検討などでBIMを使い始めている。また、若手を中心に研修の一環で、BIMに触ってもらう機会を設けてきた」と説明する。
ただ、そうした社内展開の中で、大きな課題が立ちはだかったと丹羽潤氏は明かす。「BIMソフトウェアのArchicadを動かすにはそれなりの性能のPCが求められる。しかし、東京本店で各社員に支給されているPCはそこまで性能の高いものではなかったため、Archicadを満足に動かせなかった」。
対策として既存のデスクトップパソコンを利用し、リモートデスクトップで接続する環境を構築したが、それでも性能的にフラストレーションが溜(た)まったという。
NTTPCが提供する高性能なクラウド実行環境を導入
BIMを社内に浸透させていくには、若い社員を中心に、触ってみたい、試してみたい、と思わせるような動作環境が不可欠と考えた木内建設は、Archicadの実行環境としてNTTPCコミュニケーションズ(以下、NTTPC)の「VDIクラウド for デジタルツイン」を採用した。「取引のあるITベンダーから、クラウドと仮想デスクトップを組み合わせた『VDIクラウド for デジタルツイン』というサービスがあるよ、と教えてもらったことがきっかけとなった」(望月氏)。
VDIクラウド for デジタルツインは、NVIDIAが提供する高性能なGPUを中心に構成された、BIM/CIMなどの建設DXやCAD/CAEなどの製造DXに適した3Dモデル向けプラットフォームだ。リモートデスクトップに比べて画面遅延の少ないVDI(Virtual Desktop Interface)方式を採用している。仮想マシン(VM)単位の定額制で提供されている。
NTTPCは2023年3月頃、木内建設にVDIクラウド for デジタルツインのデモを実施。その際に望月氏や丹羽氏らは、それまで課題だったArchicadの応答性の問題を解消できるとの感触を得た。
その後、Archicadを用いた2カ月ほどのトライアルを経て、2023年10月に正式契約に至った。「VDIクラウド for デジタルツインは月額制で提供されるため、予算化しやすかったことに加え、国土交通省の『建築BIM加速化事業』※1から補助金が受けられることもあって導入を決めた」と望月氏は振り返る。
なお、Archicadのクラウド上での利用については、提供元のグラフィソフトジャパンと協議の上で、木内建設が導入しているライセンスのうち一部を割り当てて運用している。
※1 建築BIM加速化事業:設計BIMモデルや施工BIMモデルの作成などに必要なBIMソフトウェアおよびハードウェア費用も補助の対象
BIM研修がスムーズになり、積算業務などの効率化も実現
VDIクラウド for デジタルツインの導入により、東京本店では次のような効果が得られているという。
その1つがBIM研修の効率化だ。「自社で導入したパソコンをリモートデスクトップで接続していた時に比べて、性能的に不自由がない、これなら使えるといった声が社内の利用者から聞かれるようになった。IT環境の改善という意味で大きなプラスになっていることは間違いない」と望月氏。
丹羽氏も、「BIMを進めるには、人材、組織構成、IT環境の3つが必要。このうちIT環境は、今まで性能的に芳しくなかった。VDIクラウド for デジタルツインの導入後はスムーズに動かすことができ、BIMソフトウェアを触ってみたいという気持ちにつながっている」と評価する。
また、積算の担当者が高性能PCとして、VDIクラウド for デジタルツインを使うこともあるという。「積算を行うには多様なデータを参照しなければならず、会社支給のパソコンだと動作が重くなっていた。担当者にVDIクラウド for デジタルツインを紹介したところ、積算業務がサクサク進められるようになったと好評だ」(丹羽氏)。
一方で、丹羽氏はVDIクラウド for デジタルツインを使っていく中で、新たな課題も浮き彫りになったと口にする。「BIMのデータファイルに関して、セキュリティの観点からも、ログインした誰もがアクセスできる共有ストレージ空間と、特定のユーザーのみアクセスできる専用ストレージ空間といったパーティショニングが必要になる。そのためNTTPCと相談しながら、運用方法を検討中だ」。
BIMのさらなる社内浸透と実案件への適用を目指す
丹羽氏らは、BIMで先行する静岡本店とも情報交換をしながら、東京本店でのBIMの浸透にこれからも努めていく。「以前に比べれば、だいぶ周知はされてきたが、まだ自分の業務にどう関係するのかといった捉え方をしている社員も少なくない。東京本店が扱う一部の物件に適用するとともに、研修や啓発も引き続き進める」と今後の見通しを示す。
BIMは、設計、積算、施工の各工程を横串でつないで効率を高めるとともに、物件に関わる様々な企業(施主、設計会社、施工会社、協力会社、テナント、管理会社など)の間で、情報や課題の共有を実現する仕組みでもある。望月氏はそのレベルに至るには、かなりの時間がかかるだろうと前置きした上で、少しずつBIMの活用範囲を広げていきたいと展望する。手始めに、ビュワーソフトウェアとVRゴーグルを利用して、社外を含めてBIMモデルをウォークスルーで見られる環境の整備を予定している。
最後に望月氏は、「当社は、日本全国の地方建設会社107社が集まる建設DXコミュニティー『ON-SITE X』※2に参画し、事務局を務めている。その活動の中で、われわれと同じ中小規模の建設会社の方から、これからBIM利用を検討している、もしくはBIMソフトウェアを導入してみたものの実行環境が不十分で活用に至っていない、といった声をよく耳にする。高性能なBIM環境を自前で揃えるのが難しい当社のような建設会社にとって、NTTPCのVDIクラウド for デジタルツインは課題を解決する最適な選択肢であり、さらなる機能拡充に期待したい」と要望した。
NTTPCでも、これからも中小や地方の建設会社を含む、建設業界のニーズを汲み取りながら、BIM活用を実行環境面で万全にサポートしていく方針だ。
※2 ON-SITE X:チャレンジングな地方建設会社と建設業に取り組むスタートアップの建設DXコミュニティー
※)本記事はNTTPCコミュニケーションズから提供されたコンテンツをBUILT編集部で一部編集して転載したものです。
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提供:株式会社エヌ・ティ・ティピー・シーコミュニケーションズ
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2024年9月12日