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会員500人突破したACCユーザー会 共通データ環境の標準化と実務実装へ建設デジタル化の遅れを取り戻す!

ACCユーザー会は、BIMをはじめ建設情報をマネジメントする共通データ環境の「Autodesk Construction Cloud」に関する実装や運用ルールの標準化に取り組んでいる。業務プロセスや施工管理、土木などの各領域で何を議論し、現状でどこまで整理が進んだのか。海外知見の取り込み、維持管理やデータガバナンスまでも視野に入れた次の焦点を4人のキーマンに聞いた。

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 ACCユーザー会(ACCUG-JP)は、Autodesk Construction Cloud(ACC)を実務で使いこなすための知見を共有し、ユースケースの拡大と普及を後押しするユーザーコミュニティーだ。2024年7月の設立以来、3カ月ごとの定例会やワーキンググループ(WG)でベストプラクティスの共有やテンプレート整備、会員同士のネットワーキングなどを重ねてきた。

 会員は大手ゼネコンや設計事務所を中心に、発注者、デベロッパー、サブコン、建設コンサルタントなどと幅広い。設立時に219人だった会員数は、2025年12月末時点で500人を突破した。

 ACCUG-JPで会長を務める清水建設の三戸景資氏と、副会長の大和ハウス工業の宮内尊彰氏、竹中工務店の滝本秀明氏、日揮グローバルの津多秀和氏に設立背景、活動の現状、今後の展望などを聞いた。

海外に先駆けACCのユーザー会が日本で誕生した理由

 三戸氏がACCUG-JPを構想するようになったのは、清水建設でACCを導入するにあたり、「ACCを業務の基軸に据える以上、関係者間で一定の運用ルールは欠かせない。だが、元請の独自ルールを協力会社や発注者にまで一律に求めるのは時代にそぐわない」という多様なステークホルダー間で、運用をどう標準化するかの疑問がきっかけだった。

ACCUG-JPの会長を務める清水建設 建築総本部 生産技術本部 建設DX基盤部 部長 三戸景資氏
ACCUG-JPの会長を務める清水建設 建築総本部 生産技術本部 建設DX基盤部 部長 三戸景資氏

 もう1つの理由が実装に伴うコストだ。ACCのような社内外を横断して使うプラットフォームは、導入時だけでなく、運用の定着や関係部門との合意形成にも手間が掛かる。資本力の小さい発注者や設計事務所にとっては導入障壁になり得る。

 三戸氏は、クラウドサービスはデータが社外に開かれることを前提とする以上、運用ノウハウを社内に閉じて蓄積する発想自体が馴染みにくいと捉えた。「設計事務所やクライアントも含めたオープンな場で、運用ルールやテンプレートといった“標準”を詰めていくことが重要だと考えた。実業務への実装も含めてフォローできれば、日本の建設産業全体で、建設情報のデータ化やデータ連携の先に、ACCをデジタルツイン基盤としたデータの高度利用も実現するはず」と、ACCUG-JP設立の原点を語る。

「デジタル化の遅れ」を取り戻す、標準化と情報分断の解消

 三戸氏は、ACCUG-JPの存在は「日本のデジタル化の遅れ」を取り戻すためにも重要だと位置付ける。日本はアナログ運用の完成度が高い一方、その成功体験がデジタル化を後回しにしてきた側面がある。施工管理では、デジタルツールを業務プロセスに組み込み定着させる点で諸外国よりも遅れをとっている。三戸氏は差を埋めるためにも、「データ管理の在り方を標準化したり、海外の先進事例を積極的に紹介したりすることが重要だ」と力説する。

 津多氏は標準化整備の前提として、「情報の分断を解決しなければならない。現実のプロジェクトでは関係者ごとに情報が散在し、非効率を生む。クラウド上にデータを集約し、皆で情報共有できる状態を創出することこそがACCUG-JPの基本理念。それを具体化するのがACCUG-JPの役割だ」と強調する。

日揮グローバル デジタルプロジェクトデリバリー部 DX技術探求グループ グループマネージャー 津多秀和氏
日揮グローバル デジタルプロジェクトデリバリー部 DX技術探求グループ グループマネージャー 津多秀和氏

「意思決定」「施工管理」「土木」のWGが目指す姿

 現在、ACCUG-JPでは3つのWGが活動している。2025年1月に始動した「意思決定・業務プロセスWG(WG1)」「施工管理・監理業務改善WG(WG2)」と、同年9月に立ち上がった「土木WG(WG3)」だ。

 WG1は設計事務所がリーダーを務め、ゼネコン、発注者、エンジニアリング企業が参加。計画・設計・施工の意思決定や業務プロセスをACCの活用で、どう最適化するかを協議している。

 滝本氏は「多様な立場の参加者が集まることで課題の見え方が増え、単独の視点では整理しきれない論点が浮かび上がっている」と語る。共通するフェーズの構造を手掛かりに整理し、国際的な用語や枠組みも参照しながら、ガイドライン策定も視野に入れた論点の洗い出しに着手している。

竹中工務店 東京本店 プロダクト部 BIMグループ長 滝本秀明氏
竹中工務店 東京本店 プロダクト部 BIMグループ長 滝本秀明氏

 津多氏は、WG1は海外が先行している部分が多く、国際規格の「ISO 19650」などを参照する場面が多いとし、海外の運用例も踏まえて整備することで将来のグローバル展開も見据える。

