必然だったグリーンサイトとの連携! 前田建設の現場DXを加速させる”確かなデータ“とはデータドリブンの現場DX

前田建設は“脱請負”を掲げ、請負中心のビジネスモデルから脱却し、総合インフラサービス企業への転換を進めている。その基盤を支えるのが、DXによる請負事業の業務効率化とデータ活用だ。執行役員の二瓶大作氏と、労務安全書類作成・管理サービス「グリーンサイト」を提供するMCD3 代表取締役社長 飯田正生氏の対談から、現場データの利活用で実現する建設DXの姿を探った。

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» 2025年12月16日 10時00分 公開
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 2021年10月、前田建設は前田道路、前田製作所とともに共同持株会社の「インフロニア・ホールディングス」を設立。“脱請負”を掲げ、総合インフラサービス企業への転換を進めている。前田建設 執行役員 建築事業本部 建築統括 兼 建築部長 兼 安全環境担当 二瓶大作氏は「目標実現の要は、DXによる請負事業の業務効率化にある。業務効率を高めることで、利益と人的リソースを生み出し、それを原資に新規事業やインフラ運営への展開を図っている」と語る。

前田建設 執行役員 建築事業本部 建築統括 兼 建築部長 兼 安全環境担当 二瓶大作氏 前田建設 執行役員 建築事業本部 建築統括 兼 建築部長 兼 安全環境担当 二瓶大作氏

 労働人口の減少が進む中、二瓶氏は「協力会社を含めた業界全体で生産性の底上げが不可欠。自社も“協力会社に選ばれる元請”とならなければならない。働きやすい環境を整えるだけでなく、手書き書類などのアナログ業務から脱し、建設業に魅力を感じてもらう工夫が必要だ。そのためにも、DXは欠かせない」と強調した。

 こうした現場改革を支える仕組みとして、前田建設が10年以上前から導入しているのがMCD3(エムシーディースリー)の労務安全書類作成・管理サービス「グリーンサイト」だ。

一意性のあるデータが現場をつなぐ「建設サイト・シリーズ」

 MCD3は、2025年7月に3社(MCデータプラス、インダストリー・ワン、エムシーデジタル)の統合で誕生したAIやデジタル技術でソリューションを開発/提供する会社。施工管理業務の生産性向上をもたらすクラウドのサービス群「建設サイト・シリーズ」は20年以上の実績を持ち、元請約940社、全国約3.6万現場、協力会社約90万社※1、技能者約280万人※2のデータを網羅している(2025年12月時点)。その中核となるサービスが、労務安全書類作成・管理サービス「グリーンサイト」だ。

※1 施工体制内の1社として一人親方約50万人を含む ※2 在職中のユニーク人数

 MCD3 代表取締役社長 飯田正生氏は「グリーンサイトを含む建設サイト・シリーズでは、必要な情報をその都度入力するワープロタイプではなく、マスターデータタイプを採用している。協力会社や技能者が一度、基本情報を登録すれば、複数の現場や元請間で同じ情報を使えるため、入力の手間が少なくて済む。当社側のデータクレンジング処理で、データが重複しない一意性(ユニーク)も担保している」と説明する。

 ワープロタイプのように、複数現場で別々にデータを登録すると整合性が崩れやすい。同じ人物でもIDを2つ取得すれば2人と扱われ、氏名の間が全角/半角の違いだけでも別人と認識される。こうしたバラツキは、データ解析や他システムとの連携を妨げてしまう。唯一固有のユニークデータならば、そのリスクが防げる。

“多対多”をつなぐ建設DX、マスターデータの拡張可能性

 蓄積されたマスターデータは、情報の組み合わせで新たな価値を生み出す可能性も秘めている。

MCD3 代表取締役社長 飯田正生氏 MCD3 代表取締役社長 飯田正生氏

 飯田氏は「元請会社と協力会社の一意性のあるデータを蓄積することで、“多(元請)対多(協力会社)”という複雑な関係性をデータ上で正確に紐(ひも)付けられる。そのため、複数の元請と協力会社がシームレスにつながる環境を構築できる」と解説。既に建設サイト・シリーズのデータを業界課題や経営課題の解決につなげようとする動きが増えているという。

 もちろん、マスターデータは情報鮮度を保つことが重要となる。MCD3では、資格などの変更を随時アップデートするように登録先を促し、IDの重複が疑われる場合は生年月日などをもとに自ら名寄せして、データの信頼性を常に維持している。「必要な情報を更新しながら、まずは正確なデータを固める。そこからサービス展開するのが当社の方針だ」(飯田氏)。

データ活用で可視化した現場の「人/時間/安全」 

 前田建設は2023年度からグリーンサイトのデータ連携(グリーンサイトに蓄積されたデータをAPIで連携)を導入し、今では通門管理などの現場オペレーションに直結させ、具体的な成果を上げている。

 従来、新規入場時には、作業員が手書きの申告書を毎朝30分ほど掛けて記入していた。現在はグリーンサイト連携による顔認証システムで、ストレスのない入退場管理ができている。「協力会社がグリーンサイトに登録した情報には一定の信頼性があり、それに紐づく通門管理で的確な労務管理や過重労働の防止が可能になり、作業員が健康的に働ける職場が実現している」と二瓶氏。

グリーンサイトと前田建設のデータベースとのAPI連携で、現場ごとのデータを通門管理などに利活用 グリーンサイトと前田建設のデータベースとのAPI連携で、現場ごとのデータを通門管理などに利活用 提供:MCD3

