建設業界で紙の処理が多く残る請求査定業務では、電子化による業務効率化が求められている。要望に応えるべく、アンドパッドはクラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」の新サービスとして「ANDPAD請求管理」をリリースした。建設業界に特化し、請求書受領から、査定、保管までをデジタルで一元管理する。
少子化に伴う人口減、技術者/技能者の高齢化、他業界と比べて低い給与水準などを理由に建設業界は深刻な労働力不足に直面している。2024年4月には時間外労働時間の上限規制(2024年問題)が適用され、状況はより深刻化しており、業界ではあらゆる業務の効率化が急務となっている。
経理業務も例外ではない。紙ベースのアナログ処理が数多く残る請求業務では、デジタル化は重要なテーマだ。
こうしたニーズに応えるのが、2024年9月26日にリリースされたアンドパッドが提供するクラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」の新サービス「ANDPAD請求管理」だ。
新サービス開発の背景についてアンドパッド 新規事業開発室 松本陽氏は、「クライアントから、経理業務の請求書受け取りと監督による査定業務だけでも効率化できないかと切実な要望が寄せられたことが契機となった」と話す。
開発チームは、早急に応えるため2023年冬から開発に着手し、請求管理の課題を抽出して2024年4月には初期プロダクトが完成した。クライアントの活用を経て問題点を改善してアップデートするPDCAを高速で回しながらプロダクトを練り上げ、構想からわずか1年でANDPAD請求管理の実用化に至った。
建設業界の請求管理業務は、「請求書の回収/振り分け」「査定」「承認」「登録」「保管」の5つのフェーズで構成される。ANDPAD請求管理は各工程で非効率な作業を解消し、請求管理全体を最適化するツールだ。
請求書の回収/振り分けでは、経理担当者の負担を大幅に軽減する。協力会社がシステムにあらかじめ登録された工事名から該当工事を選択し、請求金額を入力。自社で発行した請求書のPDFを添付して登録/送信する。工事名には、現場監督が紐(ひも)付いているため、協力会社が請求書を送信したタイミングで現場監督に直接届く。これまで経理担当者が手作業で行っていた請求書の回収や開封、工事ごとの振り分けの手間が解消される。
松本氏は「中堅ゼネコンでは月に数百枚もの請求書が届くため、振り分けに多大な時間がかかっている。監督が遠方の現場に常駐している場合、経理担当者が一度受け取った上で現場ごとに振り分けし、その請求書を再度監督の元へ郵送することもある。ANDPAD請求管理は、こうした煩雑な作業を自動化するので業務効率の改善につながる」と利点を強調する。
加えて、元請会社の経理担当者が登録する機能も用意している。「協力会社の担当者が全員ITに精通しているわけでないので、紙の請求書にも対応する必要があった」と松本氏は説明する。
経理担当者は工事名と金額を入力し、送られてきた請求書をPDF化してシステムに登録する。ペーパーレス化にもつながり、さらなる業務効率化が期待される。
次のフェーズとなる現場監督が担当する請求書の「査定」は、作業場所の制約や煩雑な書類作成、月初の業務集中といった課題がある。
現場監督は建設現場(現場事務所)に常駐しているにもかかわらず、請求書査定のためにオフィスへの出社を余儀なくされている。支払依頼書や建設業独特の立て替え費用の相殺請求書など社内処理用の書類作成も必要な企業も多く、通常業務を圧迫している。
また、多くの建設会社では月末締めで請求書を振り分けるため、月初の短期間に査定業務が集中。現場監督は限られた時間内で、大量に処理しなければならない。請求書処理のフローが複雑かつ膨大だと、手作業による金額計算や入力のミスが発生する恐れがあり、取引先との信用問題にも関わる未払いのリスクも高まる。
松本氏はANDPAD請求管理を使用することで、こうした課題は解決できると断言する。「クラウドサービスなのでPCがあれば現場事務所で作業が完了し、オフィスに行く必要もない。社内専用の書類で行っていた業務もシステム上で一元的に処理するため、書類作成も要らない。協力会社が請求書を提出したのと同時に査定可能なので現場監督は随時査定でき、業務負荷の分散にもなる」。
現場監督の査定後、請求書は工事部門長など上長に送られ、「承認」を受ける。このプロセスでも、作業場所の制約を受けたり、月初に業務が集中したりするが、その解決法は査定業務と同じだ。
