AIとIoTで変わる建設現場の未来 西松建設と前田建設工業の事例解説超高齢化社会の人手不足への解決策

AIとIoTの融合による建設現場の革新を探るMODEのイベントで、生成AIと現場データを組み合わせたBizStack Assistantの西松建設と前田建設工業の活用例やAI活用による未来の建設現場像の議論が繰り広げられた。

» 2024年11月01日 10時00分 公開
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 米シリコンバレー発のスタートアップMODEは2024年9月5日、リアルイベント「MODE CHANGE 2024 AI-driven IoT -社会実装を加速する-」を開催した。本稿では、そこで語られたIoTと生成AIが創造する未来を見据えた建設現場のビジョンを紹介する。

働き手不足解決の切り札は「AI-driven IoT」

 イベント開幕を飾る講演「AI-driven IoT -社会実装を加速する-」ではMODE CEO 上田学氏が登壇。2022年11月のGPT-3.5公開を機に“新産業革命”が始まったとし、震源地のシリコンバレーではChatGPTの公開から2年で多くの生成AI企業が誕生し、自動運転タクシーやチャットbot型検索エンジンなどのサービスを次々とローンチしている。上田氏は「新産業革命は50年間で生産性を2〜3倍向上させた約250年前の産業革命以上の効果があり、日本が抱えるさまざまな課題を解決する」と期待感を示す。

 その一つが働き手不足だ。総務省の「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年の8716万人をピークに減少し、2021年には7450万人まで落ち込み、2050年には5275万人となる予測している。言い換えると、2050年に2021年と同等の業務をこなすには約1.4倍の生産性が求められる。

 上田氏は「AIがチームの一員として人と協働する働き方を創造できれば、その課題は達成できる」と断言する。それを具現化するのがMODEのAIを優秀な部下のように活用する「BizStack Assistant」だ。

MODE CEO 上田学氏 MODE CEO 上田学氏

 BizStack Assistantは、生成AIの頭脳と現場で計測されたリアルタイムデータを組み合わせ、現場の「いま」の状況や変化を自然言語で報告するチャット型AIアシスタントだ。MODEのソリューション型IoTプラットフォーム「BizStack」のデータを活用し、Microsoft TeamsやL is Bのdirectといったチャットサービスを通じて現場の現況を質問したり問題報告を受けたりできる。

 BizStack Assistantは既に現場省人化で成果を挙げており、西松建設の山岳トンネル工事現場で設備点検の時間を40%削減した。スペシャルゲストとして講演に登壇した西松建設 執行役員 DX戦略室長 坪井広美氏は、「別々だった人と人、人と物をつなげることが現場省人化の鍵」とし、BizStackやBizStack Assistantに期待を寄せた。

AIと映像と音声が創造する未来の建設現場

 パネルディスカッション「AIとIoTの未来」にはセーフィー 代表取締役社長 CEO 佐渡島隆平氏と、BONX(ボンクス) 代表取締役 CEO 宮坂貴大氏が登壇し、モデレーターを上田氏が務めた。セーフィーは「映像から未来をつくる」をビジョンに掲げる映像プラットフォーム企業。BONXはストレスレスな音声コミュニケーションの実現を目指し、プラットフォームとデバイス開発を手掛ける。セーフィーは2024年9月1日、BONXは8月19日にBizStack Assistantと連携している。

MODEイベントのパネルディスカッション「AIとIoTの未来」 MODEイベントのパネルディスカッション「AIとIoTの未来」

 佐渡島氏は、「当社のサービスは施工管理者1人で複数の現場を同時に監督できるデジタルツインを構築できる。ただ、どれだけ現場を可視化しても全ては把握し切れない」とし、BizStack Assistantの果たす役割に期待を寄せる。

 宮坂氏は、「音声による常時接続の世界では情報を得るための移動やチャットを打つ手間がなくなり、生産性が向上する」とし、BizStack Assistantとシームレスにコミュニケーションできるデバイスを開発して現場DXを後押ししたいと語った。

 上田氏が現場情報の統合と生成AI活用が進む現状について問うと宮坂氏は「音声インタフェース開発企業としてユーザビリティーを追求し、3社で新しい体験を創出していきたい」と応えた。

 佐渡島氏は、今後は多くの業界で遠隔業務が標準になると予測し、「建設業界では施工管理のノウハウを持つOBの存在が鍵。彼らの能力を生かす機会を増やせば生産性は向上する。人ができることをAIでアシストするという発想で、彼らのビジネスチャンス創出を助けたい」と述べた。

