BEMSアプリケーションを使いこなす基礎から学ぶBEMS活用(2)(2/2 ページ)

» 2017年05月31日 06時00分 公開
前のページへ 1|2       

BEMSとIoTで、ビル居住者と来訪者にも省エネを啓蒙

 省エネ、地球温暖化防止といった言葉は一般化しましたが、日常生活においてはどのように、どの程度取り組めば削減効果があるのか自ら解析し判断するのは難しいでしょう。しかし、ITの革新と親和性により、膨大なエネルギーデータをアプリケーションを通じて解析することで、エネルギーの使用状況や削減効果を誰にでも分かりやすく表示することが可能となっています。さらに、デジタルサイネージを利用することで、ビル居住者や来訪者に対し、効果的に省エネへの取り組み状況を発信し、意識啓蒙を促進することも有効な施策となります。

 図4は、エネルギー使用量を前日との対比で表示し、CO2(二酸化炭素)排出量を車の走行距離というより身近な事象に置き換えて表現しています。学校などの文教施設では子どもにも分かりやすいよう、アニメーションで表現することで地球環境への関心を高めたり、オフィスでは、企業としての省エネへの取り組み状況を社内外に向けて発信することで企業イメージの向上につなげたりすることができます。

図4 デジタルサイネージの画面例(クリックで拡大)

IT活用でいつでもどこでもエネルギー管理

 ITを活用することでエネルギー管理はビル管理担当者のみならず、テナントなどのユーザーやビルオーナーに多数のメリットをもたらします。

 従来は防災センターなどBAS専用の端末が設置された場所でしかエネルギーデータの閲覧・解析はできませんでしたが、Wi-Fiルーターなどを設置し、セキュアなインターネット環境を整備することで、いつでもどこでもエネルギーデータを閲覧・解析し、必要に応じて対策も立てることが可能となりました。特に、機器の故障や不具合については現場でデータを確認しながら作業ができるため、ビル管理業務の効率を大幅に向上することができます。

 また、多くのオフィスビルではテナントとして入居している企業の省エネ施策の一貫として、オフィス空調のゾーンや時間帯ごとなど、細かな個別設定が希望されることが増えました。このようなニーズに利便性を持たせるオプションとして、室内温度設定や空調時間の設定などを、オフィスで働いている方が自ら、スマートフォンやタブレットPCから簡単に操作できるようにするアプリケーションもあります。

図5 テナントユーザーの操作イメージ(クリックで拡大)

 複数建物を所有しているビルオーナーやデベロッパーの施設運用管理担当者は、従来、建物ごとのデータをExcelなどで集約し、グラフ作成・解析を煩雑に行っていましたが、クラウド上でデータを一元化することでデータ管理から解析までの作業負荷が軽減され、省エネ改善施策立案に多くの時間を割くことが可能になります。また、各建物のエネルギー使用量の比較を原単位に置き換えるなど、さまざまな角度から比較することもできます。例えば、建物規模やビル用途が同一のオフィスビルで空調エネルギー消費量を面積、居住者数、空調運転時間などで案分し、原単位化してそれぞれの建物を評価し、比較することで、最適な運転方法を導き出す指針の策定につなげることができるのです。

 このように、ITの活用やIoT化により、BASで収集され蓄積されたビルエネルギーのビッグデータはさまざまなアプリケーションやサービスで効率的に管理・解析することができるようになりました。そして、その結果をもとに効果の高い省エネ施策の立案が可能となるのです。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.