「BIM確認申請」に完全対応している「Archicad」最新版 AI搭載で実現する“デザインインテリジェンス”2026年度からBIM確認申請がスタート

BIMソフトウェア「Archicad」の日本語版がVer.29にアップデートされた。最新版では新機能として、「AI Assistant」を搭載すると共に、2026年度から始まるBIM確認申請にも対応している。代表取締役社長のトロム・ペーテル氏は「AIをはじめとした新たな機能で、ユーザーが建築設計の創造性をさらに発揮できるように支援していきたい」と意欲を示す。

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» 2025年12月18日 10時00分 公開
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 Graphisoftの日本法人グラフィソフトジャパンは2025年10月17日、「Archicad 29」の日本語版リリースに併せ、オンラインイベント「Graphisoft IGNITE Japan 2025」を開催した。本稿ではグラフィソフトプレゼンテーションや講演後のインタビューを中心に、BIM確認申請への対応やAI活用といったArchicad最新版の機能とともに、Graphisoftの製品戦略を紹介する。

建築設計をめぐるBIM市場の変化

 国土交通省が推進するBIM図面審査が2026年春からスタートすることに併せ、建設業界で改めてBIMを導入しようとする機運が高まっている。

 建設業界が抱える課題解消を支援するツールとしても、BIM導入を本格的に検討する企業は増えている。人材不足やサステナビリティーへの意識の高まりなどを理由に、データやプロセスの透明性を確保しやすいBIMには利点がある。海外では行政機関でもBIM活用が進んでおり、その動きは世界的潮流となっている。

 Graphisoft IGNITE Japan 2025に登壇した代表取締役社長のトロム・ペーテル氏は、「建築設計で求められる喫緊の課題の多くをBIMはサポートできる。近年は急速に導入へ向けた動きが広がっている。設計者がBIMツールを導入するプロセスにも変化が生じている」と分析する。

「Graphisoft IGNITE Japan 2025」の収録会場で講演するグラフィソフトジャパン 代表取締役社長 トロム・ペーテル氏 「Graphisoft IGNITE Japan 2025」の収録会場で講演するグラフィソフトジャパン 代表取締役社長 トロム・ペーテル氏

 BIM普及が進んだことで、設計者がBIMソフトウェアを選ぶときには手軽でスムーズに利用できることを重視し、検討段階の情報収集から、導入までをオンラインでシームレスに完結したいニーズが高まっている。技術開発も盛んで、最新バージョンをすぐに扱えるサブスクリプションモデルが当たり前になりつつある。

 グラフィソフトジャパンでは、こうしたBIMを取り巻く状況を踏まえ、2025年を移行期とし、2026年からは全ての販売をサブスクリプション方式に切り替える。トロム氏は「サブスクリプション方式はBIM導入のハードルを下げるため、ユーザーからは好意的な反応が寄せられている」とした。

Archicadを設計パートナーに変える「AI Assistant」

 日本国内でBIM導入が急速に進む情勢を受け、グラフィソフトジャパンは満を持して、2025年10月29日に「Archicad 29」の日本語版をリリースした。今回追加した機能のうち、ポイントとなるのが、2026年の正式リリースに先立ち搭載した「AI Assistant(BETA)」搭載と、2026年度から始まる「BIM確認申請」への対応だ。

 AI Assistantは、Archicadをはじめとする今後追加予定の全てのGraphisoftソリューションに直接組み込まれる。AIを介してArchicadと対話しながら設計業務を進められ、単調な繰り返し作業の補助、製品や建築業務に関するデータ検索などが、AIサービスに切り替えることなくArchicad内で簡単にできる。細かいコマンドなどを覚えなくとも、何がしたいかを日本語でAIに投げかけるだけで複雑な操作が可能にもなる。

AI Assistantは、複雑な操作などを自然言語の簡単なテキスト指示(プロンプト)で可能に AI Assistantは、複雑な操作などを自然言語の簡単なテキスト指示(プロンプト)で可能に 提供:グラフィソフトジャパン

 トロム氏は「AI Assistantの実装で今後は、Archicadが単なる設計ツールではなく、共に設計作業をするスマートデザインパートナーとなり、ユーザーのクリエイティビティーを最大限に引き出す。AI Assistantはまだβ版だが、当社が長年携わってきたBIM設計で、これまでにない“デザインインテリジェンス”のイノベーションが起きる第一歩となる」と期待を込めた。

AI Assistantの操作画面。モデル内の一部分だけを選択して自然言語で生成AIに指示を出して編集するなど、さまざまな場面でBIM設計業務を支援 AI Assistantの操作画面。モデル内の一部分だけを選択して自然言語で生成AIに指示を出して編集するなど、さまざまな場面でBIM設計業務を支援 提供:グラフィソフトジャパン