ダム工事のデータ管理効率化で創造的な業務に注力

 イベント後半のセミナーにはデジタル技術で業界革新を目指す企業が集結。建設向けには前田建設工業と西松建設が自社のDXの取り組みを紹介した。

 前田建設工業は、「次世代建設プロジェクト:BIM/CIMとAIの可能性」と題し、「夢求(むきゅう)プロジェクト」について説明。夢求プロジェクトは「遊びをもっと真面目に」をコンセプトに、「テクノロジー」「クリエイティブ」「ラーニング」の3要素を融合させて建設業界の革新を目指す。建設業界では業務デジタル化が注目されているが、現場活用は十分に進んでいない。その現状を打破するのが夢求プロジェクトの狙いだ。講演では、テクノロジーの取り組みとしてダム工事でのBizStack活用例を紹介した。

前田建設工業のBizStack活用事例 前田建設工業のBizStack活用事例 提供:MODE

 ダム工事では地中の空隙を流れる水の圧力と空隙を埋めるグラウチング作業の性能データを収集し、照合する必要がある。しかし、これまで水圧計のデータ収集は月1回程度で、グラウチング性能データも含めてデータを紙(PDF)ベースで管理していたためデータの比較検討に膨大な時間と労力を要していた。

 BizStack導入後はデータ収集の頻度と照合の効率が改善されて作業量は半分以下に低減し、作業者1人が施工管理業務に今まで以上に注力できるようになったという。

多様な現場情報を効率的に収集してデジタルツイン実現を目指す

 西松建設は2023年5月に「西松DXビジョンver2.0」を策定し、設計・施工の分野で建設DXを進めている。施工領域では2030年までに施工の遠隔化や自動化を実現する「スマート現場1.0」、2040年までに施工現場のデジタルツインを構築する「スマート現場2.0」、2050年までに人、ロボット、AIが協調して施工を自動化する「スマート現場3.0」の達成を目指している。

 山岳トンネル工事には地下での作業や常に移動する現場、過酷な環境、熟練作業員の高齢化や担い手不足など多くの課題がある。

 西松建設は「Tunnel RemOS(トンネル・リモス)」と称するトンネル無人化/自動化の施工システムの開発に着手し、2023年度には重機の遠隔操作システムのプロトタイプを完成させ、現在は自動化技術の開発に移行している。

 並行してデジタルツインも構築し、実現場の情報をIoTセンサーなどで収集してサイバー空間にリアルタイムで再現。坑外からの施工管理を目標に、BizStackを活用したシステムを開発している。

 西松建設はこれまでも、水中ポンプ稼働監視システムやAIトンネル現場管理システムなどの開発でBizStackと連携してきた。今後もBizStackの拡張性を活用し、未来のトンネル工事の鍵を握るデジタルツイン構築の取り組みを加速させる方針だ。

西松建設のBizStack活用イメージ 西松建設のBizStack活用イメージ 提供:MODE

テキストから映像/音声へ 進化するAIアシスタント

 チャット形式での人と機械のコミュニケーションは第一歩に過ぎないと考えるMODEは、文字や数値以外の情報を扱う2種類のサービスを開発中だ。

 一つは「BizStack Assistant Vision」だ。従来の機能に加えて現場のAIカメラが捉えた映像や画像をBizStack Assistantが解釈し、情報を伝達したりアラートを発したりする。現場入り口にセットしたカメラの映像でヘルメット未着用者を検知してアラートを鳴らすなどの活用法を想定している。

 もう一つは「Voice interface」だ。人や機械が目まぐるしく動く現場での安全かつ最適なBizStack Assistant利用を目指し、音声インタフェースを開発している。

 上田氏は、今後AIのマルチモーダル化が急速に進み、AIのコミュニケーション手法が人のそれにより近づくと予測。「コミュニケーションツールをフル活用し、AIがアシスタントやパートナーとなって生産性向上に貢献するツール開発に注力したい」と意気込みを語った。

土木の日記念 土木DXセミナー

 MODEでは土木学会が制定した“土木の日”を記念し、2024年11月22日に東京都中央区のコレド日本橋でセミナーを開催する。本セミナーは、国土交通省、東日本旅客鉄道、法政大学など著名な有識者による産官学からの土木DXのアプローチを解説する貴重な機会となる。残席も残りわずかだが、こちらも注目したい。

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提供:MODE, Inc.
アイティメディア営業企画/制作:BUILT 編集部/掲載内容有効期限:2024年12月12日