 WG2では施工管理・監理にフォーカスし、「モノ決め」と「検査」の場面でACCをどう使うかを検討している。ACCを使いながら必要な設定やワークフローを検証し、マニュアルの作成を進めている。

 WG3は土木領域を対象に、基盤づくりから着手する方針で立ち上げた。滝本氏は「建築の立場から見ても土木の進め方が学びになる。発注者が提示する仕様に対して、受注側がどのようにデータを残していくかの観点で業務プロセスを整理している」と述べる。三戸氏は「土木は建築に比べて発注者側がマネジメントすべき対象が多く、要望が明確になりやすい」と解説する。

 津多氏は各WGの成果として、「どんな人たちが取り組んでいるかが見え、つながりができた。次年度以降のルール作りに向けた土台が整ってきた」との手応えを語る。

ACCUG-JPの組織図
ACCUG-JPの組織図 提供:ACCUG-JP

標準を広げる推進役として賛助会員に求める実装力

 ACCUG-JPには賛助会員の枠も用意している。ユーザー会の活動に賛同し、建設業に携わる会員企業がACCを活用して建設DXを進める上で、教育や実装支援、関連サービスの提供などを担うパートナーだ。

 宮内氏は「WGで運用ルールやベストプラクティスを整備しても、現場に落とし込むにはACCUG-JP側のリソースだけでは足りない」とし、ギャップを埋める役割を期待する。

 三戸氏は「WGから生まれた成果物を賛助会員が活用し、サービスとして展開することが、業界の標準化にもつながる」と前向きに捉える。

 WGで整理した成果物も参照しながら、各社の状況に合わせた導入支援を求める以外にも、ITベンダー会員にはACC単体では補いきれない機能を他システムとのAPI連携などで補う開発なども想定している。

「世界の知見を取り込み、日本に実装」ACCUG-JPの次のステージ

 ACCUG-JPの方向性について宮内氏は「ACCが国際規格に準拠している以上、海外の知見を継続的に取り込む必要がある。ACCそのものは、海外の建設業務や発注形態に最適化されている面がある。海外でもACCのユーザー会が立ち上がっており、活動の性格は異なるものの、知見を吸い上げる価値は大きい。海外事例を参照しつつ、日本の実態に合わせて運用を標準化することもACCUG-JPの役割だ」と説く。

大和ハウス工業 東京本社 技術本部 技術戦略室 技術戦略第1室 室長 宮内尊彰氏
大和ハウス工業 東京本社 技術本部 技術戦略室 技術戦略第1室 室長 宮内尊彰氏

 また、宮内氏は「日本でBIMが伸び悩んでいるのは、共通データ環境(CDE)が十分に成熟していないためだ。ACCを中心に、単なる“共有”ではなく、同じ状態のデータが“共通”化されて集まり、建設生産プロセスが回る環境をつくれれば、BIMの効果を引き出しやすくなる。その環境構築に寄与していきたい」と意気込む。

 三戸氏は「日本ではゼネコンがBIMに関わる業務の多くを吸収してきたため、BIMを使う必然性が見えにくかった。だからこそ、ACCを起点にBIMデータを使うと省人化や省力化でどのように効果を生むのかメリットを明確に示す必要がある」と力説。そのデータ活用を業務に落とし込む鍵が、データマネジメントの職能だという。日本ではBIM担当者がオペレーションにとどまり、情報管理までは至っていない。宮内氏も海外では、BIMの情報を管理する専任者を配置している例に触れ、日本でも同様の人材が不可欠だと補足する。

ACCUG-JPの位置付け
ACCUG-JPの位置付け 提供:ACCUG-JP

データを作るから使い続けるへ、そのための維持管理とデータガバナンス

 今後のACCUG-JPの広がりとして、三戸氏が期待するのが維持管理者の参画だ。現在のWGの議論は、作るまでのプロセスに重心を置いている。三戸氏は「本来はその後も含め、データを一気通貫で活用できる状態を目指すべき。日本では維持管理にデータを活用する発想が海外に比べて進んでいない」とし、維持管理領域こそ省力化の余地が大きいとみる。

 維持管理部門は、PMに限らずAMやFMでも最適化できる部分は多いが、一部の賃貸領域を除けばデータを資産として活用するまでは実現していない。三戸氏は、「ACCを含むソリューション群が維持管理まで延長線上でつながり、設計・施工のBIMデータを利活用できるのが本来あるべき姿だ。そのためにも維持管理側のプレイヤーのACCUG-JPへの参加が不可欠だ」と訴える。

 宮内氏は、会の議論が次の段階に進むに連れ、「データの権利関係やガバナンスも避けて通れないテーマ。データの権限は誰にあるのか、データは誰のものかといった議題も俎上(そじょう)に載せる必要があり、場合によっては学識者も交えて議論すべきだ」と提案する。

 現状では、BIMデータを納品した際、発注者側に改変の可否を含むどこまでの権限が生じるのかを明確に答えられない。三戸氏は「BIMデータを誰が、どの範囲で、どう扱えるのかをあらかじめ考えておくことも重要だ」と話す。

 ACCUG-JP設立から約1年が経過し、議論の焦点はデータを作る環境整備から、維持管理でのデータの価値創出やガバナンス検討へとさらなる広がりをみせている。 

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提供:オートデスク株式会社
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2026年4月11日

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