大林組、アジア拠点のリモート設計レビューを「Revizto」導入で3割時短2D図面とBIMの設計プロセス変革

大林組で主に東アジアの海外プロジェクトを統括する「アジア支店」では、各国の設計レビューを日本の本社と行う中で、業務プロセスが非効率となっていた。その課題をBIMを基軸とするプロセス変革で解消したのが、統合コラボレーションプラットフォームの「Revizto」だ。設計者間の情報共有や指摘事項の管理もスムーズになり、作業期間が3割短縮したという。

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» 2025年10月01日 10時00分 公開
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PDFベースでは、設計レビュー内容の集約/管理/追跡が困難

 スーパーゼネコンの大林組は、建設事業で培った「ものづくり」の技術や知見を生かし、不動産開発、グリーンエネルギー、新領域ビジネスなどをポートフォリオに加えながらグローバルに事業を展開している。

大林組 アジア支店 設計推進部 副部長 ロー・ツァオ・フェイ氏 大林組 アジア支店 設計推進部 副部長 ロー・ツァオ・フェイ氏 提供:大林組

 東アジアやオセアニアのビジネスを率いるのが、シンガポールにオフィスを構える「アジア支店」だ。ベトナム、インドネシア、タイ、シンガポール、台湾、オーストラリアの現地法人を統括する。各拠点の設計レビューを本社と共に担うことで、設計品質の標準化と向上を支えている。

 しかし、これまで設計レビューのプロセスに、ある課題を抱えていた。「2DCADの図面と3DのBIMモデルを個別にレビューしていたため、非効率な状態にあった」と、設計推進部 副部長のロー・ツァオ・フェイ(Loh Hsiao Huey)氏は振り返る。

 以前は指摘事項が2D図面とBIMモデルに分散して入り、それぞれを集約して管理していた。そのため、見落としによる漏れ、バラバラのチェックによる2Dと3Dの不整合が発生していたという。「また、何に対する指摘かが分かりにくい場合は、折り返しの確認も必要だった」と語るのは、設計本部 設計ソリューション部 BIMマネジメント課 米原紘平氏だ。さらに、この運用では指摘事項に対する改善内容の追跡も難しい。そのため、設計品質の標準化や向上も図りにくい状況となっていた。

 レビュープロセスの多くを紙に依存していることも課題だった。2D図面を出力し、指摘事項を書き込んだらPDF化してメールで送る。このような煩雑なやりとりが、スピードと作業効率の低下、担当者の負担増加の要因になっていたのだ。レビュー完了までに数週間〜数カ月かかることもあったという。

設計レビューの在り方を変えたイシュースタンプ/トラッキング機能

大林組 設計本部 設計ソリューション部 BIMマネジメント課 米原紘平氏 大林組 設計本部 設計ソリューション部 BIMマネジメント課 米原紘平氏 提供:大林組

 非効率なプロセスを脱却すべく、アジア支店が着目したのがスイスローザンヌに本社を置くRevizto(レビツト)が開発した「Revizto」だ。ReviztoはBIMツールと連携し、設計情報を集約/統合することで、設計者間のコミュニケーションを一元化して効率化する統合コラボレーションプラットフォーム。

 「Reviztoの手厚いサポートも受けながらPoC(概念実証)を行ったところ、標準テンプレートや新たなワークフローの適用などで、一定の成果が得られ、活用する価値があると判断した」と米原氏は説明する。

 Reviztoでは2D図面とBIMモデルを横断して確認できる。2D図面を確認している際、気になった箇所はワンクリックでBIMモデルに切り替えて、詳細を確認するといったことが可能だ。「クリック数回で任意の断面を表示したり、矩形図や詳細図を貼ったりすることも可能で、直感的に扱えると感じた。処理性能が高いためストレスもない。2Dでしか作業していなかった社員も、3Dの確認にスムーズにシフトできると考えた」とフェイ氏は付け加える。

 また、イシュースタンプを使うことで図面またはモデルに直接、指摘事項を吹き出し型で貼付できる点も評価した。スタンプを押すだけであらかじめ設定した指摘事項を貼付できる他、そこに別の設計者が書き込みを追加したり、質問に回答したりできる。イシューが常に2D図面とBIMモデルの間で連動しているため、内蔵のチャット機能を使えば、メール/チャットツール、または紙やPDFを使わなくても、Revizto内でコミュニケーションを完結できることも分かった。