 また、AI Assistantは「AI Visualizer(ビジュアライザー)」とも連携。ArchicadでモデリングしたBIMモデルを基にシンプルなプロンプトによる指示だけで、想定からかけ離れずリアリティーがあり、高品質な3Dパース画像を自動生成するツールだが、今回のアップデートで微調整を加えられるようになった。フォトリアルなライティングなど細かな点の調整やスライダーによる前後比較で、設計初期のアイデア検討や施主へのプレゼンテーションで役立つ。

2026年度から始まる「BIM図面審査」を円滑にサポート

 Archicad 29のもう1つのトピックスは、BIM確認申請への対応だ。2026年度からBIMモデルを提出する「BIM図面審査」が始まり、2029年度にはBIMモデル自体で審査する「BIMデータ審査」がスタートする。

 Archicadは、これまでにもBIM確認申請に必要な書類作成の全ての要件を満たしてきた。今回は申請図書の作成をサポートし、入力情報をチェックできる新機能を実装した。通常であれば確認申請は実施設計後となるが、設計業務全体のワークフローで作業を妨げることなく、申請に必要な情報を準備できる。具体的には、延焼の恐れのある部分を生成して調整もできる「延焼ライン」の機能を備えた「敷地マネージャー 3.0」の他、今後も計算ツールなどの新機能や既存機能のパワーアップを図る。

グラフィソフトジャパン カスタマーサクセス シニアディレクター 飯田貴氏 グラフィソフトジャパン カスタマーサクセス シニアディレクター 飯田貴氏

 カスタマーサクセス シニアディレクターの飯田貴氏は、「より簡単でスムーズな、ワークフローの中で建築確認用の図書作成をサポートする機能を追加した。マニュアルや手作業でやらなければいけないことが自動化し、申請までの業務が効率化する」と説明した。

 ただ、これから新たに始まる手続きなだけに、まだ手探りの企業は多い。日本の場合はBIMに取り組んでいない設計事務所も少なくないため、今回の制度開始は新たな企業がBIMに参入するタイミングにもなるとみる。

 そうした設計者に向けた支援環境として、Archicadには有志のユーザーグループも存在する。その一つ「ワークフロー研究会」は、BIM確認申請に対応した「Archicadサンプルプロジェクト」を作成し、ユーザーグループメンバー向けに公開している。サンプルはユーザーの知見を集約したもので、BIM確認申請に不慣れな企業にとって有益な参考資料となっている。

 トロム氏は「春からの運用開始以降には、新たな要望も出てくるはず。ユーザー目線で使いやすい機能開発を続ける」と語った。

確認申請サンプルはユーザーグループ作成のため、実践的なノウハウが得られる 確認申請サンプルはユーザーグループ作成のため、実践的なノウハウが得られる 提供:グラフィソフトジャパン

さまざまなBIMツールとシームレスに連携する“OPEN BIM”

 他にも、特定のソフトウェアに依存しない“OPEN BIM”の考え方を取り入れたコラボレーション機能も強化した。分野やプラットフォームを超えた共同モデルの共有、IFC最新フォーマットとの互換性、One Click LCAやCatendaなどのCDEとのコラボレーション環境を構築し、NemetschekやAutodesk製品とのネイティブ連携も見据えている。トロム氏は「ユーザーは一つのツールを単独で使うのではなく、複数を組み合わせてプロジェクトを達成できるソリューションを求めている。ツールが多様化している中で、スムーズに使える設計環境の整備にも力を入れ、業務効率化をサポートしたい」とその意図を明かした。

OPEN BIMのコラボレーションで、さまざまなツールと連携して業務を進められる OPEN BIMのコラボレーションで、さまざまなツールと連携して業務を進められる 提供:グラフィソフトジャパン

クリエイティビティーを引き出す「ベストデザインエクスペリエンス」

 AIの機能拡充などを積極的に取り組むGraphisoftでは、「ベストデザインエクスペリエンス」を企業のモットーに掲げる。その考えの下、ユーザーのスキルアップにも力を入れている。飯田氏は「BIMツールの提供だけでなく、クリエイティビティー向上にはノウハウの提供も欠かせない。BIMをどう学ぶか、どう使えばいいかまでを提案できる点を当社の強みと捉えている」と強調した。

 トロム氏は「当社のツールは設計者目線で作られているのが、他にはない特長だ。単にBIMデータを作るためのツールではなく、設計というクリエイティブな業務を行うために、最適なあらゆるものをこれからも提供していきたい」と、今後もユーザー目線でのツールやサービスの提供への意欲を示した。

Archicad 29のアップデート内容のまとめ Archicad 29のアップデート内容のまとめ 提供:グラフィソフトジャパン

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アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2026年2月17日