紙ベースの承認プロセスでは、複数の承認者間での書類の受け渡しの際の紛失リスク、差し戻しが発生したときの処理の抜け漏れなどの問題が起きやすい。ANDPAD請求管理であれば、承認プロセス全体がデジタルデータとして一元管理されるため、どの請求書がどこで滞留しているかが一目瞭然で、データ紛失や承認漏れが防げる。
松本氏によれば、現場監督から今まで必要だった出社や経理部署への問い合わせが無くなり、現場とバックオフィスの双方で負担が軽減したとの声が多数寄せられたという。
請求書管理の最終段階となる会計システムへの「登録」と「保管」でも、ANDPAD請求管理は大きな成果をもたらす。
経理担当者が手作業で行っていた会計システムへのデータ入力は、ファイル連携で自動化が実現する。査定結果を直接取り込むことで、入力作業の労力が大幅に削減される。
2024年1月には電子帳簿保存法(電帳法)が改正され、帳簿や書類の電子データ保存が義務化された。ANDPAD請求管理は法令に準拠し、受領請求書(PDF)の変更不可や取引情報の履歴管理などの機能も備えている。
電子データはクラウドに保存されるため、紙の請求書のように保管スペースを気にする必要もない。データ検索機能を使えば、クラウド上にアップされた過去の請求内容を即座に確認できるので、電帳法で求められる可視性も確保される。
請求書の受け取りから保管まで、一貫したデジタル管理を実現するANDPAD請求管理。最大の価値は建設業に特化している点だ。松本氏は「建設業特有の商習慣があり、業界や業種を選ばない全業種向けの請求書処理サービスでは対応しきれない部分がある」と指摘する。
特有の商習慣の一例としては、工事単位で原価管理をするための「請求書の工事ごとの振り分け」、実行予算上の原価管理に必要な「注文/工種との紐付け」、工事進捗に応じた協力会社への支払額査定である「出来高査定」、そして産業廃棄物処理費など元請企業の立て替え経費を協力会社からの請求金額から差し引く「相殺」だ。松本氏は「似たような他社サービスはあるが、全てに対応しているのは当社だけ」と自信を示す。
ANDPAD請求管理には他にも優位性として、アンドパッドが提供するサービスと横連携が図れる点がある。ANDPADの施工管理機能で登録した工事名や工種名は、そのままANDPAD請求管理に引き継げる。
ANDPADのサービスで標準化しているユーザーインタフェースも特長の一つだ。直感で使いやすいデザインはアンドパッド創業以来の基本姿勢で、導入した建設会社や直接のユーザーとなる現場監督や経理担当者からも高い評価を得ている。
フォローが充実しているのもストロングポイント。松本氏は「サービス運用が軌道に乗るまでしっかり支援することが建設DXの肝だ」とし、運用に関する相談先の「カスタマーサクセス」と機能や操作の問い合わせ先「カスタマーサポート」の2段構えで支援の体制を整えている。導入前に協力会社のユーザーに対しても、使い方の説明会を年7000回以上開催するなど、大規模なサポートチームによる手厚いフォローでスムーズな導入から、運用、活用までの実現をバックアップしている。
松本氏は「ANDPAD請求管理は元請会社の経理担当者や現場監督、管理職だけでなく、経営層や協力会社にもメリットをもたらす」と説く。
経営層には電帳法への対応と業務効率化による現場からの好反応が、経営判断を後押しする材料になっている。協力会社は、請求書の印刷や郵送の削減による業務効率化に加え、昨今の郵送費用高騰を考慮するとコスト面での効果も期待できる。
SaaSだからこその「サービスの進化」も、100人以上のエンジニアを擁する開発部署がユーザーからの要望に即時対応する。松本氏は「現場の声を反映した機能拡充を通じて、サービス価値の向上を目指している。各社や現場からの要望があれば、積極的に開発チームへフィードバックしていく」と抱負を語る。
今後は、中小建設会社での導入実績を重ねながら、業界全体への展開を視野に入れる。利用社数20万社、ユーザー数51万人を誇るANDPADの幅広い顧客基盤と実績を活用し、ANDPAD請求管理の普及も加速させる方針だ。
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提供:株式会社アンドパッド
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2024年12月28日