 さらにイシュートラッキングからは、過去のレビューでの指摘の対応状況やアップデートも容易に追跡できる。従来は手間がかかっていた修正内容の把握も容易になると考えた。

設計レビューに要する期間が30%短縮

 こうしてReviztoの有用性を確認したことでアジア支店での導入を決め、設計レビューのプロセスは2Dと3Dが統合された形となった。その結果、設計レビュープロセスに大きな変化が起こりつつあるという。

 例えば、紙やPDFを廃し、やりとりをReviztoに統合したことで、レビュー側/各現地法人側、双方の負担は大きく減った。特に現地法人側は、Reviztoだけ見れば指摘事項を全て確認できるようになり、レビュー後の作業が非常に楽になった。「指摘の内容やコメント、それに関わるコミュニケーションをReviztoに集約したことで、SSOT(Single source of truth:信頼できる唯一の情報源)の環境を構築できた。設計レビューにかかる期間が以前よりも30%ほど短縮した」とフェイ氏。

大林組 アジア支店におけるReviztoを利用した設計レビュー。2D図面とBIMの3Dモデルを統合した環境で、本社と現地法人をまたいだリモートレビューが実現 大林組 アジア支店におけるReviztoを利用した設計レビュー。2D図面とBIMの3Dモデルを統合した環境で、本社と現地法人をまたいだリモートレビューが実現 提供:Revizto、大林組

 「イシュースタンプを使って便利だと感じたのは、各プロジェクトにおける設計上の指摘事項を『Defect possibility(不具合の可能性)』『Safety issue(安全性の問題)』『Drawing quality(図面品質)』などにカテゴライズ/標準化して可視化できる点だ」と米原氏は続ける。

 カテゴリーは現在6種類を作成して運用している。これにより、指摘の傾向をダッシュボード上で可視化したり、それぞれの検討/対応状況を把握したりすることが可能になった。3Dモデルや2D図面をアップデートしてもスタンプはその座標に残るため、解決するまで状況を確実に追跡できることもメリットだ。

 さらに、イシュースタンプによる指摘事項の標準化で、新たに行えるようになったのがデータ分析だ。プロジェクトで欠陥が複数発見された際、イシュースタンプを集計して分析することで傾向把握や原因調査が可能になる。複数のプロジェクトにまたがってデータを可視化することで、「ある種類のイシューが特定のプロジェクトで頻発している」といったパターンにも気付けるようになった。「設計チームへのフィードバックやプロジェクトごとの追加トレーニングなど、具体的な改善策につなげられている」とフェイ氏は述べる。

大林組 アジア支店での導入前の課題とRevizto導入後の効果 大林組 アジア支店での導入前の課題とRevizto導入後の効果 提供:Revizto、大林組

点群データも扱えるReviztoで、デジタルツインの構築

 Reviztoを活用したプロジェクトの一例が、ベトナムハノイ市のホテル建設プロジェクトだ。

 市街地にある建物のため、設計に当たっては隣接する建物などにも配慮する必要があった。そこで、ドローンで取得した周辺環境の点群データをBIMモデル、設計図面と共にReviztoに取り込んで表示した。いわばRevizto上でデジタルツインを構築するイメージだ。

 「ホテルへの最適なアクセスや各室からの眺望をどのように確保するのかなど、多角的な観点から課題を捉え、設計レビューに反映させることができた。点群データも扱える点はReviztoのメリット。施主への説明もReviztoの画面を見て進めることで、スムーズに行えた」(フェイ氏)。

 建築・土木業界にとって、BIMはもはやデジタル変革で欠かせないツールといえる。BIMによるコミュニケーションを効率化し、生産性を向上させるReviztoは、多くの建設会社のDXを下支えするツールといえるだろう。「Revizto導入後は、BIMで確認する人が増えたように感じる。これも成果といえる」と米原氏は評価する。

 アジア地域での成功を受け、大林組ではReviztoの活用範囲をさらに拡大していく考えだ。BIMを活用した建設プロジェクトのグローバルでの一層の躍進に注目したい。

大林組 アジア支店のメンバー アジア支店での導入前の課題とRevizto導入後の効果 提供:Revizto、大林組

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アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2025年11月30日

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