 現在は、前田建設が独自開発した施工管理システム「TPMm」ともAPI連携している。現場入場予定の人数と顔認証システムで集計した実績人数を一覧で確認し、顔認証未実施者の抽出も容易になった。二瓶氏は、新しい他システムの導入ではなく、「既に現場で定着しているTPMmとグリーンサイトとの柔軟な連携で現場の混乱を避けることができた。セキュリティ面やコンプライアンス面でも、グリーンサイトが最も安心してデータ連携できるサービスだ」と評価した。

 さらに技能者のモチベーション向上を目的とした「前田建設マスター・マイスター制度」にも、グリーンサイトの入退場データを活用。優秀な技能者を表彰し、インセンティブを支給する仕組みで、現場や支店の感覚値に依らない信頼性のあるデータに基づく客観的で厳格な運用が可能になった。

 通門データの活用では他にも、最近増えている外国人技能者向けに、国籍データを分析することで、工事看板をどの言語で表示するかなどの判断にも用いている。

 また、現場作業員の年齢構成を分析すれば、若手の補充が必要なエリアも分かる。取引会社の得意分野や年齢構成をみれば、地域ごとの業種偏在も判別でき、受注戦略にも役立つ。

データの“網羅性”は協力会社にとってもプラス 

 グリーンサイトの導入に対し、協力会社からの反応も好評だ。前田建設の主要協力会社614社で構成する「前友会」では、当初こそ有償での導入に慎重な声もあったが、今ではほとんど聞かれないという。

 その要因を二瓶氏は「手間削減の効果に加え、MCD3のサービスが最も建設業界で普及していることが要因だろう。前友会で、前田建設のシェア率は10〜30%程度で、多くが複数の元請と取引している。グリーンサイト上で情報を最新にしていれば、どの元請の現場でも労務安全書類をそのまま提出できるデータの“網羅性”が支持されているのでは」と推察する。

 一方で二瓶氏は「ITにいまだ苦手意識のある協力会社もおり、初期登録の手間が加入のハードルとなっているため、フォローを検討してもらいたい」と要望。対して飯田氏は「当社のサービスはデータと運用が一体で、どちらかが欠けても成り立たない。有償で提供している以上、入力の手間を減らすことは責務だ。AIを活用した自動入力など、負担軽減の機能拡充を進めたい」と応じた。

AIや新アプリなど、進化を続けるMCD3のサービス

 建設サイト・シリーズは、負担軽減機能の拡充以外にも、データ活用による現場課題の解決を起点に、AIやアプリ開発など、より高度なサービスへと進化している。

 建設サイト・シリーズは、AIとの連携で新たな運用フェーズに入ろうとしている。飯田氏は「将来は、単にソフトウェアを提供するだけでなく、人の運用も含め一体的に請け負う形が理想だ。どこをソフトウェアで処理し、どこをAIに任せるかを切り分け、全体を最適化し、建設業の現場従事者が本業に集中できる環境を支援したい」と抱負を口にした。

 技能者にメリットがもたらされるアプリ「Myグリーンサイト」の開発も2026年春のリリースに向けて進行中だ。「現場では複数のソフトウェアが併存し、IDやパスワードを管理するのは多大な負担となる。そこで一度のログインで複数サービスを利用できる“シングルサインオン”型アプリの開発を進めている。現場情報や天気予報、電子マネーに交換可能なデジタルギフト付与などのより働きやすくなる機能も組み込む」と飯田氏は展望を示す。

 また、協力会社の経営基盤を支える取り組みも始めている。「建設サイト福利」などの福利厚生支援、「建設サイト早払い」といった中小企業のファイナンス面も支援。飯田氏は「特に黒字倒産が起きやすい業界構造の中で、低い調達コストで資金を回す仕組みは欠かせない」と狙いを語った。

前田建設の現場DXの未来とMCD3への期待

 対談の最後で、話題は今後の現場DXの展望とMCD3への期待に移った。二瓶氏は、MCD3の技能者向けアプリのMyグリーンサイトと連携し、2026年4月から運用開始する独自のインセンティブ制度について、「協力会社や技能者が前田建設の現場で働きたいとモチベーションを持ってもらえる環境作りの一環だ。建設技能者の能力評価制度のレベルに応じ、ゴールドで1日500P、シルバーで200P、ブルーで100Pなどのインセンティブ付与を予定している」と説明した。

 MCD3が網羅的に保有する膨大な技能者データについては、「当社グループでは風力発電や上下水道、アリーナなど全国でインフラ運営を展開しており、地域ごとの人材配置に生かせるのではないか」と注目する。

 「送り出し教育」のデジタル化にも二瓶氏は言及し、「協力会社には現場特有の安全や周辺環境の条件を事前に教育してもらっているが、突然の応援要請などで徹底は難しい。MCD3の仕組みで登録作業員に自動で現場情報を配信できれば、トラブル防止に大きく貢献する」と期待を寄せた。飯田氏は「その点は開発中の技能者向けアプリで対応できるようになる」と前向きな見通しを述べた。

 二瓶氏は、業界全体のデジタル化を見据え、「今後4〜5年で状況は大きく変わり、現場のDX環境は確実に整っていくだろう。MCD3は現場のDXを後押しする存在として期待している」と投げかけ、飯田氏も「期待に応えられるように全力で取り組む」と力強く答えた。

 “脱請負”を掲げる前田建設の現場起点のDXは、業務効率化の先にある新たな価値創造への実践となる。MCD3との共創で、データドリブンによる建設DXの新たな扉がいま確かに開きつつある。

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提供:エムシーディースリー株式会社、前田建設工業株式会社
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2026年2月15日